(8)「決めつけないで」 検事の質問を嘲笑
検察官「東京に行くのに、彩香ちゃんがいると難しいから、いなければいいと思ったことは?」
鈴香被告「最初から2人で東京に行くのは無理と…。でも後からはできるのではと思った」
検察官「あなたは弁護士に対し『1人になりたくて、自殺をしようと考えると明るくなる』と話していた?」
鈴香被告「はい」
検察官「1人になりたくて、自殺を考えると明るくなる、まあ、自殺を実行したかどうかは疑問だが。自殺を思ったのは育児が負担だった表れなのでは?」
鈴香被告「育児ではなく、生活保護のことや自分の体調が良くも悪くもならず、いっぱいいっぱいの状態で仕事を見つけられるか分からないから」
検察官「1人になりたくて自殺したかったとは言ってない?」
鈴香被告「何もかも捨てて1人になりたいとは考えた」
検察官「東京に行きたいという話もあったようだが、前に行ったことのある栃木に行こうとは考えなかった?」
鈴香被告「考えなかった」
検察官「○○さん(実名の元交際相手)は法廷で『実家に彩香ちゃんを養子に出して栃木に行きたいと言っていた』と話していたが?」
鈴香被告「覚えていない」
検察官「○○さんが法廷でそう言ったことも覚えていない?」
鈴香被告「覚えていない」
検察官「弟に預けると。あとあなたの友人は、もう一つ言っていた。『前のダンナに彩香を返す』とは言った?」
鈴香被告「…はい?」
検察官「覚えていない?」
鈴香被告「覚えてない」
検察官「前のダンナに返すと言った」
鈴香被告「分からない」
検察官「覚えてもいない?」
鈴香被告「ない」
検察官「じゃあ、友人はなんでそんなことを言ったの?」
鈴香被告「…」
検察官「親が近くにいる秋田で働けないのに、東京に行ったら働けると思った?」
鈴香被告「だから行くのをあきらめた」
検察官「でも、彩香ちゃんが橋から落ちるちょっと前の平成18年の3月20日くらいまで、東京へ行くためのやり取りを友人としていたが?」
鈴香被告「入居する間取りの話をしたことはある。向こうの間取りはこっちにたとえるとどうなるかと、町営団地のレベルを下げないで二ツ井町に移りたいと考えていた」
検察官「東京へ行こうとは考えていなかった? 仕事ではなくて、家賃と間取りだけ?」
鈴香被告「仕事ではない」
検察官「でも(東京の友人に)『仕事みつからない?』とメールしている」
鈴香被告「…それは仕事がしたかったから」
検察官「東京でだろう?」
鈴香被告「東京でならこっちより仕事があるとは思った」
検察官「『住居は駅から何分?』とのメールもある。明らかに東京に行く連絡だ」
鈴香被告「決めつけないで」
鈴香被告は、突然検察官の方をにらみ「決めつけないで」と笑いながら答えた。笑ってはいるが、同じ内容の質問を何度もぶつけてくる検察官にいらだちを感じたようだ。
検察官「違うというなら、こちらにとってその方がいい。違うのか?」
鈴香被告「はい」
検察官「(恋人の)○○によると、実家に養子に出すと聞いたと言っていた」
鈴香被告「ずっと昔、父の仕事が景気良いとき、もし結婚する相手が、彩香を好ましくないと思ったら父母で預かるという話は出た。そのときだけ」
検察官「あなたは8月2日の検察の調べで『彩香を橋から落としたとき、怖かった』と行った。ほかにも彩香が小学校に上がったときから怖いと言ってないか?」
鈴香被告「…覚えていない」
検察官「彩香ちゃんが怖かったか?」
鈴香被告「いつもではないが、思ったこともある」
検察官「8月2日の調書では怖いと言った。覚えているか?」
鈴香被告「はい」
検察官「彩香が怖いとはどういう意味?」
鈴香被告「そこまでは覚えていない」
検察官「でも『娘が怖い』なんてかなり印象的な言葉。どのように説明したか覚えていないか?」
鈴香被告「…」
検察官「どういう意味か? 言えない?」
鈴香被告「はい」
検察官「何で言ったか分からない?」
鈴香被告「はい」
検察官「彩香がいなければ仕事ができて、外に出られて、体調も良くなると思うと、彩香のために自由が失われるようで怖いと説明していない?」
鈴香被告「…していないと思う」
検察官「そこに彩香ちゃんがいるだけで、自由と希望を奪われると思う、と説明したことは?」
鈴香被告「覚えていない」
検察官「小学校に上がったころからそう思うことがあったと」
鈴香被告「覚えていない」
検察官「調書に取られたのは覚えてる?」
鈴香被告「はい」
検察官「でもこんなとっぴな言葉、検事が勝手に取らない。あなたの口からでないことには」
鈴香被告「怖かったと私は言ったが、『こうだったんじゃないか?』といわれたから」
検察官「それで結果的に『そうです』と言ったと?」
鈴香被告「はい」
検察官「調書の内容と同じ気持ちだった?」
鈴香被告「ちょっと違う」