(16)歌織被告「家を出ても私は行くところがない」
歌織被告の友人女性に対し、被告と交わした会話や被告の印象などについて、弁護側の質問が続く。
弁護人「被告に『仮に家を出た場合、行くところがあるのか』と聞いた?」
証人「私が『家を出た方がいいのでは』というと、(被告から)『(家を出ても)あなたには行くところがあるけど、私にはない』といわれた」
弁護人「被告が逮捕された後、いろいろ報道されたが、あなたが知らないことはあった?」
証人「あった」
弁護人「被告は周囲に『満たされている、幸せ』と見栄を張ることはあった?」
証人「見えかどうかは分からないが、私は幸せにしていると思った」
弁護人「18年になってからも被告と電話したり会ったりする機会は多かった?」
証人「はい。共通の知人の子供が生まれた話などをしました」
弁護人「公正証書の話はした?」
証人「それより、会社に勤めていたころの共通の知り合いの話とか、一般的な話の方が多かった」
ここで検察側が再び尋問した。
検察官「あなたには今日、証人として出廷してもらい、いろいろと質問したが、できる限りのことを話せたか?」
証人「はい」
最後に、裁判長が質問を投げかけた。
裁判長「平成18年に入ってからもあなたは被告と話したことがあるということだが、12月11日午後9時40分から11時の会話についてふだんと違った様子はなかったか?」
証人「(被告は)ボイスレコーダーを聞いて、考え込んでいるようだった」
裁判長「それは怒っているの、それともおびえたり不安に感じているの? 分かる?」
証人「どっちもあるが、怒っている様子だった」
やりとりはここまで。17時9分、証人は退席。裁判長は次回期日を来年1月17日に指定した。今後、検察側と弁護人双方が依頼した精神鑑定医2人が今月28日以降、鑑定に入る。歌織被告は傍聴席の祐輔さんの家族に目をやることもなく、表情をほとんど変えないまま、退廷していった。