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(16)堤オーナーから10億円の融資話?

資金繰りに苦しむトライバルキックスの社長。続いて読み上げられた甲17号証では、追いつめられた末、ついに“禁断の果実”に手を出さざるを得なくなった状況を証言していた。

検察官「トライバルキックスは平成17年12月中旬、1億7000万円を借り入れました。借入先は山口組系暴力団と深い関係がうわさされているところでしたが、5000万円の返済が迫っており、紹介してもらうことになりました。『お金を借りられるが、暴力団とつながりがあるところだ。ただ、他からはもう借りられない』と説明すると、小室被告は『本当は借りたくはないけど、しようがない。進めてみて』と承知しました」

小さく首をかしげる小室被告。検察官はそのまま読み上げを続けていく。

検察官「借りた1億7000万円のうち1億2000万円は返済などですぐに使ってしまい、平成18年2月末の期限には返済できませんでした。小室被告と相談したうえで追加融資をお願いし、18年5月までに返済することで3億円を借り入れ、1億7000万円の返済に充てることに決めました。でもその3億円も、支払いが遅れていた借り入れなどですぐに消えてしまいました。本当に資金繰りがたいへんで、18年2月ごろからは私も従業員も給料をもらえずでしたが、資金調達のめどもない状況でした」

借金を借金で返済する自転車操業。続く甲18号証では、行き詰まった末に、今回の事件の被害者に融資を持ちかけるに至った状況が明らかにされた。

検察官「苦しい状況が続いていた平成18年6月上旬、木村隆被告から『芦屋の資産家の彼なら、何とかしてくれるかもしれない』と持ちかけられ、今回の被害者に会うことにしました。『お恥ずかしい話ですが、小室は今、すごくお金に困っているんです』と、平身低頭して融資をお願いしました。(被害者が)芦屋に御殿のような豪邸を構えているのをみて、わらにもすがる思いでした。800曲が譲渡ずみなのは分かっていました。(著作権を)融資の担保に差し入れることはできないとも分かっていました」

「被害者の方は音楽業界のことをあまりご存じない様子で、著作権についていろいろ聞いてこられました。その際、小室被告の著作権を『預ける』『管理してもらう』というぼかした言い方をしました。800曲の著作権で年間2億円の収入があり、(前妻が差し押さえている分以外は)手つかずで担保価値があるというのも、事実に反した言い方でした。結局、融資を断られて困り果ててしまいました」

「平成18年7月上旬から中旬に、借入先の担当者から『ウチもいつまでも待っていられませんよ。もし払えないのなら担保に入れている小室さんの著作権を徴収することになります』と告げられました。またその際、『小室さんに直接尋ねたら、8月末までにお返しいただくという話でしたよ。小室さんが言っていましたけど、(西武鉄道グループの)堤オーナーから10億円の融資の話があるんですか?』とも言われました。全く聞いていなかったので驚きましたが、適当に『そうなんですよ』と答えました。その後、小室被告に尋ねると、『安心してもらわないといけないし、(返済すると)約束しちゃったんだよ。あとはあなたの方でよろしく頼むよ』と言われました」

⇒(17)詐欺事件の“号砲”となった手紙の中身は…