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(5)「殺すつもりでも殺さないつもりでもなかった」 はぐらかす殺意

取り調べの検察官が作成した調書内容について弁護人の被告人質問が続く。背筋を伸ばしたままの加藤智大(ともひろ)被告(27)だが、時折、記憶を整理するそぶりを見せる。

加藤被告「2人を車ではねて3人を刺して、それ以上は覚えていないという話をすると、検察官からぼやかした話をされました」

弁護人「そのことで検察官とは話をしましたか」

加藤被告「そのことについては話はしていません」

弁護人「そうした記憶があいまいなままの調書に署名をしたのですね」

加藤被告「はい。私が犯人として事件を起こした負い目や罪悪感があり、署名を拒否することはできませんでした」

弁護人「調書を作成される際、どの段階から録音や録画がされましたか」

加藤被告「取り調べの最中に内容を訂正するとかしないとのやり取りがあって、全部終わって文章ができてからのことです」

弁護人「そのあとに同じ部屋で録音と録画が始まったのですか」

加藤被告「いえ。別の部屋でした」

録音時の状況を思いだしながら話す加藤被告。

加藤被告「(録音の)途中で検事さんに話を遮られるようなこともありました」

弁護人は、録音したDVDの再生を村山浩昭裁判長に求めた。書記官が立ち上がり、再生準備をする。傍聴席から見える大型モニターの電源は切られ、検察官と加藤被告のやりとりの音声だけが法廷内に響く。

犯行状況を語る加藤被告に対し、検察官があいまいな部分について思いだすよう促しているようだ。

弁護人「いま再生したのは取り調べの状況ですね」

加藤被告「はい」

弁護人「あなたが刺した人数や最初に刺した人について話をしようとしていましたが?」

加藤被告「覚えているのは白い服の1人、そして知らない警察官のような人。そしてもう一人の白い服の人。その話をしようとしたら、遮られてしまいました」

弁護人「勾留質問でも、内容について間違いないかを聞かれたと思いますが。調書の内容、『Kさんを刺したのは間違いないが覚えていない』とありますが、どういう意味ですか」

加藤被告「自分が刺したのは間違いありませんという意味です」

弁護人「Kさんを刺したときの状況についてははっきりと覚えていますか」

加藤被告「Kさんは知らない人ですし、状況についてもはっきりと覚えていません」

弁護人「警察官の前で話をした通りとの記録もありますが?」

検察官の取り調べに先立ち、警察官からも殺意の有無について聞かれていた。

加藤被告「それについては、人を殺すつもりではなかったのですが、同時にまた殺さないつもりでもなかったという意味です」

弁護人「その後の取り調べではどうでしたか。刑事はどういった意味で話をしていたのですか」

加藤被告「私の過去の嫌な話について聞かれました」

弁護人「どんな話をしましたか」

加藤被告「小さいころの親との関係の話とか、自分に彼女がいないとか、派遣や契約の仕事を解除された話とか嫌なことの話をしました」

取り調べの状況を思いだしながら語る加藤被告だが、その単調な語り口に変化はみられない。

弁護人「作成された調書で、動機面についてはどのように書かれていましたか」

加藤被告「私の中にある過去の不満が募り募って、最後のつなぎの件で怒りが爆発したというようなことです」

弁護人「そういう動機だったのですか」

加藤被告「そうした記憶が私の動機かのようにされてしまいました。訂正は求めましたが、受け入れられませんでした」

弁護人「それならばどうして調書に署名したのですか」

加藤被告「自分がやったことの重大さという思いがあって、署名を拒否することはできませんでした」

弁護人「では本当はどうだったのですか」

加藤被告「どういう話の流れかは分かりませんが、私が殺すつもりではないと話をしたことはありました。人を殺すつもりで事件を起こしたつもりではないという話です」

弁護人「あなたの話について刑事さんはどういった様子でした」

加藤被告「逆に殺すつもりだったとされました」

弁護人「殺すつもりだったと調書に盛り込まれたのですか」

加藤被告「はい」

加藤被告は、はっきりとそう断言した。

⇒(6)「見ているんだから思いだせ!」 取り調べで供述迫る検事