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(3)あまりにもむごい所業、万死に値する

 母や友人、勤め先の上司が一致して証言するように、東城瑠理香さんは努力家でした。おとなしそうに見えて負けん気が強く、目標にがむしゃらに突き進むタイプでした。多くの友達に囲まれ、希望に満ちた活動的な女性でした。やりたいこともたくさんありました。幸せに結婚し、男の子をもうけ、英語をさらに勉強するつもりでした。周囲の誰もが、才能豊かで努力を惜しまない東城さんが、こうした夢を実現させるだろうと確信していました。東城さんは「旅の途中」だったのです。星島貴徳被告は、その東城さんの将来を根こそぎ奪いました。

 東城さんは大学進学後、仲の良い姉妹と一緒に暮らしていました。916号室に転居してからも、日中は仕事に取り組み、夜は仲の良い姉と楽しく過ごしていました。

 事件のあった(昨年)4月18日も、いつもと同じように出勤し、夕方は姉と連絡を取り合い、午後7時半過ぎには916号室の玄関まで帰宅しました。東城さんにとって、この夜も、ここまではいつもと変わりない平穏な日常だったのです。東城さんに、もし玄関にカギをかけるわずかな時間があれば、後から帰宅してくる姉と部屋でお菓子を食べたり、一緒にお風呂に入ったり、おなかがすいたらコンビニにアイスを買いに行ったりして、いつものように楽しく過ごすはずでした。

 いつもと違ったのは、2つ隣の918号室の玄関ドアに隠れて待ち伏せていた星島被告が、突然押し入り襲ってきたことです。東城さんは星島被告を押し出そうとしましたが、星島被告から殴りつけられ、両手を縛られ、刃物を突きつけられて918号室に連れて行かれました。東城さんは918号室に入れられると、手足をきつく縛られ、口の中にタオルを入れられました。逃げ出すことも、助けを求めることもできず、閉じこめられていることを誰かに知らせることもできませんでした。

 東城さんは、星島被告の暴力により、赤子同然の圧倒的に弱い立場に置かれたのです。

 東城さんは、自分が自宅の1つおいて隣の部屋に連れ込まれたことは分かっていたはずです。そして、すぐ近くの916号室に姉が帰ってくることも分かっていました。東城さんは、心の中で何度も「お姉ちゃん、助けて」と叫んでいたに違いありません。午後8時43分ごろに帰ってきた姉は、その声が聞こえたのかすぐに警察に連絡しました。やがて、玄関ドア外側の共用通路では警察官が捜査を開始しました。

無慈悲な首の激痛と断末魔の苦しみ

 東城さんは、918号室で縛り上げられ、不気味な静けさのなかで恐怖に震えていました。それでも、東城さんは生きたかったはずです。生きてすぐそばにいる姉のところに帰りたかったはずです。午後10時20分ごろ、918号室のドアがたたかれた音を聞いて、東城さんは「やっと助けに来てくれた。お姉ちゃんが警察に電話してくれたんだ」と、生還への望みをふくらませたに違いありません。本当は身をよじり、タオルを吐き出し、あらん限りの声を上げて助けを求めたかったのだと思います。しかし、お姉さんが「(東城さんは)叫んだりしなければ、(犯人から)なにかされても、生きて帰してくれると思ったと思います。だって生きて帰してくれれば、なにかされてもまた笑って暮らせる日がくるから」と証言するように、希望を信じていたからこそ、星島被告を刺激しないようにあえてじっと耐えていました。

 それからわずか数十分で、東城さんは突然、口を星島被告の手によってふさがれました。生還の可能性を信じ、震えながら祈り続けていた東城さんの恐怖は、このとき極限に達したはずです。一体自分はこれからどうなるのか。極限の恐怖の中で、手も足も動かせない東城さんは次の瞬間を待つしかありませんでした。

 東城さんを待っていたものは、無慈悲な首の激痛と断末魔の苦しみでした。大量の出血で薄れゆく意識の中で、東城さんは何を思ったでしょうか。東城さんの母が証言するように、東城さんは「なかなか死ななかった」わけではなく、「絶対に生きようと思って、死ねなかった」のです。しかし、「死にたくない、助けて、お姉ちゃん」と声なき声を上げながら、無念の中で絶命していったに違いありません。

 東城さんの恐怖感や痛み、苦しみ、絶望感は、遺族でなくても憤りの涙を禁じ得ません。大学時代の親友が「人の人生を奪っておいて、のうのうと自分だけ生きてるなんて信じられないと思いました」と、高校時代の親友が「この犯人だけは絶対に許さないし、死刑になったとしても、自殺して勝手に死んでも、こいつのことは絶対に許さないし、本当に憎いです」と、涙ながらに証言するのも当然のことです。

 あまりにもむごい星島被告の所業が万死に値するのは、誰の目にも明らかだといえます。

残忍な被告の餌食

 東城さんは、平成20年3月初めから姉と暮らし始めたときも、防犯カメラなどが完備されていて、安全で安心できる916号室を選びました。9階の部屋は家賃が高くなりますが、それを我慢し、もっとも安全であると考えてあえて916号室を選ぶほど、東城さんは安全に気を使っていました。1人暮らしを避け、帰宅前には姉と連絡を常に取り合い、お互いの安全を気遣っていました。

 (事件に巻き込まれた)4月18日も、帰宅するまでは何も変わらない一日でした。いきなり星島被告に玄関に踏み込まれ、殴られ、部屋まで連れていかれ、完全に無抵抗な状態にさせられたことについて、東城さんに落ち度はまったくありませんでした。自宅は、もっとも安全で安心できるところのはずです。被害者は、その自宅内までたどり着いていました。時刻も午後7時半で、遅い時間帯ではありません。それにもかかわらず、東城さんは見ず知らずの星島被告に突然襲われたのです。いかに注意深く生活していようと、東城さんが事前にこれを避けることは絶対にできたはずがありませんでした。

 この事件では、被害者である東城さんになんの落ち度もなかったことはもちろんです。しかし、それ以上に、東城さんには星島被告の襲撃から身を守るすべがなかったことを強調しておきたいと思います。東城さんは、残忍な星島被告の餌食になったとしか言いようがないのです。

⇒論告要旨(4)遺族の処罰感情厳しく…「今も帰りを待ちわびる」