(18)抱きつこうとした彩香ちゃんを「手で払った」

弁護人「どちらの足から登った?」
鈴香被告「覚えていない」
弁護人「それから?」
鈴香被告「彩香が『お母さん、支えてて』と言ったので、体のどの部分かわからないけれど、支えていた」
弁護人「なぜ降ろさなかった?」
鈴香被告「自分で『登れば』と言っておいて、降ろすのも変だなと思って。まさか両足まで出すとは思っていなかったので」
弁護人「彩香ちゃんが前に足を出して座るとは思っていなかった?」
鈴香被告「はい。びっくりして、早く降ろさねばと、降ろして帰ろうと思った」
弁護人「時間はどのくらい?」
鈴香被告「1分もない」
弁護人「もっと具体的には?」
鈴香被告「30秒くらいと思う」
弁護人「その間、あなたはどういうことを考えたの?」
鈴香被告「思いもよらない格好になってしまったのでビックリして…」
弁護人「会話はあった?」
鈴香被告「いいえ」
弁護人「それから?」
鈴香被告「彩香は体を左側にねじって私に『お母さん、怖い』と言って抱きつこうとした」
弁護人「それであなたは?」
鈴香被告「思わず…。ビックリして…。左手でこのようにして、払ってしまった」
鈴香被告は証言台で左手を動かし、実演した。
弁護人「左手を外側にして?」
鈴香被告「はい」
弁護人「(左手は)どこかに当たった?」
鈴香被告「体のどこかに当たったと思うが、どこかはわからない」
弁護人「抱きつかれてどう思った?」
鈴香被告「怖いと思った」
弁護人「目は?」
鈴香被告「閉じていた」
弁護人「顔は?」
鈴香被告「顔は右下の方。こういう感じで見ていたと思う」
再び証言台で顔を動かして実演する鈴香被告。
弁護人「怖いというのはどういう感情?」
鈴香被告「自分で汗がかけないので、汗かきの彩香が急に迫ってくる感じがちょっと怖かった」
弁護人「触られるのは怖かった?」
鈴香被告「はい」
弁護人「先ほど、イライラしているときほど触られたくないと言っていたね?」
鈴香被告「はい」
弁護人「それ以外に怖いという感情に何かあったか?」
鈴香被告「わからない」
弁護人「あなたとしては左にねじるように彩香ちゃんが向かってくることは?」
鈴香被告「予想していなかった」
弁護人「びっくりしたのか?」
鈴香被告「はい」
弁護人「左手が彩香ちゃんのどこかに当たった感触が残った?」
鈴香被告「はい」
弁護人「それで彩香ちゃんはどうなった?」
鈴香被告「見えなくなっていた」
弁護人「彩香ちゃんは落ちるとき声を上げたか?」
鈴香被告「いいえ」
弁護人「振り払った後あなたは?」
鈴香被告「尻もちを付いていた」
弁護人「立っていたことはない?」
鈴香被告「…わからない」
弁護人「落ちていくところは見たの?」
鈴香被告「いいえ」
弁護人「尻もちをついたのはなぜ?」
鈴香被告「振り払ったときの反動と、自分でしてしまったことの…ことに対してビックリしたというような感じで…。腰が抜けたようになってしまった」
弁護人「同時に2つ(の要因)が来た?」
鈴香被告「はい」
弁護人「尻もちをついた状態でどのくらいいたのか?」
鈴香被告「かなり長かったと思う。感覚では5分くらい」
弁護人「そのとき、あなたはどうなった?」
鈴香被告「耳鳴りやめまい。手の震え、唇の震え、目の前が真っ白になってチカチカになった」
弁護人「これまでにそういうことはあった?」
鈴香被告「似たような状態はあっても、同じようなことはなかった」
弁護人「かつて感じたこととは違った?」
鈴香被告「はい」
弁護人「それから? それはずっと続いた?」
鈴香被告「はい。信じられないという気持ちでいっぱい」
弁護人「それだけ?」
鈴香被告「信じられない。自分はひとりでここへ来たんだ、と」
弁護人「そのときに思ったことを思いだして」
鈴香被告「…。信じられない。信じたくない。信じない。自分はひとりでここに来たんだ。早く帰らないと彩香がおなかをすかせている、と」
弁護人「それから?」
鈴香被告「車に乗って、来た道とは反対の道を通って帰った」
弁護人「反対?」
鈴香被告「進行方向を右に曲がって、普段通ったことのない道を通って帰った」
弁護人「なぜ?」
鈴香被告「こっちの方が近いと思ったから」
弁護人「車を発進する時点で、自分のしたことはわかっていた?」
鈴香被告「いいえ。わかっていなかった」
弁護人「家に帰ってどうした?」
鈴香被告「家の中を探した。まず彩香の部屋を探したり、押し入れを探したりした」
弁護人「いないことがわかってどうした?」
鈴香被告「近所のお宅へ探しに、2軒ほど行った。米山さんのところにも」
遺影を持った米山豪憲君の両親は、鈴香被告の証言をうつむいてじっと聞いていた。