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(15)globeのコンサートも焼け石に水 被告はハンカチ取り出して…

続いて読み上げられた甲15号証も、トライバルキックス社長の供述調書。小室被告の散財の一方で、資金の手当てに奔走する姿が明らかにされていく。

検察官「私が代表取締役に就任したころの懸案は、返済資金の調達でした。平成16年9月1日、木村隆被告から9900万円を振り込んでもらい、大変助かりました。このときは小室被告自身がお礼を述べました。こうした状況で『多くの出資者から金を募るという方法を考えている。トライバルキックスが小室さんの曲の著作権を持つ会社になれば信用が上がる』と伝えると、小室被告は了承してくれ、著名な3曲を譲渡してもらいました」

だが、社長のもくろみは外れる。『トライバルキックスは小室のマネジメント会社。今後、音楽配信などで配当も見込まれる』と宣伝したにもかかわらず、資金繰りは一向に好転しなかったのだ。

検察官「平成16年11月、globeのコンサートツアーを行いましたが、収入は約3000万円にしかならず、焼け石に水のような状態でした。17年1月には大分トリニータへのスポンサー料の支払いも滞り、前妻から差し押さえも受けました。小室被告は『マスコミにばれて評判を落とさないか』と心配してました。小室被告の収入は印税などが2億円でしたが、差し押さえでその半分近くを失う状況になったのです。滞納していた慰謝料や養育費など7億8000万円を前妻に支払わないと、差し押さえを解除してもらえない状況になったのです」

小室被告はハンカチを取り出し、さかんに顔を抑えるようなしぐさを見せる。ぬぐっているのは汗か、それとも涙なのか。

検察官「差し押さえの直後、ジャスラックからの著作権料は入金されませんでした。金融機関では借り入れができなかったので、17年1月、高利の金融業者から4000万円を借り入れ、小室被告の借り入れの返済やトライバルキックスの資金繰りにあてました。こんな状況だったので、エイベックスへの6億9000万円の前払い返済はとうてい無理で、吉本興業とエイベックスと話し合いを持ち、3月までにトライバルキックスが返済する契約を締結しました。このとき、エイベックスからは『これからはあなたがちゃんとやってくれるんでしょうね。ちゃんとしてください』とこれまでとは違い、きちんと返済を求めると言われました」

だが、状況は悪化する一方だった。ついには借り入れを代物弁済するため、小室被告が著作権をもつ806曲のうち、290曲を譲渡することになる。その結果、小室被告の収入は印税5000万円しか見込めなくなり、破産への不安が社長の脳裏に浮かぶようになったという。

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