(16)実況見分「実際の動作ではない」
弁護人「彩香ちゃん役の女性警察官はあなたの言うことに従った?」
鈴香被告「いいえ。D刑事とC刑事に従っていた」
続いて写真を指し示す弁護側。彩香ちゃん役の女性警察官が、欄干の下のすき間から川をのぞき込む場面。
弁護人「この場面では彩香ちゃん役の女性の顔が外に出ているが、あなたは指示した?」
鈴香被告「いいえ」
弁護人「あなたはどう言ったの?」
鈴香被告「そんなに出ていなかったと。出ていても目の辺りまでだったと指示、というか言った」
弁護人「目はどこを向いていた?」
鈴香被告「斜め前方。私が言ったことは聞いてもらえなかった」
弁護人「無視されてた?」
鈴香被告「はい」
弁護人「周りの人は何も言わず?」
鈴香被告「はい」
ここで、写真が証拠採用されていないため、写真を見ていない藤井裁判長が写真を確認した。
弁護人「彩香ちゃん役がガードレールに足をかけ、ひじを伸ばして欄干に上がっている途中のところだが、腰が高く上がっているように見えるが、これはあなたの指示?」
鈴香被告「いいえ」
弁護人「このとき、あなたはなんと言ったの?」
鈴香被告「もっと腰を低く膝を曲げて腕も曲がって、どちらかというと欄干にしがみつく感じで、と言った」
弁護側は次の写真を指し示す。
弁護人「彩香ちゃん役が欄干の向こうに足をかけている場面だが、この時の姿勢はきちんとしている。こういう姿勢を指示したの?」
鈴香被告「いいえ」
弁護人「どう指示した?」
鈴香被告「やっぱり手すりにもうちょっとしがみつくというか、ベタッとなる体勢だったと言った」
弁護人「それは無視された?」
鈴香被告「はい」
弁護人「周りの人も何も言わず?」
鈴香被告「はい」
弁護人「次の写真には、『あなたが彩香ちゃんの背を押した』という写真説明になっているが?」
鈴香被告「『払った』と言った気がする」
弁護人「払ったというのはどういう方向? どんな感じで?」
鈴香被告「振り払った。体のどこに当たったかはわからないが」
弁護人「どこからどこへとは言った?」
鈴香被告「言ってない」
ここで、裁判長が状況を確認する。
裁判長「左手の手のひらを外に向けて、外側に出すような動作ですか?」
鈴香被告「(実際に手を動かしながら)はい」
弁護人「次の写真ではあなたが手を突き出すような動作をしている。どうして?」
鈴香被告「彩香ちゃん役の人が反動をつけてよけるような動作をしたので、びっくりして手が前に出た」
弁護人「突き落としていないとは言った?」
鈴香被告「はい」
弁護人「D刑事に何か言われた?」
鈴香被告「いいえ」
弁護人「前の写真では右足が半歩前になっている。この写真では左足が前になっている。踏み込みの足が入れ替わっているがなぜか?」
鈴香被告「踏み込んだので、足がそうなったのだと思う。危ないと思って手が出たときに、足も一緒に出たのだと思う」
裁判長が再び、写真を確認しながら鈴香被告に質問をする。
裁判長「(突き落とした)写真を撮ったときのあなたの説明ですが、彩香ちゃん役が反動をつけてよけるような、と言いましたか?」
鈴香被告「はい」
裁判長「写真では彩香ちゃん役が飛んでいて、あなたの左手が出ているが、これは思わず出てしまった?」
鈴香被告「はい」
裁判長「実際の事件のときの動作を示しているというわけではないと言いたいのですか?」
鈴香被告「そうです」