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(8)再現写真「臨場感ない」弁護側がバッサリ

弁護側は引き続き、取り調べ段階での警察、検察側の瑕疵(かし)に言及。彩香ちゃんと豪憲君の殺害状況の再現写真にリアリティーがなく、調べ官が鈴香被告の意思を無視し、「強引に自供させた」と主張する。

弁護人「(法廷に)証拠として提出された写真34〜39号では、彩香ちゃん殺害の様子を検察官らが再現しているが、彩香ちゃん役の検察官は橋の欄干に上って腰を上げたり、欄干をまたいで姿勢を高く取ったりと、9歳の女の子の行動としてとても臨場感が感じられない」

「再現に要した時間はわずか22分。その間に4回も犯行を再現したというが、あまりに短い。鈴香被告に確認を取らず、本人の意思を無視したということではないのか」

矢継ぎ早に検察側を責め立てる。

弁護人「豪憲君の写真も同じ。実況見分は殺害部分で2時間13分、遺体をビニールシートにくるみ、車で遺棄する場面に20分。短い時間で(被告を)誘導しようとしたことは明確だ」

弁護人は左手に書類持ち、淡々と弁論を進める。鈴香被告は両手をひざのうえに置き、うつろな表情。裁判長はペン片手にメモの準備だ。

弁護人「検察側は『(被告は)被疑者ノートを読んでいて供述を修正できることや、黙秘権については知っていたはず。だから(調書の)供述には任意性がある』と主張する。だが、鈴香被告の状況としては、孤立無援の状態で拘留され、捜査機関から“強い説得”や誘導を受け、抵抗することが困難だったということだ」

弁護人はここで声に力を込める。

弁護人「弱った状態で連日取り調べを受ければ、尋常な神経の持ち主ならもろく崩れやすくなるはず。(裁判官は)鈴香被告の供述に任意性があるかどうか、厳格に判断すべきだ!」

証人として出廷した警察官が退職後、事件関係の書類を破棄していたことも「真相を隠そうとする意図だ」という。

弁護人「警察官は19年3月に退職後、書類を破棄しているが、そもそも公判で証言することを考慮しておくべきだった。こんな重大事件の裁判がまだ終わっていないのに、重要書類を破棄したのは何かを隠そうとする意図があった」

弁護人は、鈴香被告のこれまでの“自供”は殺意を認めたものではない、と強調する。

弁護人「7月6日の鈴香被告の最初の自白は、喚起された記憶をもとに彩香ちゃんと橋に行った経緯を述べ、『足を滑らせて彩香から手を離してしまった』と供述しただけ。ところが、この夜、検察官から母親のことについて触れられ、『イライラが爆発し、左手で払うように彩香を落下させた』と説明したことになっている」

「鈴香被告は『(彩香ちゃんとつないだ手を)離したらどうなるんだろうと思った』とは言っているだけ。殺意については、検察官から『落ちたら死ぬはずだろ』といわれて、それに対し『そうです』と肯定したに過ぎない」

「7月21日に、鈴香被告は『彩香が橋から落ちたらどうなるだろうと思ったが、これが殺人なのかどうか分からない』と申し立てている。これは被告が殺意を事実上、否認したということ」

検察側が主張する「確定的殺意」に、真っ向から反論した格好だ。

⇒(9)「被告は検察に洗脳されていた」