(13)「子供のころはケンカばかり」
証人として余韻を残した鈴香被告の母が傍聴席に戻り、約20分間の休廷後、今度は鈴香被告の弟が証言台に立った。
中肉中背で黒い上下のスーツ、やや長めの前髪にメガネをかけている。鈴香被告は、座ったままで上目遣いに弟を見た。弁護側が質問を始める。
弁護人「年は4歳違いで、学年は5年違う?」
証人「はい」
弁護人「公判は毎回母と傍聴している?」
証人「はい」
鈴香被告は目をつぶってやり取りを聞いていた。まずは鈴香被告の母親が話した「DV家庭」の実態について質問が飛ぶ。弟は秋田弁まじりの小さな声でボソボソと答えた。
弁護人「鈴香被告が父親から暴力を受けているのを見たことがある?」
証人「はい」
弁護人「いつごろ?」
証人「しっかり記憶にあるのは、私が中学校に上がってから」
弁護人「鈴香被告が暴力を受けているとき、あなたはどこに?」
証人「小学生に上がるころには自分の部屋があったので、大体自分の部屋にいた」
弁護人「偶然いなかったのか。それとも意図的に回避した?」
証人「意図的な方が大きい」
弁護人「なぜ?」
証人「とばっちりというか…自分も怒られたりということがあったので」
弁護人「あなたに対する暴力は?」
証人「悪いことをしたときにはひどく殴られたが、私自身に対して意味なくたたくことは少なかった」
弟は、父親の暴力が、夫婦げんかが発端となって始まっていたと証言する。
母親が殴られたりけられたり、髪の毛を引っ張られるといった光景は「けんかのたびにあった」というものの、鈴香被告への暴力の有無については、「自分の部屋にいることが多く、あまり見てはいない」。
弁護側は話の接ぎ穂がなくなり、鈴香被告と弟の関係についての質問に変える。
弁護人「子供のころは姉とどういう関係だった?」
証人「しょっちゅうケンカばかりで仲は悪かった」
弁護人「仲良く遊んだことは?」
証人「ほとんどない」
弁護人「鈴香被告は、高校卒業後すぐに栃木にいった。あなたは何年生だった?」
証人「中学校2年か3年ぐらい」
弁護人「就職した姉が最初に帰ってきたのは?」
証人「中学3年の秋ごろ」
弁護人「なぜ覚えている?」
証人「そのころ、私が未成年でたばこを吸ってて姉から父に告げ口された。そのことが記憶に残っているから」