第3回公判(2010.9.7)

 

(10)「ゴミ回収日なので、まとめて捨てれば確実」 薬物捨てた状況を証言

押尾被告

 保護責任者遺棄致死などの罪に問われた元俳優、押尾学被告(32)の裁判員裁判第3回公判は、押尾被告に合成麻薬MDMAを譲渡したとされる泉田勇介受刑者(32)への弁護側の証人尋問が続いている。

 男性弁護人が押尾被告から泉田受刑者が受けた電話の受信状況について詳しく尋ねる。

弁護人「押尾被告から電話があって、留守電になる前に着信が切れたことはありますか」

証人「留守電があれば表示されるが、着信があって切れたかどうか。どのタイミングで切っているのかまで正確には分かりません」

弁護人「友人から電話があって、押尾被告が連絡を取りたがっていると聞きましたね?」

証人「はい。友人から電話があり、目が覚めて気づくと、押尾被告から着信が相当数あったことは覚えています」

弁護人「押尾被告から至急電話をくれとメールがあってすぐ後に押尾被告から電話があって切れた。着信が残っていましたか」

証人「記憶にありません」

弁護人「留守電にならなくても着信があったかどうか覚えていますか」

証人「私の方では分かりません」

弁護人「なかったとも断言できない」

証人「そうですね」

 弁護人から詳細な着信状況についての尋問が続いた後、事件が起きた23階の部屋に行ったときの状況に質問が移る。

弁護人「23階の部屋には1人で行った?」

証人「(押尾被告の元マネジャー)△△(法廷では実名)と一緒に行きました」

弁護人「△△が下まで迎えにきた?」

証人「一緒にエレベーターに乗っていきました」

弁護人「部屋で押尾被告と会ったときに言い争いや文句を言われたことはありましたか」

証人「文句はなかったです」

弁護人「42階に上がってから、(錦糸町の)ホテルに行って2人が別れるまで、2〜3日ありますが、押尾被告から文句を言われたり、言い合いがありましたか」

証人「ないです」

弁護人「MDMAで(事件で死亡した)田中(香織)さんが亡くなったことについて、押尾被告から一体どんな薬を持ってきたのか聞かれましたか」

証人「何で言われなきゃならないんですか」

 泉田受刑者は弁護人の方を向き、声を荒らげる。

弁護人「亡くなっているんであればどんな薬なのか聞くと思いますが」

証人「言っている意味が分からない。言われる筋合いがないし、自己管理の問題ですね」

 山口裕之裁判長が割って入り、「それは答えなくても良い」と両者をいさめる。

弁護人「部屋に入ったときに押尾被告から人が部屋の中で死んでいる事実を聞いたと言っていましたが、いつどこで、何で女の子が死んでいるのか押尾被告から聞きましたか」

 男性検察官が疑義を挟み、山口裁判長が「不同意調書部分を聞くのはやめてください。きちんと前提を示して話してください」と説明し、一瞬不穏な空気が流れた。

弁護人「薬のことは処理したと言っていましたが、空カプセルはどうしましたか。42階には誰が持っていったのですか」

証人「私か押尾被告のどちらかだと思います」

弁護人「あなたかもしれない?」

証人「42階に(空のカプセルが)あったのは確かですが、詳しくは覚えていない」

 しばらく空カプセルの処分について、弁護人からの尋問が続くが、泉田受刑者と質問がかみ合わず、裁判長が「前提を示してください」「事実だけを述べてください」と割って入った。

弁護人「空のカプセルはトイレで処分して、薬物はトイレで処分しなかった?」

証人「本当であれば、薬物もトイレで処分したかったが、人の家だったし、いずれ警察の取り調べでバレたらやっかいだと思った」

弁護人「ごみ集積場で薬物を捨てた。その方が危険だったのでは?」

証人「外を見渡したときにちょうどゴミの回収の日だったので、まとめて捨てれば確実にできると思った」

弁護人「実家で残ったものを弟に渡していませんか」

証人「そんなことはない」

 弁護人は、泉田受刑者の友人が点滴を持ってきた状況について唐突に話題を変えた。依然として弁護人と泉田受刑者の話がかみ合わず、男性検察官が異議を挟むなどし、男性弁護人から別の男性弁護人に尋問者が変わる。

弁護人「(事件当日の)8月2日に23階の部屋に入って押尾被告から『女の子が薬物をたくさん服用して死んだ』と聞きましたね」

証人「はい」

弁護人「あなたが渡したMDMAを服用したかどうかは押尾被告から部屋の中で聞きましたか」

証人「細かい説明はなかった」

弁護人「あなたから心配して自分が渡したMDMAを使ったのか押尾被告に聞きましたか」

証人「聞いていません」

 回答まで一瞬間が空いた。これまでの険悪なやり取りから法廷内は緊張した雰囲気が漂っている。

弁護人「23階の部屋から42階に上がるのに階段を使ったそうですが、途中で押尾被告との会話は?」

証人「いくつかあったと思います」

弁護人「そのときあなたが押尾被告に渡したMDMAを使ったかどうか聞きましたか」

証人「とにかく処分してほしいとの話がメインでした」

弁護人「おまえの薬は使っていないと言う話はありましたか」

証人「なかったですね」

弁護人「おまえの薬を使っておかしくなったというような話は?」

証人「そういった話もなかったです」

弁護人「(元マネジャーの)□□(法廷では実名)さんがいないところであなたが押尾被告に渡したMDMAを使ったかどうかについて話はありましたか」

 泉田受刑者は「もう一度」と質問を求めた。弁護人が質問を繰り返した。

証人「私の感覚では、薬をたくさん飲み過ぎたから容体がおかしくなったと聞いています。MDMAがきっかけで容体がおかしくなったと想像ができません」

弁護人「想像ですね」

証人「はい」 

弁護人「どんな薬物を使用したかについて押尾被告から話は?」

証人「よく覚えていないです」

 これまで弁護側を向いて話していた泉田受刑者は、前を向いて静かに答え始めた。

弁護人「話をしたことはあったが、思い出せないということですか」

証人「私の記憶があいまいで覚えていません」

弁護人「錦糸町のホテルに移動してから、2人で話す時間があったと思いますが、押尾被告からMDMAを使った話を聞いていますか」

証人「いいえ聞いていません」

 泉田受刑者は少し間を置いて答えた。

 ホテルでの押尾被告とのやり取り、MDMAについての会話はなかったかどうかについて、弁護人の質問が続く。

弁護人「押尾被告と交わした会話の中で、田中さんの死亡につながった薬物の対応についてどうしようかという話はなかったのですか」

証人「そういった話はなかったです」

弁護人「田中さんが死んだ薬は誰が持ってきたのか警察に聞かれたら何と答えるか相談されなかったですか」

証人「してませんね」

⇒(11)「何であんな話するんだ? おれの立場がやばくなっている」 保釈中に呼び出して詰問