第3回公判(2008.5.8)
(3)1株40万円を「1株120万円で買った」とウソ
顧問弁護士の証言について、なおも検察側の論告が続く。羽賀被告の親友で、知人男性側との交渉役を途中から担った吉川銀二さんについての説明も。
検察官「顧問弁護士は、羽賀被告と吉川さんとの交渉の経緯も自然かつ詳細に供述し、(恐喝未遂罪で有罪が確定している)暴力団関係者A、Bとの証言ともおおむね一致している」
羽賀被告は閉じた目を時々開かせるぐらいでほとんど微動だにせず、表情に変化はうかがえない。渡辺被告は首を左右に動かしながら、検察官をにらみつけたり目をつぶったりしている。
続いて暴力団関係者A、Bの供述の信用性に移る。2人は恐喝未遂にかかわった共犯として有罪が確定しており、捜査段階の供述は具体的で信用性が高いとした。一方、Aは自らの公判で「取調官に供述を誘導された」と主張している。検察官はこの主張を信用性が薄いとした。
検察官「暴力団関係者Aの捜査段階の供述は信用性が高い。渡辺被告が被害者の男性を恐喝する状況を詳細に述べる一方、必ずしも自身に不利ではない供述もあり、捜査員による自白の強制や誘導がなかったのは明らか。一方で公判廷の供述はあいまいな説明が多い。2人が所属する暴力団関係者から有形無形の脅しを受ける可能性を考えれば、渡辺被告の前で真実を話すのは難しかったと考えられる。渡辺被告との関係については証言を避けており、捜査段階の供述に真実を求めるべきだ」
渡辺被告は目の前の検察官をずっと見据え、威嚇しているように見えた。
論告開始から30分が過ぎ、羽賀被告はうつむきかけた頭を振り、眠気をはらうしぐさをみせた。しかしいよいよ詐欺罪の成立についてのくだりに入ると、羽賀被告は頭を上げて検察官を見据えた。
検察官「羽賀被告の詐欺罪の立証を始めます。まずはじめに被害者の知人男性は、羽賀被告から医療関連会社の未公開株を1株40万円で購入したとは聞かされていなかった。羽賀被告は1株120万円で購入したように装い、男性はその話を信じて送金した」
羽賀被告はこれまでの公判で、未公開株を1株40万円で購入していたことを男性に明確に告げていたと供述している。この供述が正しければ、詐欺罪の成立は揺らぐ。しかし論告内容は羽賀被告の供述を真っ向から否定するものだった。羽賀被告はかすかに首を振って目を閉じ、検察官の方へ向き直った。株売買をめぐる詐欺を断罪する検察官の論告は続く。
検察官「男性は羽賀被告から高額な証券を購入する際、羽賀被告の購入額と同額なら羽賀被告に利益はないと信じて購入している。もし羽賀被告に差額利益が生じると知っていれば、羽賀被告に対して債権回収を求めたはずだが、そんな事実は認められない。羽賀被告が言うように、1株40万円と知りながら120万円で買った事実はない」