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(6)「何で『成仏』?」「正直に話してほしいと…」捜査員証言

鈴香被告の取り調べを行った秋田県警捜査1課の元警察官に対する弁護側の尋問が続く。弁護側は、証人が取り調べ中に鈴香被告に発したとされる文言一つ一つについて詳細に質問。誘導や強制がなかったか、自白の任意性に疑いはないのかを追及した。

弁護人「『(彩香ちゃんと豪憲君を)成仏させなきゃいけない』という発言は、どういう文脈で言ったのか?」

証人「説得の中で、そういうふうに言った」

弁護人「それを言うことで、(鈴香被告に)何を求めたのか?」

証人「被害者のためにも、正直に話をしてほしいと(思った)」

弁護人「それは(彩香ちゃんと豪憲君の)どっちの事件について?」

証人「両方について」

弁護人「これまで、(容疑を)否認した容疑者に、こういう話をしたことはあるか?」

証人「大きな事件の時に、『成仏』という言葉を使って言ったことはある」

弁護人「今回は、(成仏という言葉を)何回言ったか?」

証人「何回か。数え切れないほどではないが」

今年3月に県警を退職したばかりという証人は、記憶をたどるようにときおり考え込みながら、慎重に答えた。

次に弁護側は、証人が豪憲君の死体遺棄容疑で鈴香被告の取り調べを行った際、彩香ちゃんの殺害との関連性をどの程度疑っていたのかについて質問した。

「結論ありき」で、強引な取り調べが行われなかったか−を解明するためだとみられる。

弁護人「(彩香ちゃんが死亡した)4月9日の(鈴香被告の)行動について聞き始めたのは、いつごろからか?」

証人「(豪憲君の死体遺棄容疑で取り調べを行った)この日が最初」

弁護人「どういうことで、このことを聞いたのか?」

証人「当時は豪憲君の死体遺棄を調べていて、殺人事件に発展する可能性があった。その動機として彩香ちゃんの関連を調べる。その時点で、4月9日の行動だけ、記憶の新しいうちに、言うがまま聞くように、という指示があった」

弁護人「あなたは彩香ちゃんについても、(鈴香被告が)被疑者じゃないかという疑いを持っていたのか? 被疑者自身は、かかわりについて言っていたのか?」

3秒ほど法廷が沈黙に包まれた。

証人「…言っていない」

質問は、豪憲君殺害を自白した後の、取り調べ内容にも及ぶ。

弁護人「豪憲君殺害の拘留期間中、彩香ちゃんのことはどういう聞き方をしていた?」

証人「豪憲君殺害の動機を解明するためには、何としても彩香ちゃんの真相を解明しなければいけないと考えた」

弁護人「(彩香ちゃんが死亡した日に鈴香被告が一緒にいたという)目撃証言があったことは伝えたか?」

証人「言っていない」

弁護人「(鈴香被告が法廷に)呼ばれたら、マスコミに追われて大変になる、というようなことは?」

証人「言っていない」

弁護人「彩香ちゃんがピカチュウを持って出て行った後、誰も(姿を)見ていないということは?」

証人「そういう話はしていない」

証人が答えにつまるほど、弁護側の質問は細部に及び、検察側から「質問意図が証人に伝わっていない」と注意を受ける場面も。自白の任意性を崩す糸口を見つけようとする、弁護側の執念が垣間見えた。

⇒(7)「容疑者は体を震わせ誰かに頼る」捜査員証言