(23)「思い出したら壊れてしまう」「あやめたことに思い当たる節」
検察官「(彩香ちゃんの担任だった)○○先生(実名)も、(同級生の親)の○○さん(同)も、2人ともウソをついているということか?」
鈴香被告「ウソというか、記憶の問題だと思う」
検察官「あなたの記憶が違っているのか?」
鈴香被告「2人とも同じことを言っているなら、私が違うのかも知れない」
検察官「あなたは6月9日の取り調べで、あなたと弟さんが、弟さんは車を使っていたが、それぞれ彩香ちゃんを探したことについて話している。どっちがどこを探したか覚えているか?」
鈴香被告「弟が町を探しに行って、私が大沢の方を探すと言って出て行った」
検察官「ところが、8月9日にあなたが検事に話したときは、『大沢橋は怖かったのでそっちに行くことができなかった』と言っている。『行くことができなかったので、高岩橋を通った』と話した。覚えているか?」
鈴香被告「怖かったとは言っていないが、高岩橋に行ったとは言った」
検察官「『大沢橋に行くことができなかった』と話したのではないか?」
鈴香被告「覚えていない」
検察官「もし本当にあなたが言っていないのなら、何で『大沢橋を渡っていない』などという話を、検事が調書に取ったのか。本当に覚えてないのか?」
鈴香被告「ない」
検察官「○○先生は、あなたが『弟が大沢橋を探した』と電話で言っていたと証言している。覚えているでしょ?」
鈴香被告「覚えていない」
検察官「6月12日にあなたが話した内容は、その後の取り調べで変わっている。覚えているか?」
鈴香被告「覚えていない」
検察官「6月30日、7月2日の調べで、『(彩香ちゃんが殺害された日の)6時半ごろのことを思い出すと、つらくなって頭が真っ白になり、分からなくなる』と言っていなかったか?」
鈴香被告「言ったかもしれない」
検察官「なぜ、6月12日の取り調べの時点では、そうは言っていなかったのか?」
鈴香被告「…」
検察官「黙秘なのか、答えられないのか?」
鈴香被告「分からない」
検察官「あなたは、彩香ちゃんのことを調べてほしかったのでは?」
鈴香被告「はい」
検察官「だとしたら、記憶にないのなら『ない』と正確に話した方がよかったのではないか?」
鈴香被告「はい」
検察官「あなたは、逮捕された直後の6月12日の時点では、『記憶がない』とは言っていない。どうしてか?」
鈴香被告「…」
検察官「答えられないのか?」
鈴香被告「…」
鈴香被告は、答えに窮した様子で黙り続けていた。
検察官「7月5日にも、検事の調べがあった。覚えているか?」
鈴香被告「…。何となくは…」
今度は、消え入りそうな声で答えた。
検察官「どういうことを言ったか?」
鈴香被告「母…。何か思い出そうとしたけど、思い出したら、母と自分が混乱して、壊れてしまうのではないかと…」
検察官「あなたは『正直言って、彩香をあやめたことに関して思い当たる節がある』とは言っていなかったか?」
鈴香被告「混乱していた」
検察官「それが調書にはあるのに、本当に混乱していた状態なのか?」
鈴香被告「はい」