(4)同居の姉、黒い服で涙 最後の言葉は「OK、行ってきます」
続いて、殺害された東城瑠理香さんの姉に対する検察側の証人尋問が始まった。東城さんの姉は上下黒のスーツ、首には白いネックレスを着け、まるで喪服のような姿だ。しっかりとした足取りで、うなだれて座る星島貴徳被告の方に目を向けることなく、証言台へと進んだ。宣誓の後、検察側による証人尋問が始まった。
検察官「あなたは昭和58年5月生まれですね」
証人「はい」
検察官「瑠理香さんは昭和59年生まれですので、年子ということですね」
証人「はい」
検察官「下には、昭和63年生まれの妹さんがいらっしゃるので、3人姉妹ということですね」
証人「はい」
検察官「あなたは平成20年3月から、瑠理香さんと2人暮らしをしていましたね」
証人「はい」
小声ながらも、しっかりと質問に答える東城さんの姉。検察官の尋問は、ここから東城さんが星島被告に殺害された“あの日”へと移った。瑠理香さんの姉は、忘れたくても忘れられない忌まわしい記憶をたどっていく。
検察官「平成20年4月18日、瑠理香さんが殺害された日ですが、出勤するまでは瑠理香さんと一緒でしたか」
証人「はい」
検察官「勤務先は、それぞれどこですか」
証人「私は新宿の○○(会社名、実名)、瑠理香は四ッ谷の○○(同)です」
検察官「お休みはいつですか」
証人「私は火曜日と土曜日、瑠理香は土日です」
検察官「18日の金曜日、あなたが起きたのは何時ごろですか」
証人「午前7時45分ごろです」
検察官「あなたが起きた時、瑠理香さんは何をしていましたか」
証人「お弁当を作っていました。ハッシュドポテトを揚げていました」
検察官「その時、瑠理香さんはあなたに、何か言いましたか」
証人「『キミの分もあげるね』と…」
ここで東城さんの姉は一瞬、涙声となり、言葉を詰まらせた。
検察官「あなたは、瑠理香さんに何と呼ばれていたのですか」
証人「『お姉ちゃん』とか『キミ』とかです」
検察官「あなたは、瑠理香さんに何と言いましたか」
証人「自分で揚げるからいいよ、と言いました」
検察官「瑠理香さんはお弁当を持参していたのですか」
証人「はい」
検察官「何に入れて持って行っていましたか」
証人「青の手提げ袋です」
ここで検察側は、傍聴席から見て法廷右側の壁に設置された大型テレビで、瑠理香さんが持参していたという手提げ袋の写真を示した。その後も東城さんの所持品を示す際は、このテレビ画面に1つ1つ映し出し、東城さんの姉に確認していった。
同時に、別の検察官は法廷右側にあったボードを裏返した。1つは瑠理香さんと姉が住んでいたマンションの見取り図、もう1つはマンション周辺の地図が描かれている。
検察官「手提げ袋はこれ(テレビの画像)ですね」
証人「はい」
検察官「18日はどちらが先に家を出たのですか」
証人「瑠理香です」
検察官「何時ごろでしたか」
証人「午前8時20分ごろです」
検察官「天気はどうでしたか」
証人「雨でした」
検察官「その時、あなたは瑠理香さんに何か言いましたか」
証人「『電車が止まっているかもしれないから、メールして』と言いました」
検察官「瑠理香さんは何と言いましたか」
証人「『うん、オーケー、行ってきます』と言いました」
検察官「最後の言葉は覚えていますか」
証人「『行ってきます』だったと思います…」
ここで再び東城さんの姉は声を詰まらせた。東城さんとの平穏な朝の会話を再現するうち、様々な思い出が頭をよぎったのだろうか。星島被告は、東城さんの姉の顔を見ることなく、うつむいたままだ。
検察官「瑠理香さんは鍵を持っていましたか」
証人「はい」
検察官「鍵はどのようにして持っていましたか」
証人「狐のしっぽのようなキーホルダーと一緒に持っていました」
大型テレビに、3本の鍵がついたかわいらしいキーホルダーが映し出される。
検察官「自宅の鍵はどれはわかりますか」
証人「真ん中のです」
検察官「自宅の最寄り駅はどこですか」
証人「JR京葉線の潮見駅です」
検察官「歩いてどれくらいかかりますか」
証人「10分くらいです」
検察官「途中には何がありますか」
証人「コンビニのサンクスやスーパーのマルエツがあります」
検察側は瑠理香さんの姉の証言に沿って、先ほど用意したボードの近所の地図に、「サンクス江東潮見店」「JR潮見駅」などと書かれたマグネットを張っていった。