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(15)鈴香被告の“すべて”見た女性警察官、証言台へ

秋田連続児童殺害事件の第8回公判は午後2時20分に被告人質問がすべて終了。引き続き検察側の証人尋問が行われた。

証言台に立ったのは、能代署刑事課の女性巡査部長。平成18年4月に長女、彩香ちゃん=当時(9)=が行方不明になったときから、被害者対応の担当として畠山鈴香被告(34)に付き添い、逮捕後は取り調べの補助などを行ってきたという。鈴香被告は、被告人質問の最後に、この女性警察官に対し「印象が悪い」としていたが、実際はどうだったのか。

「裁判で証言台に立つのは初めて」という証人は、警察官らしく、きびきびとした動作で証言台の椅子(いす)に座り、検察側の質問に答え始める。

証人によると、彩香ちゃんが行方不明になったという連絡が入ったときは、能代署管内で起きたコンビニ強盗事件の捜査にあたっていた。

誘拐の可能性があるため、鈴香被告の自宅に秘匿潜入し、脅迫電話の対応や鈴香被告の家の状況などを報告するよう指示を受けたという。

別の刑事とともに捜査車両のアンテナをはずし私服で鈴香被告の自宅に向かう。先着した別の警察官から、(彩香ちゃんが)河原で石を集めるのが好きだったという話を聞き、さらに鈴香被告に質問したという。

検察官「あなたは(鈴香から)どんなことを聞いた?」

証人「彩香ちゃんとの親子関係や、なにか彩香ちゃんに悩みがなかったかなど」

検察官「そのときの鈴香の表情や態度は?」

証人「青ざめ、やつれていた。私は鈴香の手を握り、体を抱きしめた」

検察官「口調はどうだった?」

証人「舌が思うように回っていなかったが、時間がたつと落ち着いてきた」

検察側は鈴香被告がそれぞれの家に電話した時間を、通話記録から順次尋ね、鈴香被告の事件前後の行動と説明が矛盾していることを指摘する。

翌日、彩香ちゃんの遺体が見つかる。鈴香被告の母親は、孫の死に直面し、「川に行くような子ではない。寒かったろう、毛布を持っていこう、おにぎりも持っていこう」と半狂乱に。

証人は、転落した可能性のある場所に案内してほしいと鈴香被告に言われたという。

検察官「それで、どうした?」

証人「鈴香被告は丈の短いスーツとハイヒールだったので、川へ行くにはそぐわないと思ったからそういったら、『自宅へ帰る』というので迎えに行き、一緒に川へ行った」

検察官「靴についていた砂利と橋の砂利の成分が同じだったとかいう話はしたか?」

証人「(彩香ちゃんの)ズックに砂利が挟まっている話はしたが、成分の話はしていない」

検察側は、さらに事件についてどのような説明をしたか、証人に問う。

検察官「『橋のここから落ちた』とか、確定的に話したか?」

証人「そういうことも含まれる、という言い方をした」

検察官「事故であると決めつけなかったか?」

証人「『事件と事故の両面で捜査している』と言った」

検察官「そのときの鈴香被告の態度は?」

証人「私たちの説明には耳を貸さず、『警察が事故と決めつけている』という態度だった」

当初、(彩香ちゃんが)河原での石集めが好きと言っていたにもかかわらず、河原には行くはずがないと言い始めたことについては、こう印象を話した。

証人「話が変わるのは、よくあること」

証人は、終始はっきりとした口調で説明を行った。

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