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(10)検事が法廷に…「震えながら黙ってしまった」

20分間の休廷をはさみ、この日2人目の証人となる元秋田地検の検事が法廷に現れた。黒いスーツに灰色のネクタイをしめた証人は、昨年9月まで秋田地検に勤務し、鈴香被告が逮捕された当初から主任検事として取り調べを担当していた。

法廷には慣れた様子で裁判官に向かって一礼すると、証人は証言台の上に時計を置き、「ウソはつかない」という宣誓文を読み上げた。鈴香被告が手錠を外される瞬間、被告の顔をチラリと見た証人に対して、鈴香被告は証人を見ることはなく、無表情のまま着席した。

まずは供述調書の作り方について確認する検察側。証人は「被疑者の面前で口で述べたことを立ち合いの事務官がパソコンで打つ。調書ができたら、大きな声でゆっくり読み上げた。豪憲君の殺人容疑で逮捕されてからは、閲読もさせていた」とはっきりした口調で述べた。

検察官「調書はその日のうちに仕上げるのか?」

証人「原則としてそうしていたが、時間が足りないときもあり、前半だけ作り、残った分は翌日に面前で作って足すこともあった」

裁判長「確認だが、それは2通にまたがるということか?」

証人「はい」

検察官「鈴香被告から訂正の申し出があった場合はどうするのか?」

証人「面前で作っている場合はその都度訂正し、読み聞かせた後に違うということなら、終わった後に訂正した」

鈴香被告の申し出にはその都度、応じていたという証人だが、ひとつだけ応じなかったことがあった。

証人「彩香ちゃんの殺害で逮捕されたときだが、『とっさに殺すつもりで』とあったのを『内容に間違いはないし、殺意を否定するつもりもないが、表現が怖い』と申し出てきたことがあった。しかし、内容に間違いがなく、殺意を否定しないのなら、そのままでいいのではないかと説得したところ、納得して署名した」

留置記録によると、鈴香被告は「今日は検事さん来ないの? 寂しい」と証人の取り調べを受け入れていた様子をうかがわせる一方で、被告人質問では「いきなりバカヤローと怒鳴られた」「怖かった」などと証言。証人尋問では、実際の取り調べの状況について、詳しく質問が始まった。

検察官「被告を怒鳴ったり脅したり侮辱したりしたことは?」

証人「ない」

検察官「自白した方が有利になると利益誘導したことは?」

証人「ない」

検察官「豪憲君を遺棄した容疑で被告が逮捕された後、弁解録取(取り調べを始める際に、聞き取りを行う手続き)の時に被告と初めて顔を合わせたのか?」

証人「はい。弁解録取の時かそれに続けた調べかはわからないが、『信用できない弁解をしているので、それは厳しく追及していく。ただ、それとあなたの体は別だから、体調が悪いときは言ってくれ』と話した」

検察官「なぜか?」

証人「逮捕されてから、体調が悪く医師の診察を受けていたと聞いていたから」

検察官「具体的にどんな信用できない弁解をしていたのか?」

証人「『私が家に帰って玄関を開けたら見知らぬ靴があった。彩香の部屋で豪憲君が死んでいた。怖くなったので、川の脇に捨てた』『私は殺していない』『付き合っていた男が殺したかも』と。警察からその男性にアリバイがあると聞いていたので、『アリバイがある』と言ったら『その男しか考えられない』と言っていた」

信用できない弁解を続ける鈴香被告に、証人ははっきり言ったという。

証人「『あなたの言っていることは信用できない。ただ、信じられないことは世の中にある。心当たりがあることは何でも言いなさい』と」

その言葉を聞いた鈴香被告は、「黙って両肘をついてうつむいていた。震えながら黙ってしまった」という。

結局、弁解録取に署名するまで1時間くらいかかってしまったという。その間、鈴香被告は「『思い当たることは何でも言いなさい』と声をかけると、私の方を一瞬見るが、また黙ってしまう。それが1時間くらい続いた」という。

内容が進まないため、取り調べは2時間以上、中断された。その間、警察の留置係に「具合が悪い」と訴えた鈴香被告は、薬を飲み、再び調べが始まったという。

⇒(11)「ごめんなさい…」遺体の写真、指でなぞった