第3回公判(2008.5.8)
(10)「自己矛盾」「デッチ上げ」弁護側が反攻 羽賀被告は唇震わせ目に涙
最終弁論は確認書の署名の場面へ。
羽賀被告弁護人「羽賀被告は、知人男性が任意で(債権放棄する確認書)署名捺印した何ら問題のない和解だと認識していた」
弁護人は羽賀被告と渡辺被告の共謀が成立するとした検察側に反論する。(1)羽賀被告は知人男性に対して約4億円の債務はなかった(2)確認書を締結した日に電話で暴力団関係者にお礼を言っていない(3)羽賀被告は沖縄で着物の展示会に立ち会っており、そもそも電話に出られなかった−などの根拠を提示した。
羽賀被告弁護人「以上のことから検察官の主張は、ありもしない『絵を描く』ことを得意としている暴力団関係者の証言に依存している。検察官は自ら詐欺罪で起訴した暴力団関係者Bの証言の信用性を強調しなければならないという、自己矛盾に満ちた立証をしている」
さらに、検察側が、『債権回収の謝礼』と位置づけた羽賀被告から渡辺被告に支払われた3000万円についても、単なる借用金の返済だと反論する。
羽賀被告弁護人「仮に恐喝行為での謝礼金であれば、羽賀被告はそもそも領収書の作成を求めるはずがない。それほど羽賀被告も愚かではない。また羽賀被告の妻の手帳に『3000 ジロー お礼』との記載があったという点も、それが恐喝行為の謝礼金だとすれば、妻はすぐに破棄していたはず。このメモ書きが残っていること自体、返済金だということだ」
すべての反論を終え、弁護人は最終弁論のまとめに入った。「本件はいわゆるでっち上げ事件である」と述べ、続いて事件以降の羽賀被告の状況に言及し始めると、羽賀被告は自らの境遇を思い出したのか、顔をしかめ始めた。
羽賀被告弁護人「羽賀被告は、今回の逮捕・起訴により約7カ月半余りも勾留され、所属プロダクションを解雇され失職するという多大な損害を被っている」
唇をわなわなと震わせ、『はぁー』と大きく息を吐いた羽賀被告。顔は紅潮し、目には涙がたまっていた。羽賀被告は目元をぬぐい、鼻をすする音が法廷に響いた。
引き続き、渡辺被告の主任弁護人による最終弁論が始まった。
渡辺被告弁護人「渡辺被告の恐喝未遂罪については成立せず、無罪である。事前謀議や実行行為についていずれも渡辺被告は行っていないし、いずれの犯罪事実も証明されていない」
次いで弁護人は、事件の端緒となった知人男性の債権の存在について反論を提示。渡辺被告は、検察側の主張を引用した際には間違いだと言うように首をひねり、自らの主張のときには何度も軽くうなずきながら弁論を聞いていた。
渡辺被告の弁護人は渡辺被告が山口組傘下の暴力団組員ではなかったことについて、説明を始める。
渡辺被告弁護人「渡辺被告の携帯電話の番号に組幹部の名前が多かったが、かつてボクサーだったことから組長に気に入られ、飲食や釣りに行くなど個人的な付き合いがあったためであり、だからと言って組員とはいえない。携帯電話の番号はこの組長への連絡用であり、また組員にもファンが多く、かかってくる電話も多い。渡辺被告はかかってきた電話はすべて登録することにしており、660人近くもの番号を登録していた」
組の名簿のことについても言及する。
渡辺被告弁護人「組の組織名簿に『相談役』として名前があるのは、多数ある名簿のうちの1枚だけ。それだけで組員と断定するのは失当である。また検察官は、組がタレントという立場に配慮して名簿に記載していなかったと指摘するが、そもそも外部に出す必要のないものに配慮する必要はない」
渡辺被告と知人男性との関係について、もともと恨みを持っていたことについて説明を続ける。
渡辺被告弁護人「十数年前に2人の間に金銭トラブルがあり、男性が渡辺を恐れていたとされているが、まずトラブルではない」
トラブルとは2人の共通の知り合いだった貿易事業者のバングラディシュ人が知人男性に1億円融融してもらったこと。知人男性は急きょ7000万円が必要になったため、バングラディシュ人に返済を求めたが支払えず、渡辺被告が7000万円を用立てた。知人男性は7000万円を20日後にいったん渡辺被告に返すと約束したが、その後返済されなかった。このため、渡辺被告は知人男性に恨みを持っていたと検察側が指摘していた。
渡辺被告弁護人「渡辺被告と男性の金銭トラブルについては、弁護士に入ってもらって処理済み。すでに十数年経過しており、たとえ恨みが残っていたとしても癒えている。男性と渡辺被告はそれなりに著名で、これまでに互いに連絡を取ろうと思えば取れたはず。渡辺被告が知人男性に憎悪の念を持っていたとはいえない」
渡辺被告は時折、弁護人の弁論にうなずくように2、3度首を縦に振った。