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(8)逮捕・起訴の妻 娘には「仕事に行ってるんだよ」

裁判官が咲被告の夫に質問を始めた。

裁判官「娘(3歳の長女)には母(咲被告)がいないことを何と説明しているのか?」

証人「娘から聞かれたときは仕事に行っていると…ただ娘から聞かれたのは1、2回しかない」

裁判官「娘は悲しんだりは?」

証人「(当分戻ってこないことを)わかっているだろうが、何も言わない」

裁判官「被害者(絵里子さん)の葬儀は終わった?」

証人「はい」

裁判官「喪主は?」

証人「母」

間接的な質問が多くなり裁判長が直接、夫に尋ねる。

裁判長「情状証人ということで来てもらったが、どなたも聞かないのであえて聞くが、被告の処遇についてどう感じているか?」

証人「情状酌量を求める」

裁判長「そうなると母親の感情とは違うが?」

証人「考える方向性は違う」

裁判長「被告から(証人に)尋ねることは?」

弁護人「特にない」

ここで情状証人の質問が終了。責任能力と並んで争点となっている『咲被告が参考人聴取で犯行を認めた内容が自首に当たるか』についての審理に。取り調べた女性警察官が証人として登場する。女性警察官は平成4年に県警入りし、茅野署刑事課に所属する刑事だ。

検察官「証人が被告を調べた経緯は?」

証人「上司から指示を受けた」

検察官「被告はどのような立場であると聞かされたか?」

証人「被害者の関係者で親族の1人」

検察官「上司から調べる際の留意点は聞かされた?」

証人「被害者と被告は不仲であるので、それを念頭に置くようにと」

検察官「聞き込みなどで不仲と分かっていたのか?」

証人「はい」

検察官「参考人として聴いているが、殺害する動機もあったということか?」

証人「はい」

検察官「調べは(犯行翌日の)11月8日の何時から?」

証人「午後1時から」

検察官「聴取は1人で行ったのか?」

証人「はい」

検察官「(聴取する)部屋に入ってきたときの被告の様子は?」

証人「緊張しているようだった」

検察官「そのときは何を聴いたか?」

証人「被害者の親族の1人として呼んだと説明した」

検察官「それに対して何と言った?」

証人「母から連絡があり初めて事件を知った、と」

検察官「それは義母のことか?」

証人「はい」

検察官「被告は犯人について何と?」

証人「『犯人はわからないのですか?』と尋ねてきた」

はきはきと答える証人の女性刑事。対照的に咲被告は終始うつむいたままだ。

検察官「そのときの様子は?」

証人「心配しているようだった」

検察官「それに対して証人は何と答えた?」

証人「(犯人は)まだ。知っていること、思い当たることがあれば話してほしい、と」

検察官「被告は何と?」

証人「『私にはわかりません。思い当たることはありません』と答えた」

検察官「調べはどのように行われたか?」

証人「(咲被告が)緊張していたので事件(のこと)を聴くのでなく、身上を聴いて心をほぐした」

検察官「その中で感じたことは?」

証人「当初から被告は口が重いというか、積極的に話をするようなタイプでないが、被害者のことは積極的に話をしてきた」

検察官「積極的とは?」

証人「同居している間にされたこととか」

検察官「例えば?」

証人「(絵里子さんの)服が無くなったことや携帯電話がなくなったことについて(咲被告が)犯人扱いされた、と」

⇒(9)女性刑事の追及に“完落ち” 20分の沈黙後「私がした」