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(6)小室被告「今は5円玉ひとつも大切に使う」

公判では、小室被告の情状面が大きな焦点となっている。このため検察官の質問も、小室被告の反省の態度についてただす内容が多いようだ。

検察官「被害弁償の件ですが、確かにあなたが苦しい状況にあることは分かりますが、足りない分を補う形で弁償をしなかったのはなぜなんですか」

小室被告「努力はしました。周囲の人たち、松浦社長が手を差し伸べてくださったと思っています。全額弁済をずっと考えていました」

検察官「まず自分が出せる分だけきちんと出して、足りない分を(他の人が)出す、ということをすべきだったのではないんですか」

小室被告「100万、1000万円とかだったら何とかできたと思いましたが、とても追いつく金額ではなかったんです。ただ、松浦社長に『これだけはあるんですが』と相談しましたが、『私がまとめて全額工面するから』と言ってくださったんです」

検察官「あなたは生活態度を改めて更生するということですが、以前のあなた自身の金銭感覚についてはどのように思っていますか」

小室被告「常識かどうかを考えると、非常識としか言えません。一度お金が入ってしまうと、ついついその金額に甘えてしまって、慢心になってしまいました。私が間違っていました」

「今は1円も持たずに出歩いているときもありますし、100円玉ひとつ、5円玉ひとつでも大切に使おうと思っています。当たり前といえばそうかもしれませんが。そうしたことから一つひとつ出直したいと思っています。1000円でどれだけの生活ができるんだろう。そんなことを考えながら暮らしています」

検察官「ところで、事件でだまし取った金は、借金の返済にと考えていたようですが、共犯者についてはどのように思っていますか」

小室被告「私が選んだ2人ですので、私自身に責任があると」

検察官「2人に申し訳なかったとは思わないんですか」

小室被告「すべてに対して私が選んだことなので。ちょっと自分でも表現が分からないんですが…。2人を選んだのは私です」

検察官「判決が下ることになるが、罪を償う気持ちはあるんですか」

小室被告「当然考えています。今回のことで私の中で最も大きいことは、大阪拘置所にいたときのことです。拘置所の雰囲気や、その中で私が何が苦しくてつらいと思っていたか。そんなことを考えながら、毎晩毎晩、夢を見るぐらいです」

検察官「それを考えながら今も生活していると」

小室被告「はい」

検察官の質問はこれで終了。裁判長が左右に座る裁判官に質問の有無を尋ねると、左陪席の男性裁判官が「ひとついいですか」と切り出した。

裁判官「金策に追われるなかで、音楽や曲作りに集中できなかったといったことはなかったんですか」

小室被告「集中したつもりでしたが、あとで作品を聞いたファンのみなさんの指摘で、『真剣に集中できていないのだなあ』と。その時は、曲を作っているときは、そんなことは思わなかったんですが。作品の反応みたいなものを聞いて、今はすごくそのように感じます」

裁判官「あなたの著書のなかで『金の管理は得意ではない』と書かれていますが、どうですか」

小室被告「お金の管理は松浦社長たちに指南をしていただいています」

裁判官「そのなかで音楽に集中できる環境になれますか」

小室被告「そういう場を作ってくださると約束してくださったことに、心から感謝しています」

これで被告人質問が終わった。裁判長に一礼して席に戻った小室被告。疲れか精神的なプレッシャーなのか。表情はやや疲れたようにもみえる。

続いて被害男性の証人尋問だが、出廷の際に姿を隠すための遮蔽(しゃへい)板を設置するため、裁判長は午前11時28分、いったん休廷することを告げた。小室被告は裁判長に一礼をすると、やや早足で退廷。傍聴席に目をやることはなかった。

⇒(7)被害男性「小室被告は捨て猫のようだった」