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(5)「死刑を、死刑を求刑します」…人格踏みにじり、獣欲の標的とした被告

検察官は別の事件を引き合いに出し、星島貴徳被告が起こした事件との比較をした上で、最高裁が示した死刑の基準についての説明を始める。極刑の求刑がなされるのではないかという緊張感が法廷内に広がる。

検察官「死刑とは、人間存在の根本である生命そのものを奪い去る極刑です」

検察官はこうゆっくりと述べた後で、昭和58年に最高裁が「永山事件」の際に示した死刑判断の基準について説明。また平成18年の「光市母子殺害事件」での最高裁判断を引用して死刑判断の基準を考察する。

検察官「罪責が誠に重大であるときは、年齢や前科などの犯罪的傾向、反省などの情状、改善更正の可能性など被告の属性にかかわる主観的情状のみでは死刑を回避する決定的事情とはならない」

「死刑を回避するに足りる『特に酌量すべき事情』が認められない限り、死刑を回避できない」

ここで大型モニターには『まとめ』の文字が浮かび、検察官は、ひと呼吸置いて結論に入る。

検察官「本件は、被告人が自らの保身のため被害者の存在を消し去った事件です」

「人格を踏みにじり、獣欲の標的とし、自己の『性奴隷』として物同様の支配下に置くことを企て、これにより自ら招いた警察捜査の開始という事態に対し、急転して、むしろ被害者は自らの犯行を裏付ける証拠となり危険で邪魔な存在と考え、被害者の人格、生命、尊厳を踏みにじり、被害者をためらうことなく殺し、その死体をバラバラに解体して、遺棄しました」

「過去に類を見ない、人を人と思わぬ、悪質極まりない犯罪です」

検察官は、厳しい言葉を並べた上で、しめくくる。

検察官「死刑を回避すべき『特に酌量すべき事情』も認められません」

「被告人自身の生命をもって、その罪を償わせるべきと考えます」

「求刑を申し上げます。死刑、被告人を死刑に処すことを求めます」

検察官は、ひと際大きなうわずった声で、2度『死刑を求刑します』と述べた後、裁判長に深々と頭を下げて席に戻った。やや興奮しているのか、顔は赤い。一方、同じく耳を赤らめて、じっとうつむいて検察官の意見を聞き入っていた星島被告は『死刑求刑』の瞬間も表情を一切変えなかった。

法廷がざわついた雰囲気に包まれている中、続いて、弁護人の最終弁論が始まった。

弁護人「それでは、本件に関する弁護人の意見を述べさせてもらいます」

星島被告は昭和50年1月5日に生まれ、事件を起こした33歳までの前科はなかった。コンピュータープログラマーの派遣社員として働いていた職場では高い評価も得ていた。

弁護人「新入社員を率先して教育するような立場にあって、極めて平凡な日常生活を送っていました」

そんな星島被告が、4月18日に東城さんを襲った上、遺体をバラバラに損壊してトイレに流したり、ゴミとして捨てた。

弁護人「その間(犯行から遺体の遺棄が終了するまで)わずか13日間であり、被告人はそれ以後は、警察の留置施設あるいは拘置所内で、猛省の日々を送っている」

「弁護人は、決して本件が一過性の事件であるなどと言って片づけるつもりもありませんし、犯行が明らかになって世間を震撼させるに至っても、さらに検察官がご指摘の通り、被害者ご遺族の被害感情が峻烈なものであることも、近隣社会に与えた影響が大であることも、重々承知しています」

星島被告は法廷でも『死刑にしてほしい』と述べ、一切争う態度を見せていなかった。

弁護人「しかしながら弁護人は被告人と接しているうちに、死刑に処することに強いとまどいを覚えるようになった」

「被害者ご遺族が死刑を望み、検察官が死刑を求刑し、さらに被告人本人すら望んでいるから、判決も死刑にするというのであれば、裁判は無意味なものになってしまう」

弁護人は過去の判例や証拠を分析し、星島被告の量刑を考える必要性を訴えた。

弁護人「決して死刑廃止論者ではないが、本件被告人の責任が死刑に値するとまでは、到底考えられません。以下、弁護人の意見を詳述させてもらいます」

ただ弁護人も事実関係について『弁解の余地はなく、争うつもりはない』とし、情状面での主張を展開していく。

弁護人は、検察官も引き合いに出した、『永山事件』の最高裁判断を取り上げ、犯行の罪質▽動機▽残忍性▽被害者の数▽被害感情▽社会的影響▽被告の年齢▽前科▽情状など、併せて判断する必要性を説いた上で、まず『罪質』についての考えを述べていく。

弁護人「もし本件において、死体損壊・解体行為がなかったとしたら、果たしてこれほどまでに厳しい求刑が行われたであろうか。弁護人の答えは『否』である」

「また本件が死体損壊・遺棄だけであれば、その法定刑は懲役3年以下にすぎないのである」

「もし被告人が被害者の遺体を単純に切断して遺棄したとしても、やはり死刑が求刑されることはなかったのではないかと考える次第です」

「本件でも、住居侵入・わいせつ目的略取、殺人の起訴事実に、法定刑懲役3年以下の死体損壊行為が加わった事案の量刑として考えるべきである」

しかし、いくつもの罪が重なった場合、個別的な量刑を判断した上で合算するということは『法律上予定されていない』とする最高裁の判断もある。ただ弁護人は、個別の罪の罪質や責任を考慮することは『むしろ当然ではないだろうか』とする。

弁護人「本件死体損壊・遺棄行為は極めて残虐であり、死後とはいえ被害者本人の人格をまったく無視するものであったと弁護人としても言わざるを得ない」

「だからと言って、法律が定める、それぞれの個別犯罪の責任の軽重を無視して、感情的に、かつ全体的に被告人の責任を判断することは憲法が保障する罪刑法定主義や適正手続きに反するものであると言わざるを得ません」

弁護人は、こう述べた上で裁判官に冷静に事件を分析し、判断してもらうことを要望。続いて動機面での意見を述べていく。

弁護人「わいせつ目的で被害者を略取する際には、被害者を殺害することなどまったく考えておらず、暴行を加えたり、凶器を持って脅迫したりすることすら考えていなかった」

「被告人に殺害や死体損壊の犯意を生じたのは、検察官も認めている通り、警察に(東城さんの行方不明が)発覚したことを察知した直後である」

弁護人はあらかじめ凶器を準備することもなく、当初は、殺意がなかったことを強調し、動機は『自己の犯罪発覚を防ぐことにあった」とする。

弁護人「確かに、動機自体は自己中心的なものであり、決して酌量すべき余地があったなどと主張するものではないが、少なくとも被害者が1人でありながらしばしば死刑求刑がなされる身代金ほしさであるとか、保険金詐取といった目的・動機とは趣を異にすることも事実」

「動機や、その計画性に着目すると、必ずしも死刑を持って処すべき事案とは思えないのであります」

⇒(6)生々しい犯行場面の確認…「『市中引き回し』に等しかった」と弁護人