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(17)「東城さんは恐怖から汗をかいていた」…指紋や足跡拭きまくった被告

検察官は星島貴徳被告をにらみつけるような厳しい表情で、尋問を続けた。対する星島被告は消え入りそうな声だ。検察側は、緊縛された状態の東城瑠理香さんが横たわる傍らで、星島被告が東城さんの携帯電話を探した理由をただした。

検察官「なぜ、東城さんの携帯電話にこだわったのですか?」

星島被告「着信があったら不審に思われると思いました」

検察官「着信とは、誰から?」

星島被告「友人などです」

検察官「友人から電話があって出ないと、どうしたのかと思われるということですか?」

星島被告「はい」

検察官「それ以外の理由はありますか?」

星島被告「ないと思います」

検察官「携帯電話を探すために何をしましたか?」

星島被告「カバンを物色しました」

検察官「中にありましたか」

星島被告「ありました」

検察官「携帯にはアクセサリーなどは付いていましたか?」

星島被告「白のぬいぐるみのようなものが付いていました」

検察官「何を形どったものですか?」

星島被告「何かの動物だったと思います」

検察官「携帯を発見して、どうしましたか?」

星島被告「電源を切ろうと思いましたが、見たことのない白の携帯だったので、ボタンがわかりませんでした。それで電池をはずしました」

検察官「どうやって?」

星島被告「マイナスドライバーを探して、携帯の裏蓋をこじ開けました」

検察官「携帯はその後、どうしましたか?」

星島被告「バックに戻しました」

携帯を探したのは、東城さんを拉致したことを友人らに気付かせないためだったと話す星島被告。ドライバーを探すなど、星島被告はこの時点では比較的、冷静だったようだ。

検察官「あなたはその時、東城さんの様子を確認しましたか」

星島被告「はい」

検察官「どんな様子でしたか?」

星島被告「苦しそうでした」

検察官「それでどうしましたか」

星島被告「目隠しが鼻にまでかかっていたので、少し緩めました」

検察官「その時、気付いたことはありますか」

星島被告「おでこの左側に大きな傷がありました」

検察官「大きさは?」

星島被告「5センチくらいだったと思います。たんこぶのようにふくれていました」

検察側は、拘留中に星島被告本人が書いたという絵をテレビに映した。ジャージの目隠しのすぐ上の左の額に、5センチの切り傷があったことを示す印が付けられている。

検察官「ジャージーに血は付いていましたか?」

星島被告「はい」

検察官「どうしてだと思いましたか」

星島被告「私が殴って傷付いたのだと思いました」

検察官「その時、東城さんの傷以外の様子はどうでしたか?」

星島被告「汗をかいていました」

検察官「当日は4月中旬の、気温の低い雨の日でした。なぜ汗をかいていたと思いますか」

星島被告「…恐怖です」

検察官「それで、傷口はどうしましたか?」

星島被告「冷やさないといけないと重い、クローゼットからハンカチを探して水に濡らし、おでこにあてて冷やしました。『とりあえず、出血をなんとかしないといけない』と思いました」

星島被告は東城さんの傷の治療をしたと証言する。弁護側が冒頭陳述にも盛り込んだ部分だ。一方、検察側の冒頭陳述では「被告は被害者を思いやる気持ちは全くなかった」としている。東城さんの治療をしたのは、星島被告が証言する通り、血痕から足がつくことを恐れたからだろうか。

検察官「それで、どう思ったのですか」

星島被告「廊下にも血がついているのではと思いました。誰かが通ったら不審に思われ通報されると思いました」

検察官「それでどうしましたか」

星島被告「クローゼットからタオルを2枚持って、廊下に出ました」

検察官「血痕はありましたか」

星島被告「(東城さんが住む)916号室の扉の前に、数センチの血痕がありました。動転して、部屋の中にもあるかと思い、916号室に入りました」

検察官「部屋にも血痕はありましたか」

星島被告「部屋の奥まで進み、自分の足跡と血痕を見つけました」

検察官「どのへんですか」

星島被告「キッチンの前だったと思います。部屋の奥まで確認したら、汚れた様子はなかったので、部屋の廊下のフローリングを後ずさりするように綺麗にしていきました」

検察官「あなたは、東城さんを襲った時は靴下だったのですか」

星島被告「はい」

検察官「靴下が雨水を吸ったので、足跡が付いたということですか?」

星島被告「そうだと思います」

検察官「フローリング以外に拭いたところはありますか?」

星島被告「キッチンの扉です」

検察官「なぜ、拭いたのですか」

星島被告「指紋を消すためです」

「動転した」というものの、指紋や足跡を消すため、後ずさりしながらタオルで床を拭いていく星島被告。ここでも冷静さを保っていたとみられる。

検察官「玄関の三和土(たたき)とフローリングで他に何か見つけましたか?」

星島被告「お菓子と中のクリーム、(雑誌の)ホットペッパーが転がってました」

検察官「お菓子はどうなっていましたか?」

星島被告「つぶれた状態で、玄関を汚していました」

菓子は東城さんが帰宅した際に持ち帰ったものだろうか。菓子が散乱していることからも、東城さんが激しく抵抗した様子がうかがえる。

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