第3回公判(2010.9.7)
(9)「法律に触れても聞いてあげたいと素直に思った」 MDMAの入手依頼された泉田受刑者
保護責任者遺棄致死などの罪に問われている元俳優、押尾学被告(32)に合成麻薬MDMAを譲渡し、実刑判決を受けた証人の泉田勇介受刑者(32)に対し、弁護側が厳しい尋問を続けた。時折、声を荒らげて弁護人に反論する泉田受刑者の発言を山口裕之裁判長が制止する場面もあった。
弁護人「(MDMAの譲渡について)あなたの方から警察に言ったのか。警察に言われたのかどちらですか」
証人「どういう言い方をされたかは覚えてません。きっかけは分からないが、自分から話をしたことは間違いありません」
弁護人「譲渡について(平成21年)8月の段階で言わなかったのはなぜですか」
押尾被告は正面に座る泉田受刑者をじっと見つめている。
証人「当時は逮捕されていたわけでもないのに、どうしてMDMAを渡したなどと話すのですか?」
泉田受刑者が声を荒らげ、鋭い視線で弁護人をにらみつける。
証人「先ほどからの質問の意味が分かりませんが。取り調べのときは私が見聞きしたこと、あったことをそのまま話しています」
向かって左端に座る男性裁判員がほおづえをつきながらみけんにしわを寄せている。
弁護人「いや」
証人「私がいい加減なことを言っているとでも?」
弁護人と泉田受刑者、双方の発言が混乱し、山口裁判長が制止に入る。
裁判長「いろんな人がいろんなことを聞いています。証人はそのまま答えてください」
弁護人「あなたは(21年)7月31日に押尾がアメリカから持ち込んだ、いや(チーフマネジャーの)□□(法廷では実名)に持ってこさせたMDMAのカプセルを飲んだかもしれないと思ったのですね?」
証人「はい」
弁護人「飲まされたかもしれないということには、いつ気づいたのですか」
証人「お酒を飲んでもいつもの飲み方ではなかった。六本木からタクシーで帰宅した際、タクシーから降りたことも覚えていないし、普段と違った、ありえない飲み方をしました。もしかしたらと」
弁護人が、泉田受刑者と押尾被告のメールのやり取りについて質問する。泉田受刑者が資料をめくりながらメール内容を確認する。
弁護人「あなたがクスリを飲まされたと思ったのはメールをした時点ですか? メールをしたということは体に変調があったからではないですか」
証人「そうですね」
弁護人「何となく調子が悪いのに酒を飲んで酔いつぶれたんですね」
証人「クスリは飲まされたかもしれませんが、調子が悪いとは言っていません」
検察官「異議。明らかに質問の切り違いです」
山口裁判長が弁護人に対し、的確な質問を行うよう指示した。
弁護人「薬物を飲まされたことには次の日の朝気づいたのですか」
証人「そうですね」
弁護人「あなたは自分の意志でクスリを飲んだのではないですか。違法薬物と分かって飲んだのでは?」
証人「いいえ。飲んでません」
弁護人「(21年)7月31日に押尾からMDMAの入手を依頼されたのですね」
証人「はい」
弁護人「4月に頼まれたときはどうやって手に入れようとしたのですか」
証人「知り合いに聞きました。しかし、手に入りませんでした」
弁護人「なぜ4月では入手を断らなかったのですか」
証人「断ればよかったかもしれないですね。軽く考えていた。押尾の頼みなら、法律に触れていても聞いてあげたいと素直に思いました」
弁護人「入手先として、どれくらい声を掛けましたか」
証人「覚えてないけど、そう多くはないです」
弁護人「入手先は言えませんか」
証人「言いたくありません。それは取り調べの段階から一切言っていません」
弁護人「警察にも厳しく聞かれたのではないですか。この法廷でも言いたくないですか。迷惑がかかるからですか」
複数の裁判員が泉田受刑者の表情をじっと見つめ、発言に注目する。
証人「この事件に関係ないことですよね。どう関係するんですか」
検察官「異議。議論になっています」
弁護人「(入手したとき)代金として3〜4万円支払いましたか」
証人「先ほど話したとおりです」
弁護人「(MDMAの譲渡について)警察ではどのように供述しましたか」
証人「白い錠剤を10錠というような話をしました」
弁護人「錠剤が何錠あるか分からないというような供述はしていませんか」
証人「だから約10錠」
泉田受刑者はまたしてても語気を強めた。
弁護人「その後、色や厚みについて詳しく供述するようになったのはなぜですか」
証人「詳しく聞かれるようになったからです」
取り調べの担当刑事に対し、錠剤の形状について思いだしながら供述した経緯を泉田受刑者が説明する。
弁護人「(入手先から)MDMAを受け取ってどこへ入れましたか」
証人「(ズボンの)ポケットですね。デニムのポケット」
弁護人「次の日に押尾さんに渡しましたよね。バラバラになっていませんでしたか」
証人「なっていません。押尾は中身を見て確認しています」
弁護人「3〜4万円は売人に支払ったのですか」
証人「覚えてませんが、そのくらいです」
弁護人「押尾さんにはいくらだと言いましたか」
証人「そのまま言いました。私が売人だといいたいのですか?」
弁護人「そうではないです」
泉田受刑者がまた声を荒らげた。
証人「さっきからそう言ってるじゃないですか!」
裁判長「ちょっと待ちなさい。(泉田受刑者は)聞かれたことに答えて、違うなら違うといえばいいんです」
20秒ほど中断し、泉田受刑者が落ち着きを取り戻した。
弁護人「8月5日夜に▽▽さん(法廷では実名)のパスタ屋さんに行きましたか」
証人「行ったことはあります」
弁護人「▽▽さんらから計60万円を受け取りましたか」
証人「金額は覚えていませんが受け取りました」
弁護人「どういう名目で受け取ったのですか」
20秒ほど沈黙が続いた。弁護側は▽▽さんに対し泉田受刑者がMDMAを売ったとみているようだ。
証人「どういうことですか」
弁護人「MDMAの代金としてもらったのではないですか」
証人「いえ。覚えてません」
弁護人「8月2日に(錠剤の)カプセルを買って(23階の部屋に)持っていきましたか」
証人「はい」
弁護人「押尾さんがカプセルを受け取ってどこへ置いたか覚えていますか」
証人「テーブルだったと思います。どうやって使用したかは分かりません」
弁護人「(この日の)夜、押尾さんから2度、留守電が入っていて、メールの着信があって、あなたが押尾さんに電話をしたと証言していますよね」
証人「はい」