(5)供述“迷走” 「彩香の最後の言葉『お母さん…』は推測」
検察官「検察にひどい調べを受けたことを(弁護士に)言えなかった?」
鈴香被告「後から言えた」
検察官「さっきはすぐ言ったと…」
鈴香被告「最初のうちは言えていた」
検察官「米山豪憲君の遺体の写真を見せられたときにも言ったのでは?」
鈴香被告「言っていない」
検察官「写真を見せられる前から言えなくなっているわけ? 弁護士に言えないのなら、被疑者ノートに書かなくちゃだめじゃない」
鈴香被告「当時はそれがひどい調べかどうか、自分で把握できていなかった」
検察官「よく分からないけど。7月6日に思い出したとき、警察官に『暗くてサクラマスが見えなかった。欄干に座らせた。足がすべって手を離してしまった』とか言っているね?」
鈴香被告「はい」
検察官「事実じゃないでしょ?」
鈴香被告「覚えていない」
検察官「事実じゃないか覚えていないの?」
鈴香被告「…」
検察官「7月6日に足がすべって手が離れて落としたと言っている?」
鈴香被告「はい」
検察官「事実とは違うわけだね?」
鈴香被告「はい」
検察官「なぜ?」
鈴香被告「自分が尻もちをついたことを覚えていたので、それから推測した」
検察官「想像か?」
鈴香被告「はい」
検察官「夜の検事調べで、○○刑事(実名)に手を握ってもらって思い出したと検事に言った覚えはある?」
鈴香被告「記憶が混乱していてよく覚えていない」
検察官「でもこの日の調書に、やたら詳しく、彩香ちゃんに魚が見たいとごねられイライラしたとか道順とか、普段だだをこねない彩香ちゃんが、魚が見えなくてまただだをこねたとか、強い調子で橋に上るよう命じたら自分から上ったとか、今でも主張していることがたくさん出ている。あなたが言わないとそんなこと書けないでしょ?」
鈴香被告「はい」
検察官「署名したことも覚えていない状況で、新しい情報が次から次へと、なんであなたの口から出てきたのか?」
鈴香被告「覚えていない」
検察官「この調書の中に、(彩香ちゃんが)橋から落ちるとき、『お母さん』という声が後々まで声が消えなかった、とある」
鈴香被告「『お母さん』と言ったんだろうなとは言ったと思う」
検察官「想像か?」
鈴香被告「はい」
検察官「翌日には警察(の調書)に殺すつもりで落としたと署名し、(取調官に)ボールペンを抗議で刺した?」
鈴香被告「はい」
検察官「読み聞かせの途中に、抗議で刺した?」
鈴香被告「署名する前です」
検察官「弁護士に言っている?」
鈴香被告「言ったと思う」
検察官「署名する前なのか?」
鈴香被告「はい。くやしかったので、興奮して、自分が言わなきゃいけないことを全部言ったかは覚えていない」
検察官「弁護士の冒頭陳述でも『署名の抗議として』とある。言い分が違うが、話が変わった経緯については?」
鈴香被告「覚えていない」
検察官「変わったかも覚えていない?」
鈴香被告「はい」
検察官「この7月6日に、検察の『殺すつもりで落とした』とする調書にサインしている。このことは、翌日の警察の調べで教えられて初めて気づいたのか?」
鈴香被告「はい」
検察官「調書は見せてもらっていた?」
鈴香被告「見せてもらっていたが…」
検察官「『昨日(署名を)している』と○○刑事(実名)に言われたとき、調書を見せてもらった?」
鈴香被告「いいえ」
検察官「信じられなかったわけでしょ?」
鈴香被告「はい」
検察官「何で信じたのか。○○刑事が言っているから?」
鈴香被告「はい」
検察官「覚えていないのに、簡単に思い込んで警察の調書にも名前書いちゃったの?」
鈴香被告「はい」