(8)ひきつる被告 愛人「夫から電話あった。疑った?」
歌織被告が交際していた男性の証人尋問が続く。男性に連絡した歌織被告は、祐輔さんの暴力について話し始めたという。
検察官「被告はどんな話をしましたか?」
証人「夫に暴力をふるわれ、その後シェルターのお世話になった、と」
検察官「暴力の話を聞いたのは初めてですか?」
証人「はい」
検察官「夫に直接会ったことはありますか?」
証人「ありません」
検察官「電話で話したことはありますか?」
証人「あります」
検察官「証人は(夫が)なぜ連絡を入れてきたと思いますか?」
証人「分からないが、私と(歌織被告が)連絡をとっていると疑ったのではないでしょうか」
検察官「被告と最後に会ったのはいつですか?」
証人「18年の8月です。昼食を食べました」
検察官「被告はどんな話をしましたか?」
証人「非常に前向きで、“億ション”を買うと言っていました」
検察官「(祐輔さんの)殺害後、電話はありましたか?」
証人「ありました」
検察官「いつですか?」
証人「18年12月13日ごろです」
検察官「どんな話でしたか?」
証人「これからお母さんと暮らすと」
検察官「(話を聞いて)どう思いましたか?」
証人「お母さんが1人で暮らしているので、3人で暮らすと思いました」
検察官「3人とは?」
証人「夫婦とということです」
検察官「被告と最後に話したのはいつですか?」
証人「12月22日、23日ごろです」
検察官「どんな話をしましたか?」
証人「『リフォームの会社を教えてくれ』と言われました」
検察官「何と答えましたか?」
証人「いきなりで困りましたが、○○(不動産会社の名前)と答えました」
検察官「なぜ、リフォーム会社を探しているのか、聞きましたか?」
証人「いえ」
検察側の証人尋問が終わり、弁護側の証人尋問が始まった。かつての交際相手の証言のためか、歌織被告の表情は午前中に比べてひきつっていた。
弁護人「野沢のマンションを更新したのは14年の10月ですね。そのころは交際関係にあったのですか?」
証人「はい」
弁護人「更新するころ、男女の関係はなかったんですね?」
証人「はい」
弁護人「更新前、マンションに行ったとき、男の下着を見たことがありましたか?」
証人「ありました」
弁護人「弟が来ているという説明でしたか?」
証人「はい」
弁護人「14年10月に(マンションの)更新をして、そのころあなたも被告と別れようと思っていましたか?」
証人「はい」
弁護人「14年の暮れに大阪に2人で旅行に行ったことがありますね?」
証人「はい。14年の12月です」
弁護人「歌織さんと男女の関係を持ったのは、そこが最後じゃないですか?」
証人「はい」
弁護人「歌織さんから結婚したと聞いたのは、15年の3月ごろですか?」
証人「日にち的には不確かですが、野沢のマンションを出た後です」
歌織被告が男性に結婚報告をした時期について、弁護側と検察側が一触即発の状況になった。
弁護人「捜査段階で、時期のことについて検察官から強く言われましたね?」
検察官「裁判長、捜査段階のことですので、関係ないと思われます」
弁護人「(検察官に)強制されて言わされたと疑いを持っています」
裁判官「強制とは、どのような?」
証人「初めてのことなので、緊張していました。思いだしなさいと言われました」
弁護人「最初、15年3月に結婚したと検察官に供述したのではありませんか?」
証人「あいまいで、申し訳ありませんが…」
弁護人「検察官の調書には、15年3月に電話で結婚したと聞いたとあります。記憶にありませんか?」
証人「記憶では3月か4月か。非常にあいまいです」
弁護人「15年に入ってから野沢のマンションに行ったという話をしていましたが、14年の勘違いではありませんか?」
証人「そのへんも不確かで記憶がありません」
弁護人「確かな記憶がないんですね?」
証人「ありません」