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(6)被告の証言「公判前と比べ、ぶれてきた印象」

昼の休憩をはさんで、午後1時15分に公判が再開された。午前に続いて、西脇巽鑑定人に対する弁護側の質問が行われた。鈴香被告は、無表情のまま入廷。席に座ると、ちらちらと落ち着かない様子で傍聴席に視線を送ったが、法廷が再開されると、うつろな表情で正面を向いた。

弁護側は、検察側が行った別の鑑定人による起訴前鑑定について質問。“鈴香被告の怒りと攻撃性による無差別殺人”とした起訴前鑑定の結果について、疑問を投げかけるように鑑定人に問いかけた。

弁護人「起訴前鑑定で、怒りと攻撃性による無差別殺人という結果があったが、これについてどう考えるか?」

鑑定人「怒りや攻撃性は誰でも少しは持っている感情で、(鈴香被告が)特別に強く持っていたとは思えない」

弁護人「なぜそのように考えるのか?」

鑑定人「なぜといわれても…。事件は、いろいろな原因が起こした。怒りと攻撃性が起こしたとは思えない」

弁護人「怒りや攻撃性は、被告人はどの程度持っていたか?」

鑑定人「元夫など、親しい人に対してはあったようだが、普通の人に対しては(怒ることが)できない人だと思う」

弁護人「どうして?」

鑑定人「基本的な性格が非社交的で内向的。人に接するのも苦手なタイプなので」

弁護側は、“無差別殺人”とした起訴前鑑定に対する見解について再度質問する。殺人が無差別ではなかったことを、西脇氏に言わせたいようだ。

弁護人「起訴前鑑定人の“無差別殺人”という結果について、どう考えるか」

鑑定人「なぜそんな鑑定結果になったのかわからない。無差別殺人には、被害者と加害者の間に関係がないが、今回の件は(関係が)とても濃い。なぜこんな結果になったのか…」

続いて、弁護人は被告人の流されやすい性格について言及。被告が安易に調書の内容を認め、サインをしてしまったことを立証しようとした。

弁護人「鑑定調書などに、被告人が安易に調書の記載内容を認めてしまう傾向があると書かれていた。どの内容を指してそういっているのか」

鑑定人「(彩香ちゃんを)突き落とした、払った、といった話の中で、取調官に『そうなんじゃないのか』といわれると、『そうだ』と認めてしまう。明確に『そうじゃない』とはいえず、署名してしまうようだ」

弁護人「安易に認める傾向は、性格からくるものなのか」

鑑定人「粘っこく主張を通すところは、あまりないように思う。(彩香ちゃんが行方不明になったという)チラシを学校に持っていき、校長先生に断られたときもすぐあきらめた。調書にも表れていると思う」

弁護人は西脇氏に対し、鈴香被告の公判での証言内容と面接時の矛盾点がないことを確認しようとした。西脇氏は“話がぶれた印象あった”と意外な反応を示す。

弁護人「鑑定人に対して述べている内容と、公判で述べている内容に矛盾点はなかったか?」

鑑定人「これまでの公判を聞きながら、(彩香ちゃんを突き落として)尻もちをついたときの健忘の部分が増えているな、言っていることがぶれているな、という印象を持ったが、鑑定書を書く段階ではそうは思っていなかった」

弁護人「面接の時、忘れたと言っていたか?」

鑑定人「本人が、『そのままうちに帰って彩香ちゃんが帰ってくるのを待った』という話をしていたので、そのときは健忘はなかった」

⇒(7)鑑定人ダメ出し「人生の大部分を反省しなきゃ」