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(20)こだわる授業参観「毎回行った!」豪憲君母の証言に反論

2人の裁判官に続き、最後に藤井俊郎裁判長が鈴香被告に質問。

裁判長「あなたは彩香ちゃんにベタベタされるのが苦手だったというが、抱っこしてほっぺにチューはできた。いつくらいまでできたの?」

鈴香被告「…」

裁判長「できたり、できなかったり?」

鈴香被告「はい」

裁判長「まとわりつかれるのがイヤということもあった?」

鈴香被告「ちょっと逃げたり、でも子供は大人が思っている以上に敏感で、なるべく気づかれないようにしていた」

裁判長「あなたが寝ているときに抱きついてきたりは?」

鈴香被告「ない」

裁判長「なぜしなかったのか?」

鈴香被告「分からない」

裁判長「あなたが怒るからでは?」

鈴香被告「怒りません」

裁判長「もともとそういうことをしない子なのか?」

鈴香被告「…」

前回の公判で採用された精神鑑定の鑑定書をふまえて、裁判長はさらに鈴香被告の“記憶”について質問を続けた。彩香ちゃんの死亡に関与したことについて、最初は「思いだしたくなかった」と話したものの、数分後には「思いだしてよかったと思っている」と、正反対の結論を導き出す。

裁判長「彩香ちゃんのことを無理やり思いださせられたことについてはどう思っているか?」

鈴香被告「思いだしたくなかった」

裁判長「今でも思いださない方がよかったと思っているのか?」

鈴香被告「はい」

裁判長「本当か? 思いださないで彩香ちゃんのことを祈ることになる」

鈴香被告「…それに気が付かなければそうなる」

裁判長「今はどう思っているのか?」

鈴香被告「今は、たとえ事故であれ、そういうことになってしまい、彩香に申し訳ないと思っている」

裁判長「今は思いだしてよかったと思っているのか、そうでないのかという質問だが?」

鈴香被告「すごく難しい質問だが、やっぱり思いだして…大沢橋という場所も思いだして、少しは彩香の冥福につながる…と思って…。良かったと両手を挙げて喜ぶまではいかないが、良かったと思っている」

質問は豪憲君事件へ。裁判長の興味も、凶器の腰ひもに向いた。

裁判長「豪憲君殺害に使ったピンクのひもと一緒にかけてあった白いひもも(事件後に)切った。なぜ?」

鈴香被告「見たくなかった」

裁判長「あなたが使ったわけじゃないでしょ?」

鈴香被告「同じような長さのひもだったので」

裁判長「思いだしてしまうということ?」

鈴香被告「はい」

「他に質問はないか?」と問う藤井裁判長に、検察側が「ひとつだけ」と立ち上がった。

検察官「あなたは彩香ちゃん事件の後、彩香ちゃんのため何ができるかで一生懸命で、要するに犯人探しで自殺を考えていなかったと、さっきそういう話だったが?」

鈴香被告「犯人探しではない」

検察官「何があるか知りたいから?」

鈴香被告「はい」

検察官「警察に探してもらいたかったから、警察に行ったんでしょ?」

鈴香被告「そうだ」

検察官「それならなぜ、(不審者として)携帯の電波の業者を見たことを警察に届けなかった?」

鈴香被告「届けた」

検察官「警察は5月17日、豪憲君がいなくなったときに受けているが?」

鈴香被告「話した」

検察官「あやしい人がいるというあなたのお父さんの知人の話はした?」

鈴香被告「はい」

検察官「警察にしてるのか?」

鈴香被告「はい」

検察官「それは豪憲君の事件よりも前に?」

鈴香被告「はい」

検察官「この話を口にしたのは逮捕されてからではないのか?」

鈴香被告「違う」

検察官「それでは、警察官の○○さん(実名)がウソをついているというのか?」

鈴香被告「警察官だからどうのではないが、きちんと言った」

質問は、鈴香被告が授業参観に参加していた頻度に。被告は、強めの口調で、学校に行っていたことを強調する。

検察官「彩香ちゃんが1、2年生の時、授業参観に毎回行ったか?」

鈴香被告「行った」

検察官「豪憲君のお母さんがウソをついていると?」

鈴香被告「(自分を)見ていないか、遅れていったとかもあったので、豪憲君のお母さんが私を見ていないのかも」

検察官「授業参観の後にPTAが連続してあり、豪憲君の両親は出席している。見ていないことはありえないのでは? 遅れて入っていったら目立つし、分かるのではないか?」

鈴香被告「きょうだいが多くて、出入りしている人は何人もいたから…」

最後に藤井裁判長が再び質問した。

裁判長「あなたは午前中、豪憲君のお父さんの話を左足と手を震わせて聞いていた。どんな気持ちだったのか?」

鈴香被告「何を言われても当然のことを言われていると思って、聞いていた」

裁判長「その後、落ち着いて聞いているように見えたが、気持ちの変化はあったのか?」

鈴香被告「ずっと動揺というか、話を聞くのが怖いとは思っていたが、ちゃんと受け止めなければ、自分のしたことなのだから、きちんと聞いて受け止めようと思って聞いていた」

午後4時27分、被告人質問は終了。鈴香被告は無表情のまま退廷した。傍聴席の母親には目をやったが、涙ながらに証言した豪憲君の両親に顔を向けることはなかった。

次回の第12回公判は12月21日午前10時半から。鈴香被告の精神鑑定を行った鑑定人が証人として出廷し、質問がなされる予定だ。これが年内最後の公判で、来年1月中には論告求刑公判までこぎつけられる見通しだ。

⇒第12回公判