(2)警官来訪後20分で殺害…臓器取り出し、まな板の上で刻んだ
検察官が法廷で読み上げる冒頭陳述は、犯行状況の説明にさしかかった。星島貴徳被告の表情が変わることはなく、病人のような青白い顔で、じっと下を向いたままだ。
検察官「被告人は昨年4月18日金曜日午後6時30分ごろから、918号室の玄関内で916号室に居住する女性が帰宅するのを待ち伏せました…」
検察官は星島被告が東城瑠理香さんを連れ去る過程を詳細に説明した。
星島被告は、東城さんが帰宅後、内側からカギをかける直前に、東城さんの室内に押し入った。東城さんは大声で叫び、星島被告を外に押しだそうとした。このため、被告はげんこつで東城さんの左の額を1回強く殴り、廊下にうつぶせに押し倒した。背中に馬乗りになり、文化包丁で脅しながら、918号の自室に連れ込んだ…。
検察官は東城さんが星島被告の部屋に連れ込まれた午後6時半ごろから殺害されたとみられる午後11時ごろまでの間、何が起こったのかを詳細に説明した。
検察官「被告人は、被害者を強姦するために、洋室内の床にエアマットを敷き、その上に被害者をあおむけに寝かせ、ビニールひもで手足を縛り上げ、口の中にタオルを押し込みました…」
検察側冒頭陳述によると、午後8時ごろ、星島被告は東城さんに乱暴しようとしたが、勃起しなかった。このため被告はアダルトビデオを見たり、東城さんを性奴隷にすることに失敗した場合の脅迫方法を考えたりしていたという。
午後9時16分。帰宅した東城さんの姉が110番通報。9分後の同27分ごろから警察官が現場マンションに駆けつけ、捜査がスタートした。
検察官は法廷内のボードに張られた犯行当日の4月18日から19日にかけての星島被告の行動を時系列で説明してゆく。
検察官「4月18日午後10時20分ごろ、918号室のドアがノックされると、被告は警察が来たのかもしれないと不安になりました」
警察が星島被告の玄関のドアをたたいてから、わずか20分後。被告は犯行の発覚を恐れ、東城さん殺害を決意したという。
検察官「午後11時ごろ、916号室から持ってきた文化包丁を左手に持って、洋室のエアマットにあおむけに寝かせていた被害者にそっと近づきました。そして、前触れなく、右手で被害者の口を強く押さえて頭部を固定した上で、左手に握った包丁を被害者の首に突き刺し、包丁に自分の体重をかけて一気に8〜9センチメートルの深さまで突き刺しました」
ちょうど、東城さんが殺害された午後11時ごろ、心配した父親が、東城さんの部屋を訪れていた。
星島被告は、首に包丁を突き立てたまま、東城さんが死ぬのを待っていた。しかし、5分ほど経過しても東城さんが死ななかったため、大量に出血させて早く殺そうと考え、首に刺さっていた包丁を素早く抜いた。すると、勢い良く血が出て、東城さんは失血死した−と検察官は述べた。
星島被告は東城さんの遺体を浴室に運び、衣服をはぎ取り、午後11時50分ごろから包丁2本とのこぎりを使って遺体の解体を始めた。作業の最中の19日午前2時ごろ警察が訪ねてくると、星島被告は足についた血液をシャワーで洗い流し、入浴中だったように装った。
検察官「被告人は死体から切り落とした足と腕を冷蔵庫の中に、頭をクローゼットの中にあった段ボールの中に、胴体をベッドの下にあった段ボールの中にそれぞれ隠しました…」
星島被告は数日間かけてじっくりと東城さんの死体を解体する。4月20日の日曜日の晩には、マンションのエレベーターで東城さんの父親と会い、「大変なことになりましたね。どちらの部屋の方ですか」などと話しかけ、無関係を装っていた。「何かあったら頼みます」。何も知らない東城さんの父親は、こう答えていたという。
星島被告は、その後部屋に帰り、遺体の解体に取りかかる。
検察官「死体の胴体を解体し、腹や胸から肉をはぎ取り、臓器を取り出し、これをまな板の上で切り刻んだ上、水洗トイレから下水道管に流しました。解体後に残った骨は、冷蔵庫に隠しました」