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(9)検察官の追及に「詐病なかったとはいえない」

西脇巽鑑定人への尋問は、もう1人の弁護人にバトンタッチ。鈴香被告が健忘した時間の範囲を簡単に確認し、弁護側の尋問は終わった。

続いて、検察側の尋問に移る。弁護側の尋問を、時折、苦笑を浮かべながら聞いていた検察官は、鑑定書の正確性に疑問を呈し、切り崩しを図る。まずは鑑定人に頼んだとされる、裁判の傍聴が実行されなかったことをチクリ。

検察官「精神鑑定の実績は何回かあるようだが、最後はいつか?」

鑑定人「ここ数年ない。最後は簡易鑑定だったと思うが3、4年前」

検察官「今回の鑑定は、厳しい条件の下で行われた。関係者の証言も、弁護側がダメという部分は見ていない。当初、鑑定をお願いするとき、『法廷を傍聴して下さい』とお願いしたが?」

鑑定人「覚えていない。そんな義務があったら、鑑定を引き受けていない」

検察官「義務というより、できるだけ出てほしいとお願いしたはず」

鑑定人「いえー、ちょっと…。病院が忙しく、土曜日しか時間取れないし、今日みたいに平日抜け出すのは大変」

検察側は、鈴香被告が鑑定人に語った内容と公判での話が食い違っている点を指摘する。鑑定人は「ぶれ」があることを最後は認めた。

検察官「(鑑定人は公判記録を見て)『公判で被告が話したことと、面接で話したことにぶれはない』と述べているが?」

鑑定人「はい」

検察官「見落とされたと思うから言うが、被告は『尻もちの後、家に戻り彩香を探している内に、段々と忘れた』と言っている。先生に話したことと違わないか?」

鑑定人「…そうですね」

検察官「被告は、『落とした瞬間のことは思い出せないが、検察官に言われ突き落としたと言った』と先生に言っている?」

鑑定人「はい」

検察官「しかし、前回の公判で、被告は『それは違う。間違いなく振り払った』と。法廷で先生にそう言ったのかと問うと、『違います』と。ようするに『振り払ったことは間違いない』と。それも大きな違いではないか?先生の話と、法廷の話にぶれがあるのではないか?」

鑑定人「ぶれと言えばぶれ、ですね」

さらに検察側は追い討ちをかける。鈴香被告の行動と、鑑定人のいう健忘の範囲に整合性がないと主張したのだ。

検察官「結局、先生の考えでは、落とした瞬間に、『無理心中しようとしたが自分は死ねない』と忘れたと。忘れた範囲は?」

鑑定人「(彩香ちゃんを手で)払ったというか尻もちをつくまで」

検察官「家から橋に行き、彩香ちゃんを欄干に乗せるまでのことや、橋から車に乗り家まで帰ったことは忘れたのか?」

鑑定人「あのー。尻もちをついた時に橋までのことを忘れたと」

検察官「どこから?家を出たあたりか?」

鑑定人「(彩香ちゃんが)ピカチュウを友達に見せに出かけて以降が空白になっている」

検察官「そこがよく分からない。橋から落ちたのは午後6時45分ごろ。ピカチュウの時間は午後4時。2時間以上ある。その間、彩香ちゃんはマンガを読んだり。なんで(そんなことまでを)忘れる必要があるのか?」

鑑定人「おそらく健忘の整合性を持とうと忘れたと思う」

検察官「事後的に整合性を求めるなら分かるが、瞬間的に忘れる理由は?」

鑑定人「後から忘れることもあり得る」

検察官「では(瞬間的ではなく彩香ちゃんを)探し回っている短時間の内に忘れたことになるのか?」

鑑定人「…。そう考えるほかない」

鈴香被告は時折検察官を見つめている。検察官に論理的に詰められ、鑑定人は「詐病」の可能性までも認めた。

検察官「見落としていると思うが、被告はピカチュウの話を学校の先生にしている。『6時になっても彩香が帰ってこない』とか、時間をごまかす話をしている。被告は捜査段階で『証拠隠滅のためにやった』と。こちらの方が整合性があるのでは?」

鑑定人「あのー…。詐病の利用がなかったとは言えない」

検察官「では(彩香ちゃんを)探している内に健忘したというのはおかしいのでは?」

鑑定人「どうなんでしょう。健忘したところに詐病的な要素が加わったのでは…」

⇒(10)攻め込む検察側、笑う鑑定人