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(17)彩香ちゃん殺害時…「川の音だけ覚えている」

弁護人「6月の逮捕から8月9日まで60日以上の取り調べは、当時のあなたにはどうだった?」

鈴香被告「もうやめてくれ、と。豪憲君のことは最初のうちにほとんど話をしてしまったので、もう彩香の件で何か言うのはやめてほしいと、そういう気持ちだった」

弁護人「そんな状態で逮捕され、毎日取り調べを受けた?」

鈴香被告「はい」

ここで、弁護人が交代した。

弁護人「能代署の3階で行われた彩香ちゃん事件の実況見分について聞くが、○○検察官(実名)はいた?」

鈴香被告「はい」

弁護人「いるのがわかってどう思った?」

鈴香被告「○○検察官は全部の実況見分に来ていたので、そういう場所には来るんだと思っていた」

弁護人「その日までに殺意があったと認めていた訳じゃなかった。○○検察官がいたことで圧迫を感じなかった?」

鈴香被告「多少あったが、○○検察官が大沢橋に行って一緒に花を供えようと言ったので『わかりました』と」

質問の意図が通じず、弁護側はたたみかけるように同じ質問をする。

弁護人「圧迫感を感じてたの? 感じてなかったの?」

鈴香被告「感じてた」

弁護人「(前々回証言した実況見分調書を作成した)刑事の証言を覚えているか? 彩香ちゃんが落ちるところは3回やったと言っているが、本当か?」

鈴香被告「もっと多かったかもしれない」

ここで、検察官が「ちょっと待ってください」と弁護側の質問を止めた。

検察官「3回ではなくて、4回では?」

裁判長「(弁護側に向かって)もう1回聞き直して」

弁護人「あなたの記憶では、何回だったと?」

鈴香被告「4回とはいえないが、3回ではない」

弁護人「4回以上?」

鈴香被告「かもしれない」

弁護人「なぜ4回やったと思うか?」

鈴香被告「彩香の落ち方の角度とか、私が手を振り払ったとき、そこで止まってと言われたこともあった」

弁護人「落ち方が変だという話が出た?」

鈴香被告「はい」

弁護人「誰から?」

鈴香被告「C刑事がしたと記憶している」

弁護人「藤里(自宅)で行われた実況見分などとの違いを感じたことはあるか? 写真を撮る枚数が違うとか」

鈴香被告「枚数は藤里の家の方が少なかった」

弁護人「シャッターを押す間隔は藤里の検証と違いがあった?」

鈴香被告「はい。藤里の家の方は、間隔を置いてあちこち動き回りながらで、1カ所で1回か2回シャッターを切る感じだった」

弁護人「一昨日の質問で、あなたは彩香ちゃんが叫んだのは聞いていないと言ったね?」

鈴香被告「はい」

弁護人「取り調べでもそういうふうに言ってたの?」

鈴香被告「はい」

弁護人「調べでは(彩香ちゃんの声は)『何も聞いてない』と答えた?」

鈴香被告「はい」

弁護人「叫び声を想像して話したことはあった?」

鈴香被告「あった。もし彩香だったら、『お母さん、助けて』と言うんじゃないかと思って刑事さんに話した」

弁護人「彩香ちゃんが言ったかもと想像したわけだが、それを夢に見たりした?」

鈴香被告「いえ。…川の音だけが聞こえていたのは覚えている」

取り調べ時の質問をする弁護側に対して、犯行当時の記憶を証言しようとする鈴香被告。質問の意図が通じない弁護側は、少しいらだったように質問を続けた。

弁護人「私が聞きたかったのは、事件で彩香ちゃんが叫び声をあげたのを想像したことがありますか、ということ」

鈴香被告「いいえ」

困惑の表情を浮かべる弁護側。「ええっと…」と言ったきり、しばらく次の言葉を探す。その様子を見ていた鈴香被告が再び口を開いた。

鈴香被告「警察官に聞かれた後、想像した」

弁護人「終わります」

弁護側の質問は午後3時40分ごろ終了し、引き続き検察官が質問に立った。

⇒(18)検事登場…言葉飲み込み、固まる鈴香被告