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(10)骨49片、肉片172個…法廷に映し出された「東城さんのすべて」

検察側は引き続き、捜索で見つかった東城瑠理香さんの所持品や、遺体の一部などの証拠物を次々と大型テレビに映し出した。星島貴徳被告は視線をテレビに向けることはなく、時折、目をつぶって検察官の言葉を聞いている。

検察官「これはファスナー付き革製品。これは平成20年6月6日の捜索で下水管から発見された免許証の一部です」

星島被告は免許証を縦に6等分に裁断したとみられ、このうち見つかった4枚が大型テレビで示された。免許証の中で温和なほほえみを浮かべた東城さんが、法廷を見つめた。続いて思わず目を背けたくなるような、東城さんの変わり果てた姿がテレビに映し出された。

検察官「これは同じく6月6日の捜索で見つかった肉片の一部です。真ん中のくぼんだ所はおへそです。へその上には、東城さんが生前開けていたというピアスの穴と一致します。さらにこの捜索で4つの肉片が発見されており、いずれも東城さんのDNAの型と一致しております。下に映っているメジャーからも分かるように、すべて5センチ角程度に切り刻まれています。これは、指の一部です」

発見された指は人さし指か中指のようだ。一部が腐敗したためか、全体的に色は黒ずんでおり、第1、第2関節ともに折り曲がった形だ。理不尽極まりない殺され方をした東城さんの無念さが伝わってくる。法廷では、思わずテレビから顔を背ける女性の傍聴人もいた。

続いて検察官は、昨年5月28〜6月6日の間に発見された骨49片、肉片172個を次々とテレビに映し出した。あまりにも無残な瑠理香さんの姿に、法廷が水を打ったように静まりかえる。ひと通り証拠物の説明を終えると、検察官はひときわ大きな声でこう締めくくった。

検察官「以上が証拠物、見つけることができた東城さんに関するすべてのものです。遺族のもとへ返すことのできた、東城さんに関するすべてのものでもあります!」

星島被告は相変わらず、身動き一つしない。検察官の声は星島被告の心に届いているのか、その様子からは判断がつかない。

続いて、星島被告本人に対する尋問へと移った。裁判長に促され、証言台へと歩みを進める星島被告。背中を丸め、のそのそとした足取りで証言台の前に立った。緊張しているのか、手は軽く握りしめられている。青白い顔色で裁判長を見据え、ゆっくりと一礼した。

検察官「被告は5月25日に住居侵入容疑で逮捕され、死体遺棄、死体損壊容疑で再逮捕、殺人容疑でさらに再逮捕されましたね」

星島被告「はい…」

検察官「いずれの容疑でも起訴されましたね」

星島被告「はい…」

星島被告の声はかすれ、ほとんど聞き取ることができない。裁判長が星島被告を諭した。

裁判長「被告は、もっとはっきり答えてくれるかな」

星島被告「はい」

検察官「検察庁で被告の取り調べを担当したのは、この私ですね」

星島被告「はい」

検察官「私が被告から取った供述調書に、間違いなどはありませんか?」

星島被告「はい。間違いはありません」

検察官「被告が(現場となった)マンションに引っ越しをしたのはいつですか?」

星島被告「平成20年2月9日と覚えています」

検察官「入居したのは、何号室ですか?」

星島被告「9階、918号室です」

検察官「一番、南側の部屋ですね」

星島被告「はい」

検察官「被告が入居した時点で、9階のエレベーターより南側に入居している人はいましたか?」

星島被告「いなかったと思います」

検察官「なぜ、そうわかるのですか?」

星島被告「電気メーターだったと思います」

検察官「電気メーターは通路に面しているんですか?」

星島被告「はい」

電気メーターが動いている様子がなかったから、他の入居者はいないと思っていたという星島被告。普段から電気メーターを確認する癖でもあったのだろうか。

検察官「1室とばした隣は916号室ですね?」

星島被告「はい」

検察官「916号に入居者が来たことを知ったのはいつですか?」

星島被告「(平成20年)3月初旬か中旬か。はっきりとは覚えていません」

検察官「なぜ、わかったのですか?」

星島被告「お姉さんの方とすれ違ったことがあったからだと思います」

冒頭陳述で検察側は「星島被告は916号室前で見ず知らずの女性を見かけたことで、自室に連れ込んで乱暴することを決意した」と指摘している。東城さんは姉と同居していたが、星島被告は東城さんの姉を見て、1人暮らしの若いOLが入居したと勘違いをしたようだ。

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