(15)豪憲君両親への悪口書いた10月23日「被告人質問の準備で大変です」
証言台の前に座る畠山鈴香被告の口が開くのを待っていた検察官も返答をあきらめたのか、質問を再開した。「なぜ豪憲君の両親の悪口を書いたのか」という点を厳しく追及することで、鈴香被告の反省はニセモノだと証明することが検察側の狙いのようだ。
検察官「日記の中にも、あなたの母親や弟の悪口は出てこないが?」
鈴香被告「そうだと思う」
検察官「それに対し、たとえば証言をした学校の先生のこととか、父親の本家のこととか、いろいろ悪く書かれている。覚えているか?」
鈴香被告「覚えていない」
検察官「証言とかされて、ムカついたから書いたわけでしょ?」
鈴香被告「むかついたから書いたわけじゃない」
検察官「私の悪口だって書いている。あなたに言わせると、私は“あわれな人”、“人の気持ちが分からない人”だから。でもね、悪口なら私のことを悪く書けばいいのに、よりによって、なぜ豪憲君のご両親らにああいうことを書いたの? 自分について、都合の悪いことを証言した元恋人のことについても悪口は書いていない。『別れて愛していたことが分かった』とか書いている」
鈴香被告「…」
検察官「よく分からないですよ。もし証言されてショックなら、元恋人に当たればいいじゃないか」
鈴香被告「…」
検察官「答えられないですか?」
質問に対し沈黙を続ける鈴香被告と、畳みかけるように質問を繰り返す検事を見かねたのか、裁判長が「次の質問へ」と促した。検事はさらに、日記の別の個所の矛盾を追及する。鈴香被告は体を小さく震わせながら、沈黙を続けた。
検察官「10月23日は、被告人質問の準備とかしていたわけでしょう。どう答えようとか考えたり、反省していることなどを話さなきゃいけないとか」
鈴香被告「…」
検察官「10月23日の日記に、『被告人質問の練習で大変です』と書いてある。それと同じ時期に(豪憲君の両親の悪口を)書いてあるから、分からない。しかもさっきあなたは『本心でなく、勢いで書いた』とか言っていた」
鈴香被告「衝動的だった」
検察官「衝動的に、本心じゃないことをどうして書ける?」
鈴香被告「…」
検察官「それに、これ、(日記とは)別のノートに書いたんでしょ? (精神鑑定の鑑定医の)西脇先生にもみせるつもりもなく、こっそり書いたのでしょ?」
鈴香被告「違う。ノートが鑑定のために引き上げられたので、かわりのノートに書いた」
検察官「さっき弁護士に誘導されていたけど、『死刑になりたいから、わざと書いた』と言ってたのは本当?」
鈴香被告「はい」
検察官「よく分からない。死刑になりたいのなら、なぜそれを被告人質問のときに言わないの。こっそり書いて」
鈴香被告「…」
検察官「今でも死刑になりたいなら、なぜ『衝動的』とか『本心でない』とか言うのか。自分をかばってうそをつく態度が許せないと、豪憲君のご両親が言っていたのを聞かなかったか?」
鈴香被告「…」
検察官「これ読んだとき、(豪憲君の)お母さん、泣き崩れてたんですよ。あなた涙をふいているけど、それどころじゃない状態だった。あなたは、自分に都合が悪いものが出たときに初めて泣いたじゃないか」
鈴香被告「…」