(12)裁判官質問始まる 鈴香被告はのらりくらり
弁護側は、橋から落下して死亡した彩香ちゃんに対しては、鈴香被告の殺意がなかったことを強調するため、たたみかけるように質問を繰り返した。
弁護人「(彩香ちゃんの手を払ったのは)反射的なことで、殺害を意図していなかったからということ?」
鈴香被告「はい」
弁護人「あなたが初めて豪憲君の事件を自白したとき、(取調室で)○○検事(実名)の手をとりながら自白したとされているが、こういったことはあったのか」
鈴香被告「いいえ」
質問者が2人目の弁護人に交代し、内容は鈴香被告の取り調べ時の細かい状況に及ぶ。
弁護人「被疑者ノートについて、弁護人に『書かなくていい』といわれたことはあるか?」
鈴香被告「はい」
弁護人「(弁護人に)『休むことを優先した方がいい』といわれ、書かなくなったということか?」
鈴香被告「はい」
弁護人「あなたは(取り調べ中に)『休みたい』と言ったことはあるか?」
鈴香被告「はい」
弁護人「そのときは、すぐに休めた?」
鈴香被告「すぐには休ませてもらえなかった」
弁護人「怒鳴られたりしたことはある?」
鈴香被告「はい」
弁護人「他には何と言われた?」
鈴香被告「『もうすぐ、あとちょっとで終わるから』とか…」
弁護人「本当にすぐちょっとで終わったの?」
鈴香被告「(それからさらに)30分とか1時間とかやっていた」
弁護人「(規則で定められた)ギリギリの時間までは(取り調べが)いかないこともあったというが、そのときは『休ませてもらっていた』という意識はあった?」
鈴香被告「いいえ」
弁護人「あなたは『○○検事(実名)のことを信用してしまった。怖い。逆らえなかった』と言っている。これは、怖いから信用してしまったということ?」
鈴香被告「それだけでなく、刑のこととかすごく気になってて…。検事さんの言葉が重くて、すごく怖くなった」
弁護人「つまり、量刑に対する怖さもあったということか?」
鈴香被告「はい」
弁護人「(検事からは)『情状もよくしてやる』という発言もあった?」
鈴香被告「はい」
弁護人「彩香ちゃん事件のあたりでは、量刑に対する怖さも出てきたのか?」
鈴香被告「はい」
弁護人「これ(豪憲君の遺体写真を見たこと)に加えて、量刑のことがあり、弁護人よりも検察官のことを信じてしまったということ?」
鈴香被告「はい」
弁護人「終わります」
続いて、裁判官の補充質問が始まる。
裁判官「あなたと前の夫の○○さん(実名)との関係について聞きたい。あなたは、結婚時、前の夫に逆らえない状態だったのか?」
鈴香被告「逆らえないというか、話をしても無視されたということがよくあった」
裁判官「○○さんからあなたに対して、暴力や暴言はあった?」
鈴香被告「いいえ」
裁判官「彩香ちゃんが橋の欄干に上るのを支えていたとき、触っていたのは手のひらの部分だけ?」
鈴香被告「よく分からない」
裁判官「服はつかんでいない?」
鈴香被告「よく覚えていない」
裁判官「(彩香ちゃんが死亡した)事故の時、(現場の)大沢橋へ行くのに、行きと帰りの道が違う。帰りの道の方が近いが、なぜこういう行き方をしたのか?」
鈴香被告「行きは前に行ったことがある道で、帰りは(これまで)通ったことがない道だった」
裁判官「何で帰りに、今まで通ったことのない道を使ったのか?」
鈴香被告「距離的にこっちの方が近いと思ったから」