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(15)弁護人「池田小事件とは違う!」

彩香ちゃん事件の情状に関する弁護側の主張が続く。審理は大詰めを迎える。話題は彩香ちゃんの父(鈴香被告の元夫)が、厳罰を望んでいることに対する反論だ。

弁護人「離婚は元夫の浮気が原因。女の子の父親として考えられない行動。元夫の処罰感情を考慮することは相当ではない。鈴香被告の父親(故人)についても、彩香ちゃんへの愛情はあっただろうが、幼少期の鈴香被告に理不尽な暴力をふるった経緯もあり、処罰感情を過大視できない」

続いて、豪憲君殺害事件に関する情状に移る。『なぜ遺族がこんなに怒るのか理解できない』などと、鈴香被告が公判中に日記に書いていたことが明らかになった経緯もあり、遺族の処罰感情は峻烈(しゅんれつ)といわれるが…。

弁護人「健忘(彩香ちゃんを落としたことを忘れたこと)ゆえに、警察への抗議などを通して嫉妬(しっと)などの複雑な感情を募らせ、子供を物色していた。偶然、豪憲君が通りかかり、複雑な感情で『今しかない』と…」

健忘という特殊状況がなければ、豪憲君は殺されなかったというストーリーだ。

弁護人「一片の落ち度もない豪憲君を手にかけ、遺族を悲しみの底に落とし、地域を震撼(しんかん)させた。弁護士としても心を失う。隠蔽(いんぺい)も遺憾の極みだ」

弁護側は『しかしながら』と話を転換し、有利な情状を次々と挙げていく。

弁護人「動機には計画性は全くない。首を締めた腰ひもも、殺傷能力が強いものではない。殴打を伴うものではなく、残忍性が顕著とまではいえない」

検察側は、鈴香被告はひもで豪憲君の首を約10分間絞めたと指摘している。弁護側はその長さに異議を唱えているが、ひもを使えば、とりあえず『残忍』ではないと考えているようだ。弁護側の情状説明はなおも続く。

弁護人「鈴香被告は、池田小事件(元被告が死刑執行)のように反省の念を示さない人物ではなく、反省や謝罪をしてきた。逮捕前は心の中で『ごめんなさい』と冥福(めいふく)を祈っていた。遺族に手紙をしたため、公判では何度も謝罪した。拘置所では、常に見える位置に写真を沿え、手を合わせている」

そして、弁護側は自信ありげにこう言った。

弁護人「形だけのパフォーマンスではなく、真に謝罪の意思がなければ到底なし得ない」

公判を見守ってきた豪憲君の両親は、傍聴席で怒ったような表情をしている。弁護側はさらに、事件後に住民が引っ越したため、近隣地域の人口が減ったという話にクレームをつけた。

弁護人「不安障害やPTSD(心的外傷後ストレス障害)などの社会的影響はあるが、人口減少は過疎化もあるし、客観的な資料もない。マスコミによる近隣住民への取材は執拗(しつよう)で過熱し、すべて被告のせいにはできない」

人口減少の片棒をかついだと名指しされたマスコミ各社は、傍聴席で熱心にメモを取っている。矛先はさらに秋田県警へも。

弁護人「彩香ちゃんの着衣を還付するなど、さしたる捜査をせず、事故死として終息させるなど、怠慢と称される活動があった。これがなければ豪憲君事件は起きなかった」

この後も、鈴香被告の『不幸』な少女期の出来事のおさらいや、家庭内暴力をかつて受けていた父親の介護をやっていたことなど、情状に関する早口の読み上げが続いた。

元交際相手が、鈴香被告にキャッシュカードから金を下ろされた疑いが濃厚だと主張していることについては、『暗証番号を交際相手の誕生日にすることが不自然だ』と反論した。

⇒(16)被告が放った最後の言葉は…