(3)子育てに自負 「報道は違う」
鈴香被告の不遇な少女時代の話題は、「DV家庭」から学校でのいじめに移る。証人の母親は証言を続けた。
弁護人「被告人質問の中で、小中学校で鈴香被告が無視されたり、『バイキン』などといじめられつらかったと言っていたのを聞いたか?」
証人「はい」
弁護人「当時聞いたことがあったか?」
証人「ほとんど聞いていない」
弁護人「(心霊写真などと書かれた)高校の卒業文集のことも聞いていなかった?」
証人「そうです」
弁護人「いじめのことは口にしなかった?」
証人「はい」
検察側は「教師に『水子の霊がついている』といわれた」などとするエピソードをあからさまに疑っていたが、鈴香被告の母親はこれを全部肯定していく。
弁護人「小学校では、『水子の霊』について親が抗議して、担任が代わったことがあったか?」
証人「ありました」
弁護人「先生とやり取りしたか?」
証人「はい。担任に呼び出しを受け、『水子の霊がついている。自分は○○(実名)という宗教に入っていて、夏休み前に会があっていくので、鈴香のこともはらってもらってくるので、タスキと…何か忘れたが、3点ほど3万円で買って手を合わせるように』と」
弁護人「それでどうした?」
証人「小学校の校長が、夫の小学生のときの担任だったので、自宅に行って話をして、担任を代えてもらった」
弁護人「どんな話をした?」
証人「『子供に対し、先生が水子の霊がついていると言ってもいいのか。とてもじゃないが、子供を任せられない』と話をして、担任が代わることになった」
教師の話はさらに続く。今度は「修学旅行に来ないでほしい」と言われたエピソードなどについて質問が続いた。
弁護人「来ないでほしいといわれた?」
証人「担任が同じ地区に住んでいて、『鈴香は情緒不安定。連れて行くことはできない』といわれ、『何を言うんだ。一番の楽しみじゃないか。担任が何とかして連れて行くのが当たり前だ』と抗議した」
弁護人「それで?」
証人「行くことになった」
弁護人「この先生は、給食を犬食いさせたのか?」
証人「鈴香からは聞いていない」
弁護人「好き嫌いは?」
証人「激しかった」
弁護人「『食べられない』と聞いていた?」
証人「嫌いとは聞いていたが、残してもいいと思っていたので…」
素行については、母親も問題があったことを認める。
弁護人「高校卒業まで、学校で問題を起こしたことはない?」
証人「いいえ」
弁護人「停学を受けたことは?」
証人「知っている」
弁護人「なぜ知っている?」
証人「学校から連絡があり、主人と謝罪に行った」
弁護人「調書の内容と違うが?」
証人「記憶にない」
一方、鈴香被告が育った家庭の生活面については、ネグレクトだったとする一部の見方に反発。「DV」以外は、子育てに自負があるようだ。
弁護人「養育や育て方を振り返り、至らなかった、不適切だと思う面はあるか」
証人「そんなにベタベタと手をかけたわけではないが、至らなかったとは思っていない」
弁護人「不潔にさせたことは?」
証人「ない」
弁護人「暴力をふるったことは?」
証人「ない」
弁護人「『養育もひどかった。ネグレクトの連鎖』という報道もあった」
証人「育てていくのに一生懸命だったし、別にほうりっ放しで1人で育てたというわけではないし、(報道で)書かれるようなことはない」
弁護人「元夫の教育方針は?」
証人「何も考えてなく、ただ自分が良ければいいという人だった。夫は…」
「夫は」という言葉を、苦そうに言い換えて印象的な言葉が続いた。
証人「元夫は、暴力のときだけ鈴香に接しているようなものだった」