(11)耳まで赤く染め咲被告「縁切られて当然…」
10分間の休憩をはさんで法廷は再開し、咲被告が証言台へ進んだ。再び被告人質問が行われたのだ。質問の答えにつまり、弁護側が代弁する場面も目立った咲被告だが、こうした状況を見かねてか、裁判長は弁護側の質問の前に咲被告へ声をかけた。
裁判長「できるだけ頑張って答えないと。これ(公判での発言)はあなたにとって判断材料だから。答えたくないことを答えなくてもいいから、努力して」
咲被告は「はい」と小さく返事をする。緊張のためつばを飲み込んでいるのか、のどをかすかに上下させている。
弁護人「(拘置されて)茅野署にいたとき、夜は眠れたか?」
咲被告「眠れなくて睡眠導入剤を飲んでいた」
弁護人「眠れず、何をしていたのか?」
咲被告「今回の事件について考えていた」
弁護人「被害者(絵里子さん)については考えたか?」
咲被告「……」
絵里子さんのことについて聞かれた途端、咲被告が黙り込んだため、弁護側はあわてて質問内容を変更した。
弁護人「じゃあ、事件についてはどういうことを考えていたのか?」
咲被告「申し訳なくて…。何と謝っていいか分からない」
弁護人「あなたのご主人や子供さんについては、何か考えたか?」
咲被告「このまま夫に甘えてちゃいけないと思って、離婚を考えていた」
弁護人「夜は家族の夢を見たりしていたのか?」
咲被告「はい」
弁護人「被害者の夢は見なかったか?」
咲被告「はい…。事件のときの夢を見たりしていた」
逮捕後、咲被告の元には家族や友人たちから励ましの言葉が寄せられたという。
弁護人「あなたが接見禁止だったとき、誰から手紙をもらった?」
咲被告「専門学校の時のクラスの友達」
弁護人「そこには何と書いてあった?」
咲被告「『ずっと友達だから』とか」
弁護人「それを見てどう思った?」
咲被告「こんな自分なのに、まだこうやって友達だと思っててくれて、すごい申し訳ない」
弁護人「接見禁止が解除になり、面会した友人とはどんな話をした?」
咲被告「みんな『1人じゃないから』とか『待ってる』と言ってくれている」
さらに弁護側が、咲被告の職場の同僚が7691人分の嘆願署名を集めたことを伝えると、咲被告は左手の甲を鼻にあてながら声をつまらせた。
咲被告「こんな自分に…。みなさんに迷惑かけたのに…。申し訳ない」
弁護人「被害者のお母さんに対してはどう思っている?」
咲被告「すごくよくしてもらったのに、申し訳なくて…。なんて謝ったらいいか分からない」
泣いているのか、咲被告は荒い呼吸で背中を上下させながら答えた。
弁護人「あなたは被害者からいろいろ嫌がらせを受けていたと言っていた。どうしてここ(事件)まで発展してしまったのか?」
咲被告「やっぱり、自分の性格とか考え方がいけなかったんだと思う」
弁護人「どのような点が?」
咲被告「何か嫌なことがあったりしても、自分の中でためこんで…」
咲被告は、自分の両親や絵里子さんの母親、職場の同僚にも、絵里子さんとのトラブルを相談したが、心のわだかまりを取り除くことはできなかったという。
弁護人「事件によって子供とも会えない状況になっている」
咲被告「私には母親の資格はないと思っている」
弁護人「被害者や遺族に対して、今後できると思っていることは?」
咲被告「1日1日反省して、罪を償っていくしかないと思っている」
弁護人「社会復帰した後のことは何か考えているか?」
咲被告「考えていない」
弁護人「だんなさんはあなたとの婚姻関係を維持して、支えてくれると言っているが?」
咲被告「本当ならもう縁を切られても当然なのに、面会に来てくれたり、手紙をくれたり、ずっと支えてくれていて、本当に申し訳ない…」
耳まで真っ赤に染めた咲被告は、さらにきつくハンカチを握りしめて答えた。