第3回公判(2010.9.7)
(4)「違法薬物隠すときはスニーカーの中」MDMA隠蔽のため靴箱へ
保護責任者遺棄致死などの罪に問われた元俳優、押尾学被告(32)に合成麻薬MDMAを譲り渡し、懲役1年の実刑判決を受けた泉田勇介受刑者(32)に対する検察側の証人尋問が続いている。
証言台に座り、資料に目を通す泉田受刑者。昨年7月31日、六本木ヒルズで押尾被告にMDMAを譲渡した状況について思いだしているようだ。
検察官「夕方ってこと。16時56分のメールになるのですか」
証人「あまり記憶にないですが…」
15秒ほど沈黙が続いた。
証人「そうですね。夕方でした」
検察官「13時29分のメールをみると、(午後)5時に会おうかというメールが(押尾被告から)あなたに送られています。つまり(午後)4時56分のメールは13時29分のメールを受けているということですか」
証人「はい」
検察官「その時、MDMAを持っていきましたね。持っていったのは六本木ヒルズB棟の2307号室ですね。この日、初めて行ったのですか」
証人「いいえ。違います」
検察官「具体的な場面はどうでしたか。被告人にMDMAを渡してあなたは有罪になっています。袋から出して中身は確認しましたか」
証人「手渡ししたときに受け取って中身を確認しました」
検察官「どうやって確認しましたか」
証人「紙袋から出してです」
検察官「(押尾被告は)あなたから受け取ったMDMAのお金について何か言っていましたか」
弁護人の隣に座る押尾被告は、泉田受刑者の証言にじっと耳を傾け、様子をうかがっているようだ。
証人「お金についてもいろいろ言っていましたが、こういう形になってしまい、結局、受け取っていません」
検察官「つまり無償ということですか。このMDMAを譲渡したことについてはお金はもらっていないということですか」
証人「はい」
検察官「MDMAを被告人はどこへ持っていきましたか」
証人「玄関の靴箱です。スニーカーの中ですね。違法薬物を隠すときはスニーカーの中に入れると聞きました」
検察官「違法薬物を隠すときはスニーカーの中と聞いたのですか」
証人「はい」
検察官「その後、どこかに出かけていますか。おそば屋さんとか…」
証人「はい」
検察官「7月31日夜にまた戻っていますね。被告と2人だけでしたか」
証人「私と2人です」
泉田受刑者は周囲に視線を移すなど、記憶をたどるような素振りを見せ、慎重に発言を続けた。
検察官「被告からサプリメントボトルのようなものを見せられましたか。色や形は覚えていますか」
証人「白色のプラスチック製のボトルでした。あとは緑色の透明のガラス瓶をいくつか見せられました」
検察官「いくつかですか」
証人「はい」
向かって左から3人目の男性裁判員がひじをつきながらペンを額に寄せ、何か考え込んでいる。
検察官「サプリメントボトルを証拠として提示します」
法廷に設置された大型モニターにサプリメントボトルの写真など6枚が順番に映し出される。
検察官「この日に見せられたボトルはありましたか」
証人「黒色のボトルを見せられました」
検察官「黒色? さきほどは白色と言っていましたが?」
証人「それはカプセルの色です」
検察官「整理します。見たのは黒いボトル。その中に白いカプセルが入っているのを見たのですね」
モニターに白いカプセル錠剤の写真が表示される。
検察官「カプセルについて(押尾被告から)何か説明を受けましたか」
証人「□□(法廷では実名)にこのボトルをいくつか持って帰らせました。この中に違法薬物を入れて持ってこさせたと言っていました」
検察官「違法薬物と言っていましたか」
証人「いえ。『エクスタシー』と言っていました」
検察官「どこで手に入れたと言っていました?」
証人「アメリカで。日本では出回っていないとの言い方でした」
検察官「新種のエクスタシーですか」
証人「はい」
検察官が泉田受刑者に対し□□氏の職業が所属事務所のチーフマネジャーであることなどを確認した。
検察官「(サプリメントボトルの中に違法薬物を混入すると)どれがどの錠剤か分からなくなったりしませんか」
証人「押尾被告に質問すると、若干大きさが違うというようなことを言っていました」
検察官「どう違うのですか」
証人「もともとのカプセルよりも小さかったです」
白いカプセルが大量にモニターに映し出される。
検察官「右端の7つ目。明らかに大きさが違います。(合成麻薬の)TFMPPがこの中にありましたが、この言葉を知っていましたか」
証人「いえ。知りませんでした」
検察官「7つめのカプセルが小さいことに気づいて改めて鑑定するように警察で話をしましたか」
証人「はい。逮捕されてから話をしました」
検察官「そうですね。昨年12月以降に説明していますね」
証人「このボトルにカプセルをいくつか混ぜて持って帰らせたと聞いていたので、その話を(警察に)したところ、いくつかボトルを見せてもらいました。話を照らし合わせると、カプセルとボトルが一致したのです。若干大きさが違うことを思いだしました」
押尾被告はメモを取る手を休め、証言を続ける泉田受刑者をじっと見つめている。