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(4)「子供を捨てたくせに…」被告の元夫に怒り

弁護側は続いて、鈴香被告と元夫との生活について尋ねていった。これまでの公判で、無理やり結婚させられたと証言した元夫について、証言台に立った鈴香被告の母親は「夕食時に元夫が食卓の前に座って『結婚させてください』と言った」と否定した。

弁護人「元夫が浮気した話は知っているか?」

証人「知っている。鈴香より先に知った。私の乗用車にも自宅にも無線機を置いていたので、ダンプの運転手仲間が『今モーテルに入った』『パチンコに入った』『女を乗せていた』とすぐ無線で入る」

弁護人「元夫の情報は他にはあったか?」

証人「パチンコをやっているとか聞いてる」

元夫の証言をことごとく否定する証人。元夫と彩香ちゃんの関係についても、「おむつを換えたり、ミルクをあげたりしたところは見たことがない」「抱っこしてあやしたことはない」などと証言を否定。鈴香被告が「子供が川に流されている」と偽の通報をした、との証言については「平成17年に実際に流されていた子供がいた」と話した。

弁護人「鈴香被告が離婚に踏み切った理由はどう聞いているか?」

証人「やはり女性関係もそうだし、彩香に対して元夫が粗いチャックのついている革ジャンをぶつけた。そういうのがあったので決心したと聞いている」

弁護人「元夫は養育費も払わず彩香ちゃんに会わなかったが、それを聞いてどう思ったか?」

証人「別に何も。彩香の父親として考えてなかったから」

弁護人「なぜ?」

証人「結局、元夫は彩香を必要ないとして会いにも来ないし、彩香にも私たちみんながいて不自由していなかったので、元夫のことは考えたことはなかった」

法廷で「事実と違う証言」を繰り返した元夫に対して、証人が感情をあらわにしたのは、弁護側が次の質問をした時だった。

弁護人「元夫は法廷で鈴香被告に極刑を求めると言っていたが?」

証人「何を言っているんだ、この人は。生まれて何カ月もたたない子供を捨てたくせに、今さら父親づらして。彩香を今まで育ててきたのは鈴香と私たちなんだ、と」

彩香ちゃんを保育園に送り届けていたという鈴香被告と、仕事帰りに迎えに行っていたと証言する母親。母子が力を合わせて子育てをしていたことを強調したいようだ。

弁護人「彩香ちゃんの食事は誰が作っていたのか?」

証人「私です」

弁護人「食事に工夫は?」

証人「保育園の時も小学校に上がってからも、給食の献立と重ならないように考えてやっていた」

弁護人「食欲は?」

証人「彩香はお米が大好き。お子様ラーメンの茶碗(ちゃわん)が彩香の茶碗で、2杯は食べる」

弁護人「おかずは?」

証人「好き嫌いがないので、何でも食べる」

ありし日の孫娘の姿が浮かんだのか、証人は涙ながらに証言する。一方の鈴香被告は、時折長いまばたきをする以外は、宙を見つめて動かない。

弁護人「彩香ちゃんはお風呂に入っていたか?」

証人「基本的には切石(鈴香被告の実家)で入っていた」

弁護人「誰と?」

証人「そのときによって違う。先に入っている人がいれば一緒に入る。小学生になってだんだん誰かとはいるのがイヤになって、ひとりで入っていた」

弁護人「鈴香被告と一緒には?」

証人「ほとんどなかった」

弁護人「なぜか?」

証人「本人(鈴香被告)は体を見られたくないという思いがあったのではないか」

弁護人「傷(手術痕)があるからか?」

証人「はい」

彩香ちゃんの養育状況についての質問は続く。彩香ちゃんが臭かった、髪の毛がベタついていたという近所の人の証言については「お風呂に入れば長い。頭はたまにぬらすだけで出てくることもあったが、もう一回やり直しをさせていた」と否定した。

⇒(5)彩香ちゃん「大事な大事な娘だった…」