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(11)「自分を見つめれば私のようにならない」 再発防止策示す

約30分間の休憩をはさみ、加藤智大(ともひろ)被告(27)が再び入廷した。傍聴席に向かって一礼し、証言台の前に着席。村山浩昭裁判長は、加藤被告に対し検察官の質問が始まること、分かりやすく答えることを告げた。加藤被告は前に置かれたマイクをいじっている。まずは男性の検察官が質問を始めた。

検察官「この事件にかかわった人は、どうしてあなたが事件を起こしたかを知りたがっている。それは分かっていますか」

加藤被告「はい」

検察官「事件を起こした理由は、なりすましや荒らしに対して、怒っていることをアピールしたかった、それだけなのですか」

加藤被告「怒っていることを伝えることで、いやがらせを本気でいやがっていると分かってもらおうと思いました」

検察官「それだけのことで、見ず知らずの人をあんなに殺したりしたということですか」

加藤被告「結果的にそうなります」

検察官「調書を見ると、動機はもう少し複雑なのではないですか」

加藤被告「調書の内容は当時の考えで、今の考えとは違います」

検察官「逮捕されてから2年以上の時間がたっていますね。なぜ事件を起こしたのか、考えが変わったのですか」

これまでよどみなく答えていたが、やや答えるまでに間が空いた。

加藤被告「変わったというか、2年考えまして、真相に行き着いたという感じです」

検察官「いつ行き着いたのですか」

加藤被告「この日とは示せないですが、公判前整理手続きで証拠などを見ているうちに、いろいろつながったというか」

検察官「真実に行き着いたきっかけは?」

加藤被告「これを見てぱーっと明るく開けたというのではなく、いろいろなものの積み重ねでこうなりました」

検察官「あなたは法廷で荒らしやなりすましについて、過去のことで今はどうのこうの思っていないと言いましたね」

加藤被告「はい」

検察官「あなたが事件を起こしたのはその程度のことなのですか」

加藤被告「そうです」

次第に口調がきつくなる検察官に対し、加藤被告は淡々と表情を変えずに答え続ける。

検察官「同じような事件が、自分が話をすることで防げるという趣旨の話もしていましたが、なぜ再発防止になるのですか」

加藤被告「事件の話をすることで原因が特定されれば、対策がとられるからです」

検察官「今回はどんな対策がとれるのですか」

加藤被告「自分のものの考え方の問題なので、自分でどうにかできることです。私のように自分から逃げず、自分を見つめれば、私のようにはならないと思います」

検察官「そのほかには?」

加藤被告「なりすましや荒らしはネット上のモラルの問題ですが、掲示板だけに依存していた自分に問題があります」

検察官「結局こういう事件を起こさないためには、モラルを向上させ自分を見つめることが大事ということですか」

加藤被告「…そのようにも言えると思います」

検察官「あなたは法廷で本音と本心という言葉を使っていますが、今はどちらなのですか」

加藤被告「本音ですし、本心で話しています」

男性検察官は問いつめるような口調で、謙虚に本当のことを話すよう促し、それに対し、「話せることは話しているつもり」と淡々と答える加藤被告。検察側はここで女性検察官と質問を交代し、母親について聞いていった。

検察官「母親からされて一番いやだったことは何ですか」

言葉につまる加藤被告。

加藤被告「どれが一番とはいえませんが、いま言われて一番に浮かんできたのは、食卓でチラシの上に乗せたごはんを食べさせられたことです」

検察官「自分の考え方に母の育て方が影響していると思うようになったのはいつからですか」

加藤被告「事件後に自己分析をしていく中でです」

検察官「母親から悪いことをされた記憶しかないというが、ほめられたことは全く覚えていないのですか」

加藤被告は正面を向いたまま、しばし沈黙する。

加藤被告「はい。思いだそうとしても何も出てきません」

検察官は加藤被告の高校時代や中学時代にさかのぼり、母親との思い出話を投げかける。だが、加藤被告は「覚えていない」などと淡々と答えるだけだった。

検察官「18年8月末に自殺しようとしたと話していますね。本当にしようと思ったのですか」

加藤被告「はい」

検察官「母親にいまから自殺すると電話していますが、なぜ父親でなく母親なのですか」

加藤被告「母親に電話したのは、事故ではなく自殺だと伝えるためでしたが、なぜ母だけかは分からないです」

検察官「母に頼ったり助けてほしかったからではないのですか」

加藤被告「ないです」

検察官は母親と加藤被告の関係について詳しく尋ねていく。加藤被告が言葉につまる回数が増えていった。

検察官「これまで母親の愛情を感じたことはないですか」

加藤被告「…。今思えば愛情といえなくもないと思えるものもあるが、当時はそう思えませんでした」

加藤被告の両親に対する気持ちなどを質問する検察官。加藤被告は、取り調べの当初は特に言うことはないと言っていたが、取り調べの後半の段階になって「親には感謝がある。迷惑をかけて申し訳ない」と話したという。

検察官「話を変えたのは、当初は本音を話せていなかったのですか」

加藤被告「隠そうとしたわけではありませんが、強がりの気持ちが出てしまいました」

加藤被告は当時の状況をこう振り返った。

⇒(12)仙台の会社辞めるとき 「火をつけようと考えたことある」