第3回公判(2008.5.8)

 

(2)検察「羽賀被告は関与を否認するが…」

羽賀被告

 検察官の読み上げが続く。羽賀研二被告はひざの上で手を組み、時折目を閉じながら論告に聞き入っている。検察官は犯行の概要の説明に入った。

検察官「羽賀被告は(詐欺や恐喝未遂の被害者とされる)知人男性をだましたことはなく、恐喝未遂にも関与していないと否認しております」

 検察官は詐欺の犯意に加え、羽賀被告が恐喝未遂の現場にいなくても、渡辺被告や暴力団関係者Aらと共謀したことは明らか−と断定。事件のきっかけとなった知人男性と知り合い、融資を受けた経緯などを説明した。

検察官「羽賀被告は知人男性と平成6年ごろ知り合い、5000万円の融資を受け、分割返済をしていた。その後、医療関連会社の未公開株購入資金のために8000万円の融資を依頼した…」

 知人男性が羽賀被告から医療関連会社の未公開株を購入し、そして(恐喝未遂があったとされる)平成18年6月7日、1000万円で知人男性がその他の債権を放棄するという確認書に無理矢理署名させられた経緯の説明を続ける。こうした一連の経緯は、主に知人男性の供述が立証の大きな柱となっている。供述の信用性の有無や程度は、判決の事実認定に大きく影響する。検察官はこの供述の信用性は高い−と強調する。

検察官「知人男性の供述は具体的確信的で、自然かつ合理性がある。(恐喝未遂の現場で)確認書を見せられて驚き、羽賀被告に裏切られ、渡辺(二郎)被告や暴力団関係者Aらににらまれたなどと具体的であり、他の同席者の証言や供述とおおむね一致している。反対尋問でも証言はおおむね変わっておらず、証言態度は真摯である。ことさら被害を誇張しているともいえない」

 両足の間で両手を握り合わせ、ほおをやや紅潮させ、神妙な表情で斜め下に目線を落としていた羽賀被告。傍聴席をちらりと見る場面があったほかは、ほとんど動かない。対照的に、渡辺被告は大きく息を吸い込んだり、足でリズムを取ったり手を小刻みに動かし、落ち着きがないように見える。

 しかし知人男性の証言は「返還請求権の根拠」などをめぐって説明が変遷している部分があり、検察官はこの点について説明を重ねた。

検察官「知人男性はもともと法律的に素人だったが、被告人に約4億円を請求し、弁護士から法的構成などを耳にする中で法的根拠を知るに至った。法廷での証言が二転三転しているように見えるのは、法的知識を身につけた後、法律の専門家から質問された結果で、証言が変わったようにみえるが、証言全体の信用性を失わせるものではない」

 続いて、知人男性がすぐに警察に被害申告しなかったことにも触れる。

検察官「知人男性は事件翌日に相談した弁護士から、『相手の弁護士が同席している以上、事件としての立件は難しい』といわれたと証言している。その後、羽賀被告の結婚報告を目にして怒りがわき、相談した雑誌記者から告訴するよう勧められたというものである。弁護士が同席していたから立件が難しいといわれたというのは、説得力があるものである」

 さらに、事件はベンチャー企業の上場にからむもので、関係者が多数いるため被害届を出したのが平成19年6月になってからというのも「全く不自然なことではない」と指摘した。

 検察官は「被害者は暴力団関係者から仕返しを受けるかもしれないにもかかわらず証言をしており、信用できる」とも述べ、被害者証言の信用性を何度も強調した。渡辺被告は検察官の主張に時折、首をかしげるしぐさをみせる。

 論告は羽賀被告が被告人質問で「本当のことを言っていない」と主張した芸能プロダクションの顧問弁護士の証言の信用性に移った。検察官は、弁護士がうその証言をして羽賀被告と渡辺被告の2人を罪に陥れる理由がないこと、羽賀被告が所属していた芸能プロダクションの顧問弁護士だったこと、もともと渡辺被告とまったく無関係だったことなどを挙げる。

検察官「顧問弁護士の証言は一貫しており、高度の信用性が認められる」

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