(20)「警察が来たので殺してしまいました」そのとき被告はAVを見ていた
検察官は星島貴徳被告が書いていたという同人誌について質問を続けた。検察官はこの漫画が「強姦をテーマとしている」と指摘している。
検察官「東城瑠理香さんにしたことは、この作品の内容と同じだと思いますか」
星島被告「近いと思います」
検察官「漫画の内容のように拉致して性奴隷にできれば女性は『誰でもいい』と思っていたのですか」
星島被告「はい」
漫画が動機に影響したことを認めた。
検察官「女性の個性、人格は強姦したら(存在を)消してしまうつもりだったからどうでもよかったのですか」
星島被告「消えても消えなくとも、私に依存してくれれば構わなかったんです」
要領を得ない回答ながら、どちらにしても身勝手な動機だったことが分かる。
検察官「この同人誌の発行日は平成17年8月14日ですが、このころから女性を性奴隷にしたいという願望があったのですか」
星島被告「あったと思います」
ここで検察官は、星島被告が弁護人に遺族の検察調書を読ませてくれるよう依頼していたことを明らかにした上で質問を続けた。
検察官「(調書を読んだので)瑠理香さんがどんな人かは知っていますよね」
星島被告「おおよそのことは分かります」
検察官「仮に東城さんを強姦したとして、あなたの性奴隷になったと思いますか?」
星島被告「ならなかったと思います」
検察官「(犯行当時ではなく)『今はそう思う』ということですか?」
星島被告「はい」
検察官「事前にコンドームは用意していたのですか?」
星島被告「用意していませんでした」
検察官「何も付けずに強姦するつもりだったのですか」
星島被告「はい」
さらに身勝手さを際立たせるような回答ながら、星島被告はためらいなく答える。
検察官「(犯行当日の20年)4月18日から21日まで自宅に監禁して強姦を繰り返すつもりだったのですか」
星島被告「はい」
検察官「拉致して実際に思い描いていた状況と、どこらへんが違いましたか?」
星島被告「激しい抵抗にあったことや、けがをさせてしまったことです」
検察官「拉致してけがさせて、このままどうなると思いましたか?」
星島被告「『瑠理香さんを自分のものにできない』と思いました」
検察官「なぜできないと思いましたか。けがをさせているとどうだと思ったのですか?」
数十秒の沈黙が続く。
星島被告「瑠理香さんを気持ちよくさせることができないからです」
検察官「では、どうするつもりだったのですか?」
星島被告「(東城さんの)写真を撮ろうと思いました」
検察官「このままだと(解放する予定だった)21日にどうなると思いましたか?」
星島被告「警察に通報され、逮捕されると思いました」
検察官「どんな写真を撮ろうと思ったのですか。裸の写真ですか」
星島被告「そこまで考えていませんでした」
検察官「あなたはカメラを持っていたのですか?」
星島被告「持っていませんでした」
検察官「どうしようと考えていたのですか?」
星島被告「新しく買うとか、そんなことを考えていました」
検察官「結論はどう考えましたか?」
星島被告「無理だと思いました」
検察官「そもそも裸の写真を撮るくらいで通報を阻止できると思いましたか?」
星島被告「分かりません」
脅しの写真の内容が「裸の写真」であることを前提に話が進む。星島被告もそれを特に否定しない。この後も検察官の質問によって、犯行当時の星島被告の稚拙ともいえる考え方が次々と明らかになる。
検察官「(仮に脅しが成功したとして、星島被告がけがをさせた)額のけがについてはどう考えましたか?」
星島被告「(東城さんの)周りの人が不審に思い、事件が明るみに出ると思いました」
検察官「脅迫後、すぐに強姦を始めるつもりだったのですか?」
星島被告「したしないではなく、できなかったのです。焦りや恐怖、不安でできなかったのです」
検察官「もし自分の性器が勃起していたら強姦しましたか?」
星島被告「したと思います。何も考えずにしていたかもしれません」
星島被告は暴行に及ぶつもりだったのかどうか、ちぐはぐな回答が続く。
検察官「東城さんを解放して、病院に行かせるにしても口裏を合わせないと(東城さんを)外に出せない状況でしたよね」
星島被告「はい」
検察官「どうするつもりだったのですか」
星島被告「ずっと悩んでいました。(脅すために)カメラを使おうかどうかを考えているうちに警察が来たので殺してしまいました」
検察官「警察が自宅に来たとき、あなたは何をしていたのですか?」
星島被告「パソコンでビデオを見ていました」
検察官「何のビデオですか?」
星島被告「AV(アダルトビデオ)です」
星島被告の異常性をうかがわせる答えに、法廷内は一段と静まりかえる。
検察官「そのとき見ていたAVは誰が出演していたものですか?」
星島被告「どれを見ていたかははっきりしていません」
検察官「(星島被告が好んでいた女優の)西川ひとみのAVですか?」
星島被告「あの状況でそんなこと覚えている方がどうかしていると思います」
不機嫌とも受け取れるようなぶっきらぼうな口調で検察官の最後の質問に答え、閉廷した。
14日には東京地裁で午後1時半から第2回公判が開かれ、検察官の被告人質問が引き続き行われる予定だ。初公判では星島被告が全面的に罪を認めたが、「1人の女性に強姦し続け、性奴隷にすることができると考えた」「誰でもよかった」「警察に訴えられないようセックスで調教しようと思った」と語るなど、無差別性や異常性も見えた。
一方で殺害や遺体を解体する犯行の場面についてはほとんど検察側は触れておらず、14日の公判では残酷極まりない犯行状況や当時の星島被告の心理がさらに明らかにされそうだ。