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(13)起訴前鑑定は検察寄り?「表現まずかった」バツ悪そうな鑑定人

検察側は、西脇巽鑑定人が鈴香被告を“バカ正直”と表現したことについて、引き続き厳しく追及する。鈴香被告の供述ばかりでなく、鑑定人の証言の矛盾点も明らかにさせたいようだ。

検察官「鈴香被告が、言わなくていいことをベロッと言ってしまう場面はそんなにたくさんあったのか?」

鑑定人「うーん…。(彩香ちゃんとの)スキンシップが嫌だという話がそれに当たると思うが…」

検察官「スキンシップの話は言わなくていいことではなくて、(受診していた病院の)カルテにすでに書かれていたこと。病院の先生には正直に話すのが普通では?」

鑑定人「バカ正直な面と、そうでない面がある。バカ正直だけでは説明がつかない」

正直な鈴香被告が断り切れず、調書にサインしてしまったとする鑑定書の矛盾点を突こうとする検察側。鑑定人に対する質問はさらに厳しくなる。

検察官「われわれからすると、(鈴香被告は)『それ、ウソでしょ』ということも言っているし、『違うんじゃないの』と言っても供述を変えなかったこともある。いやなことを拒否する能力がないとは思えないのだが?」

鑑定人「うーん、例えてみると、一番わかりやすいのはお父さんの介護の件だと思う。介護はやりたくなかったのに、お母さんに言われると断れずにやってしまうところがあった」

検察官「それは、お母さんの言うことだから逆らえないのであって、被告人の性格ではなく、お母さんとの関係からくるものじゃないのか。検事や警察には反発しており、必ずしも調書の内容をそのまま認めてしまっているとは言えないのでは?」

鑑定人「まあ、はい」

次に検察側は、鈴香被告が彩香ちゃんを橋から突き落とした前後のことについて、「覚えていない」とした時間帯が段階的に長くなっていることについて、鑑定人に同意を求めた。

また、法廷での説明と鑑定人に対する説明が矛盾していることについても言及。鈴香被告をかばうような発言が続いた鑑定人も、たどたどしく矛盾を認めた。

検察官「鈴香被告が法廷で言っていることと、鑑定人に言っていることは、ぶれているという認識で間違いないか」

鑑定人「…都合よく解釈すれば、どっちともとれる」

続いて検察側は、起訴前鑑定の結果を“検察側寄り”と評したことに触れた。厳しい口調で、鑑定人に対し鑑定結果の説明を求めた。

検察官「(西脇氏が)起訴前鑑定の鑑定結果を『公正性に欠けている』と批判しているなかで、『(鑑定結果が)検察寄りじゃないか』という表現がある。これ、どういう意味?」

鑑定人「ええと…。起訴前鑑定人が白紙の状態のつもりでやっているとは思うが…。文章を読んだ印象では…。うーん、検察側に対する、何と説明してよいか分からないが、批判的なものは読み取れないと思った」

ところどころ言葉に詰まりながら、少し慌てたようすで証言。

検察官「検察側の冒頭陳述に沿っているからか?」

鑑定人「…はい」

検察官「分かりづらい所もあったと思うが、検事は、起訴前鑑定書ができる前に鑑定内容について(起訴前鑑定人と)話したり、聞き取ったりしながら主張を組み立てる。一致するのは当然のことでは?」

鑑定人「表現がまずかったと思う」

鑑定人は、苦笑いをしながら、バツが悪そうに受け答えた。

⇒(14)彩香ちゃんへの“虐待”「怒りや攻撃性ない」