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(15)車10台使い分け、姉の家へ

証言台に立った鈴香被告の弟は、姉との付き合いについて証言した。

弁護人「藤里の町営住宅にはどのくらいの頻度で行っていたか?」

証人「月2〜3回はあった」

弁護人「車は何種類くらいで行ったのか?」

証人「8台〜9、10台くらい」

弁護人「全部あなたの車か?」

証人「そのうち2、3台は親の車だが、後は自分の車」

弁護人「覚えているものでいいので、いくつか車種と車の色を上げてもらえるか」

弟はワインレッドや深緑色などの色とともに具体的な車種を5種類挙げた。事件では、「鈴香被告の家の前にはいつも違う車が止まっていた」という近隣住民の証言も出た。弁護側は、その車が弟のものである可能性を指摘したかったとみられる。

弁護側は続いて、弟の目から見た鈴香被告の元夫と交際相手の印象を尋ねた。弟は、元夫が家事を手伝ったり、彩香ちゃんの世話をしている様子は、ほとんど見たことないと証言。交際相手については悪い印象はないものの、あまり付き合いはなかった―と語った。

弁護人「鈴香被告が東京に行きたいと言ったことはあったか?」

証人「はい」

弁護人「なぜ行きたいと?」

証人「生活保護をもらっている状態がいやで、それを変えるために一人でやり直してみたいと」

弁護人「あなたはなんと?」

証人「彩香のことをどうするのか、と」

弁護人「どうすると?」

証人「こっちに置いていくということを言っていた。一時的なのか、ずっとなのかは聞いていない」

弁護側は、彩香ちゃんが転落する前日の(昨年)4月8日の行動について質問を転じた。

弁護人「あなたと姉と彩香ちゃんの3人で買い物に行ったね?」

証人「はい」

弁護人「あなたと鈴香被告と彩香ちゃんの3人はいつも固まって行動していたのか?」

証人「私と姉はバラバラで、どちらかに彩香がつく」

弁護人「(午後)12時54分に480円の買い物をしている。何を買ったか?」

証人「たぶんたこ焼きだと思う」

弁護人「誰が買った?」

証人「姉が買って、みんなで車に戻ってから食べた」

続いて弁護側は、鈴香被告が彩香ちゃんを転落させてから記憶がなくなっていたという点について、弟の見解を尋ねた。

弁護人「鈴香被告は、彩香ちゃんが落ちた前後から記憶がないと言っているが、豪憲君事件までの鈴香被告の行動を見てどう思うか?」

証人「…そうですね…(押し黙る)」

弁護人「ビラを作って配ったり、あなたが警察に聞きに行ったこともあるね? 鈴香被告の記憶はなかったと思うか?」

証人「そうですね…あの…そう思います」

弁護人「なぜ?」

証人「えー…チラシを作ったり、もし記憶があるのなら、そんなもの作る必要がないと思うし、わざわざ警察署に行って暴れたりすることはないと思う」

弁護人「記憶がないという姉を見て、彩香ちゃんの事件か事故にかかわっているという疑念を持ったことは?」

証人「ない」

弁護人「いつごろまでなかった?」

証人「……」

弁護人「本人が彩香ちゃん事件を認めたのが7月6日。そのころまでなかった?」

証人「そうですね」

⇒(16)「私も母親も人殺しの家族」