第2回公判(2010.9.6)
(11)「子供に会えなくなる」と救急車の要請拒否 「(マネジャーに)罪着せよう」とも提案
元俳優、押尾学被告(32)とともにロサンゼルスに行ったEさんの同僚女性の尋問が続く。女性弁護人がEさんから聞いた話について同僚の女性を問い詰める。
押尾被告は時折、メモを取りながら女性をじっと見つめる。
女性は押尾被告とEさんについて写真週刊誌フライデーに読者投稿するが、特にフライデーから連絡はなかったという。
その後、女性はEさんと「仲違い」して、連絡を取らなくなったと話す。事件後、女性は警察や検察の事情聴取を受けることになったという。
弁護人「どうして警察に事情を聴かれたと思いますか」
証人「Eがほかの人に話をしたか、私の名前を出したからだと思います」
弁護人「Eさんは何であなたの名前を出したのですか」
証人「ドラッグを使ってセックスをしたというのは私にしか話をしていません」
弁護人「なぜそう思うのですか」
証人「あまり言わない方がいいという認識があったからです」
女性はEさんから東京・恵比寿のダイニングバーで押尾被告との関係について打ち明けられたという。
弁護人「エクスタシーを飲んだということについては?」
証人「押尾さんが出したという意味だと思いました」
弁護人「3月にEさんは押尾さんに会いにロサンゼルスに行くと言っていましたか」
証人「はい」
弁護人「あなたはどう言いましたか」
証人「海外と言っても記者がいないとはかぎらないので、彼女は本気で押尾さんのことが好きだったので、『気をつけなさい』と言いました」
女性弁護人の質問が終わる。続いて、男性弁護人が質問を続ける。弁護人は恵比寿で会うことになった経緯について質問。女性はEさんが押尾被告とのことを話したかったからだと答えた。
弁護人「Eさんはロスでのことについて『すべてが楽しかった』と喜んで話していたんですよね」
証人「はい」
弁護人「Eさんがロスに行ったのは誕生日という意味もあったんですよね。誕生日はいつですか」
証人「個人のプライバシーにかかわるので言えません」
弁護人「月日ならいいでしょう」
証人「言えません」
弁護人「●月…(法廷では具体的な日付)」
弁護人が執拗(しつよう)に誕生日を言おうとするのを山口裕之裁判長が制止する。それでもやめない弁護人に山口裁判長も声を荒らげ、弁護人を注意する。
裁判長「何を言っているんですか。どういうつもりですか。言わないというお約束でしょう」
察官も弁護人の尋問制限を求める。
それでも弁護人は無視してEさんの誕生日を口にする。ついに、裁判長も堪忍袋の緒が切れた様子だ。
裁判長「いい加減にしなさい。関係ないということで言わない約束じゃないですか」
弁護人はようやく質問をやめた。続いて検察官が質問を行う。
検察官「8月5日を最後にEさんと連絡を取らなかったのはなぜですか」
証人「そのときはもう事情聴取を受けていたので、連絡を取らない方がいいと思いました」
女性に対する尋問が終わる。押尾被告は小さくため息をついた。
続く証人は押尾被告の元チーフマネジャーの□□(法廷では実名)氏だ。押尾被告はかつて一緒に仕事をした□□氏が法廷に現れると、数回瞬きをした。
女性検察官が質問を始める。□□氏はエイベックスに勤めており、平成20年4月から押尾被告のマネジャーをしていた。9月から元マネジャーの△△(同)氏も加わったという。
検察官「平成21年8月2日、2307号室で田中香織さん=当時(30)=が亡くなる事件でこの部屋にいましたね」
証人「はい」
検察官「きっかけは何ですか」
証人「午後8時ごろに押尾から連絡がありましたが、私は別の人間と話をしていたので、5分後にかけ直しました。『大変なことが起こった。大至急来てほしい』と連絡がありました」
検察官「そのときの被告の様子からどんなことが起こったと思いましたか」
証人「何が起こったのかは分かりませんでしたが、いつもと違う様子だったので、緊急だと思いました」
検察官は当時の通話記録を見せ、□□氏が押尾被告に『20時01分32秒』に電話を折り返したとの証拠を見せる。□□氏は約30分後の午後8時20分前後に現場の六本木ヒルズに駆けつけ、23階のエレベーターホールで押尾被告と落ち合った。
検察官「会ったときにはなんと言われましたか」
証人「『女性が薬を飲んで死んだ』と言われて、すぐに部屋に向かいました」
部屋には部下の△△氏がおり、田中さんはベッドにいると伝えられる。□□氏はソファに座り、押尾被告から田中さんの素性と亡くなった状況について説明を求めた。
検察官「被告は女性(田中さん)について何と言っていましたか」
証人「『あまりよく知らないんだよね。下の名前は香織。銀座でホステスをしている。暴力団や薬関係に詳しい』と説明されました」
検察官「亡くなった状況については」
証人「一緒に薬をやってセックスをした後、人がいない壁に向かって話しかけたり、けいれんして泡を吹いて亡くなったと言われました」
検察官「被告は女性が薬を飲んだ、と」
証人「はい」
検察官「被告も飲んだ?」
証人「はい」
検察官「薬の出所は?」
証人「(話さ)なかったです」
検察官「亡くなったいきさつを話しているときの被告の様子はどうでしたか」
証人「つめをかみながら貧乏揺すりをしていました。興奮を押し殺した様子でした。しかし、大きい声でもなく小さい声でもなくコミュニケーションを取れていました」
検察官「そのほかにどんな話をしましたか」
証人「救急車を呼んだか確認しました」
検察官「いつですか」
証人「話が前後しますが、駆けつけてすぐにです」
検察官「何て答えましたか」
証人「呼んでいないと」
検察官「被告人にはなんと言ったんですか」
証人「『救急車をなぜ呼ばないんだ』と言いました」
検察官「救急車を呼ばない理由について被告はなんと言っていましたか」
証人「『だめだ』と。『救急車を呼ぶと自分が薬をやっていることが分かり、仕事ができなくなる。子供にも会えなくなる』と言っていました」
検察官「それを聞いてどう思いましたか」
証人「自分勝手だと思いました。この期に及んでそういう発言をしたことについて残念に感じました」
メモを取っていた押尾被告のペンが止まる。
検察官「あなたはそういう状態の被告に対してどうしましたか」
証人「興奮を押し殺した状態だったので、叱責(しっせき)するよりも、救急車を呼んだりしないといけないよねと勧めたり、諭すような形でした」
検察官「救急車を呼ぶというのは何度言いましたか」
証人「延べ5回くらいです。最終的には押尾の友人が来て呼びました」
検察官「そこで被告から何か提案はありませんでしたか」
証人「『△△さんに罪を着せよう』という提案がありました」