第6回公判(2010.9.13)

 

(17)「お互いに違法薬物好きだった」 2人で一緒に使った理由明かす

押尾被告

 合成麻薬MDMAを一緒に飲んで容体が急変した飲食店従業員、田中香織さん=当時(30)=を放置し死亡させたとして、保護責任者遺棄致死罪などに問われた元俳優、押尾学被告(32)に対する女性裁判員の質問が行われている。

 左端に座る女性裁判員は押尾被告が田中さんを放置してまでも失いたくなかったものは何なのかについて質問を始めた。

裁判員「仕事や家族を失いたくなかったから、田中さんを放置したのですか」

被告「失うとか、失いたくないとかじゃなかったんですよ。とにかくクスリの発覚を恐れていて、クスリを抜きたかったんです」

 次に、向かって右側に座る裁判官が質問した。

裁判官「泉田被告から受け取った(合成麻薬の)MDMAやTFMPPは、どこに入れていたのですか」

被告「部屋の中のゴルフバッグに入れていました」

裁判官「ゴルフバッグから出して、サプリメントのボトルに移し替えたのはなぜですか」

被告「ゴルフにはよく行っていたので。深い意味はないです」

裁判官「平成21年7月30日に、泉田さんに『アミノ酸』を注文した時点で、田中さんと使おうと思っていたのですか」

 「アミノ酸」とは、MDMAを押尾被告に譲り渡したとして、実刑判決が確定した泉田勇介受刑者(32)と押尾被告の間でMDMAを指すときに使っていた隠語だ。

被告「飲みに行ったときとかに自分で使うのと、田中さんと使うのと、両方です」

裁判官「先ほど言っていた、田中さんと互いに持ち寄るというのは、どういうことですか」

被告「今日はどっちのを使おうかとか、お互いのものを混ぜるときもありました」

 押尾被告はクスリは「お互い持ち寄るのが前提だ」と証言していた。

裁判官「泉田さんの証言と、クスリの形状などが違っていますね。泉田さんはうそをついているんですか」

被告「間違いないです」

 押尾被告は勢いよく断定した。

裁判官「なぜ泉田さんはうそをつくのでしょうか」

被告「結局、10錠と10グラムだと罪の重さが違うんですよ」

 押尾被告は、調べを担当した検事に聞いた話として、10グラムと10錠では量が異なり、10グラムのほうが罪が重いため、泉田被告は10錠と答えたと言われ、納得したと説明する。

 続いて向かって左側の裁判官が質問した。

裁判官「田中さんとクスリを持ち寄って混ぜて飲むこともあったということですが、事件当日の8月2日は田中さんのものだけだったんですか」

被告「はい」

裁判官「8月2日に田中さんと会う前、泉田さんに空カプセル(中身が空のカプセル)を買ってきてもらっていますね」

被告「はい」

裁判官「なんのためですか」

被告「粉末を入れて飲むためです」

裁判官「泉田さんにカプセルの購入を頼んだのは何回目ですか」

被告「2回目です」

裁判官「いつもより大きいカプセルを買ってくるように頼んでいますが、なぜですか」

被告「深い意味はないです」

 押尾被告は口調も変えることなく、前を見据えたまま淡々と答えていく。

裁判官「大きいものを入れるからではないのですか」

被告「ないです」

裁判官「前回、入れづらかったから大きいものをということではない?」

被告「特にないです」

裁判官「本当に何もないのですか」

 裁判官は念を押すように言った。

被告「はい」

裁判官「以前、Kさんと精神安定剤を一緒に飲んだと言っていましたね?」

 Kさんは、押尾被告のドラッグセックスのパートナーとして、今回の公判でも証言に立った女性だ。

被告「当時、赤玉というものが流行っていました。お酒と飲むと楽しい気分になれるもので、それのことです」

裁判官「性行為に及んだりもしたのですか」

被告「はい」

裁判官「違法かどうかは別として、クスリを使ってKさんとは性行為をしたのですね」

被告「はい」

裁判官「田中さんと明らかに違法なMDMAを使ったのはなぜですか。違法ではないものでもよかったのではないですか」

被告「お互いに違法薬物が好きだったからです」

 続いて山口裕之裁判長が質問を始めた。

⇒(18)「逃げたい自分がいました」 証言内容の違い追及する裁判長につぶやく