第3回公判(2008.5.8)

 

(4)「詐欺罪に当たる」の検察主張に弁護人は笑み

羽賀被告

 未公開株を取得額の3倍で知人男性に売ったとされる羽賀被告。これまでの公判では「男性に対し、1株40万円で取得したと説明していた」「男性から3倍でも買うから、と強く求められた」と無罪を主張している。果たしてだます意図はあったのか。検察官の論告は最も重要な犯意の部分に入った。

検察官「1株40万円で購入した医療関連会社の未公開株について、知人男性との株式譲渡契約書には100万円と書いている。羽賀被告が当時、知人男性に対し(自分の取得額が1株)100万円と述べていたということに他ならない。うそを言ったことが明らかに認められる。犯意が認められると考えられる」

 検察官が矛盾を指摘すると、羽賀被告はゆっくりと床に視線を落とした。検察官はハンカチで口元をふいた。

検察官「代金に開きがあったとしても、安かったものを高く売るという経済活動に他ならないと弁護側は主張するが、社会生活上是認されている駆け引きの範囲を大きく超えている。差額分を羽賀被告が自由に処分できるといえ、弁護側の主張には理由がない。詐欺罪に当たることは明らかだ」

 羽賀被告の主任弁護人は首をかしげ、少し笑みを浮かべた。その後、検察側は男性が請求権を有していることに話を移した。

検察官「男性は契約の無効を主張することができ、返還請求権を認めることができる。『絶対に損はさせない』と話す羽賀被告に対し、男性が『元本保証しようよ』と持ちかけると、『分かりました』と答え、損失補填(ほてん)条項が契約に盛り込まれた」

「羽賀被告が資金を出させるために条項を盛り込んだ。医療関連会社の上場の前後にかかわらず損失補填権は有効で、倒産の発覚により効力が失われたとする弁護士の主張は、当事者間の合理的意思に反する」

 時折瞬きをする程度でほとんど体を動かさない羽賀被告に対し、渡辺(二郎)被告は背筋を伸ばしたり、目を閉じたりし、何度かうなずくようなしぐさをしながら検察官の論告を聞いていた。

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