(9)「欄干に乗せて背中を押したらどうなる?」「彩香は落ちる」

検察官「なぜ(調書の)内容が違うなら違うと言わない?」
鈴香被告「検事が怖いから」
検察官「怖いと言うけど、『違う』と答えたことは何度もあったはず」
鈴香被告「でも、最終的には検事の言うことを聞いた」
検察官「結局『怖かった』と自分で言ったことは説明ができない?」
鈴香被告「はい」
検察官「怖いと思ったのは事実か?」
鈴香被告「思ったときもあった」
検察官「彩香ちゃんはどんな時に怖い?」
鈴香被告「自分が汗をかかないので、彩香がピタッとつくと、そのまま動けなかったりした」
検察官「それは『怖い』ではないだろう?」
鈴香被告「それは、人によって違う」
検察官「『気持ち悪い』なのでは? 怖い?」
鈴香被告「はい」
検察官「他の感情は?」
鈴香被告「分からない」
検察官「前々回の法廷で、『彩香を橋の欄干に乗せて背中を押したらどうなるか』と考えたのは本当?」
鈴香被告「はい」
検察官「その通りにしていればどうなった?」
鈴香被告「…」
検察官「分かるでしょう?」
鈴香被告「彩香は落ちると思う」
検察官「落ちてどうなる?」
鈴香被告「そこまでは」
検察官「そんなことも分からない?」
鈴香被告「はい」
検察官「落ちて死んじゃうとか、大けがをするとか」
鈴香被告「当時はそこまでは考えていない」
検察官「『欄干に彩香ちゃんを乗せて、背中を押したら』というのは、いいことだと思う?」
鈴香被告「いいえ」
検察官「当時はとんでもない考えと思わなかった?」
鈴香被告「当時は一瞬考えが頭をよぎっただけ」
検察官「『彩香が怖い』と医者に話をしていたようだが、彩香ちゃんがかわいいと思えなくて当たり散らすことがあったと」
鈴香被告「はい」
検察官「子供が死んだ交通事故で『彩香がその中にいればいい』と?」
鈴香被告「そのこととは…」
検察官「いや、そう思ったことがあったかどうか聞いている」
鈴香被告「ありました」
検察官「欄干で背中を押せばどうなるかも考えた?」
鈴香被告「はい」
検察官「…本当は、ダダをこねる彩香を見ていると、何をしてしまうか分からない自分が怖かったのでは?」
鈴香被告「…よく分からない」
検察官「そうかも知れないとは思う?」
ここで、やり取りを聞いていた弁護士が割って入る。鈴香被告は消え入りそうな声で言葉をつないだ。
弁護人「(検察の質問は)不当です」
検察官「何が不当なんですか」
鈴香被告「…よく分からないから、分からない」
検察官「彩香ちゃんが怖いのは、実は何をしでかすか分からない自分が怖いと。それを表現したのでは?」
鈴香被告「だから突然そんなことを言われても、よく分かりません」
検察官「先程、虐待はしていないと言った。でも友人とのメールのやり取りからすれば、言葉や、精神的なもの、ネグレクトもしていたと」
鈴香被告「私は通常の範囲かと」
検察官「でも2歳から3年間くらい、彩香ちゃんとほとんど言葉を交わしていないと言っていたはず」
鈴香被告「それは仕事があったからしようがながない」
検察官「彩香ちゃんに当たり散らす、かわいくもない、他にはけ口がないと医者に言っていたはず」
鈴香被告「はけ口は他にもあった」
検察官「医者には嘘を?」
鈴香被告「言えることと言えないことがある」
検察官「はけ口は、子供だけではないと? でも子供もはけ口だったということ?」
鈴香被告「(はけ口で)なくもない」
検察官「あなたは黴菌(ばいきん)といじめられていた自分のように、彩香ちゃんがなってほしくないと言っていたようだが?」
鈴香被告「はい」
検察官「でも彩香ちゃんは臭かったことがあったようだ。これは言っていることと、矛盾する態度なのでは」
鈴香被告「…」