(13)交通事故のニュース知り、「この中に彩香がいれば…」
弁護人「17年、彩香ちゃんが3年生になった後、生活状況に変化はあったのか」
鈴香被告「特にない」
弁護人「彩香ちゃんへの接し方に変化は」
鈴香被告「特に変わっていない」
弁護人「職探しは続けたのか」
鈴香被告「はい」
弁護人「どこで」
鈴香被告「職安や地元の新聞で」
弁護人「学校行事やレクリエーションは出ていたのか」
鈴香被告「3年生の春、授業参観に1回いった。レクリエーションは秋田市の『ザブーン』に初めていった」
弁護人「3年の担任で証人に立った先生と、連絡帳以外に連絡は取り合ったのか」
鈴香被告「電話でやりとりした」
弁護人「どちらから」
鈴香被告「私から」
弁護人「用事は」
鈴香被告「お小遣いのことや、他の子供の就寝時間のことなど」
弁護人「頻度は」
鈴香被告「月1回くらい」
弁護人「答えてくれたか」
鈴香被告「はい」
弁護人「先生はあなたが彩香ちゃんを時々を迎えに来なかったといってるが」
鈴香被告「体調が悪くて迎えにいけないときもあった。父親が倒れたときも」
弁護人「17年9月に、父親が脳梗塞(こうそく)で倒れて介護してた」
鈴香被告「はい」
弁護人「辛かったか」
鈴香被告「思っていた以上に辛かった。まず医者のいうことを聞かない。他の患者の愚痴をこぼす。『自分に合わない』と薬を飲まない」
弁護人「あなたが怒られ役だったのか」
鈴香被告「はい。最初は辛かったけど慣れてからは『またか』と」
弁護人「介護は辛いことだけだったのか」
鈴香被告「いえ。母と弟に頼られているんだなと思い喜びもあった」
弁護人「その他は」
鈴香被告「ヘルパーの仕事を生かせてよかった」
弁護人「母親から経済的に頼られるようになった。それは食費か灯油代か」
鈴香被告「灯油代だった」
弁護人「それで(実家に)いかなくなったのか」
鈴香被告「ちょっとニュアンスが違う。いつも親に頼っていたので、私としては親に頼らずどこまでやれるのかやってみようと。月末は『助けてほしいというので、その時は助けて』と母に言って。クリスマスなど行事のときは必ず顔を出すからと」
弁護人「自立しようとしたのか」
鈴香被告「そう」
弁護人「ちょっと話を戻して、彩香ちゃんが3年生になり授業参観に1回しか行ってないがなぜか」
鈴香被告「体調が悪くて授業参観だけでなく学芸会も行けなかった」
弁護人「それは父親の看病もあるのか」
鈴香被告「ない」
弁護人「17年10月に、あなたと(友人の)Aさんの間で子供の列に(車が)突っ込んだ事故の件でメールをしたか」
鈴香被告「はい」
弁護人「この記録をみると午後5時12分。Aさんが『いやあ』という始まり。その前にあなたはメールしたのか」
裁判長の許可を得て、メール記録の抜粋を鈴香被告に見せる。
鈴香被告「はい」
弁護人「何分前」
鈴香被告「直前。5時のニュースをみてメールしたので」
弁護人「(事故のニュースは)テレビでみたのか」
鈴香被告「そう」
弁護人「その日の事故だったのか」
鈴香被告「そう」
弁護人「最初のメールの内容は」
鈴香被告「『事故にあった人や家族には悪いけど、もしこの中に彩香がいれば人生は変わっていたのかもしれない。そう一瞬でも考えた自分はだめな人間なのか』というような内容」
弁護人「それは本心で送ったのか」
鈴香被告「もっと軽い気持ちで、心に浮かんだことをメールにした」
弁護人「Aさんからの返信内容は予想外だった?」
鈴香被告「Aさんは姐御肌の相談相手なので怒るだろうと思った」
弁護人「どのように」
鈴香被告「『何いってるんだ。彩香もいてあなたもいるんでしょ。離れたら分かるよ』とかそういうものだと思った」
弁護人「返信を見たのは」
鈴香被告「(午後)7時から8時くらい」
弁護人「なぜ」
鈴香被告「晩ご飯の時間だった」
弁護人「内容を見てどう思った」
鈴香被告「意外だった。Aさんも悩んでいるんだなあと」
弁護人「(文字化けを示す)イコールの文字がある。これはどんな絵文字だったのか」
鈴香被告「車とか雪だるまとか悲しい顔とか、そういうのだと思います」
弁護人「午後10時28分にAさんから『そういう気持ちも分かる』と返信。その前にどんなメールを送ったのか」
鈴香被告「『(彩香ちゃんを)かわいがりたい気持ちと、うっとうしい気持ちがある。そういう両方の気持ちがある』という内容」
弁護人「23時19分に次の『ごめん』というメール。その間に返信はしたのか」
鈴香被告「ないと思う」
弁護人「Aさんから続けて(メールが)きた」
鈴香被告「はい」
弁護人「Aさんも『自分の子供を愛せない』というメールは見たのか」
鈴香被告「(その時は)風呂に入っていた」
弁護人「(メールを見て)どう思った」
鈴香被告「真剣に対応してくれてるなと思った」
弁護人「最初の(怒ってくれるという)思惑と違ったが」
鈴香被告「Aさんも悩むんだと思った」
弁護人「返信はした」
鈴香被告「はい」
弁護人「内容は」
鈴香被告「『大きな声を出したり無視したりする。これも虐待になるのかな』という内容」
弁護人「(Aさんからの)その返事が23時35分、『どうしようもないんだよね』というもの。その前にどんな内容(のメール)を送ったのか」
鈴香被告「『かわいがりたいのにかわいがれない。どうしたらいい?』という内容」
弁護人「この日のメールはこれで終わりか」
鈴香被告「そうです」
弁護人「その後、同様のメールのやりとりはしたのか」
鈴香被告「一切ない」
弁護人「結局、この日のメールは何を期待したのか」
鈴香被告「Aさんにちょっと怒ってほしかった」
弁護人「ところが違った」
鈴香被告「はい」
弁護人「この日のAさんの気持ちについてはどう思う」
鈴香被告「真剣に考えてくれてるんだなと」
弁護人「Aさんの悩みについては考えたのか」
鈴香被告「自分のことが精一杯で、考えていない」
弁護人「この(メールの)他に子供の死について話し合ったことはあるか」
鈴香被告「ない」
弁護人「子供の死を願ったことは」
鈴香被告「ない」
弁護人「(子供の死を)想像したことは」
鈴香被告「ない」