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(6)「今日、言います」 被告のしつこい要求に“出禁”を告げると決めた被害者は…

耳かき店店員、江尻美保さん=当時(21)=ら2人を殺害したとして、殺人などの罪に問われた林貢二被告(42)の裁判は、江尻さんが勤務していた東京・秋葉原の耳かき店の店長、Xさん(法廷では実名)に対する弁護側の証人尋問が続いている。

時折、Xさんを上目遣いでにらみつけるような表情を浮かべる林被告。Xさんの証言に違和感を覚えているのだろうか。

弁護人はXさんに、江尻さんが年末に来店した林被告からクリスマスプレゼントをもらった状況について聞いた。

弁護人「平成20年のクリスマスに美保さんが、被告から2万5000円のWii(任天堂ゲーム機)をもらったことを聞いていますか」

証人「いいえ。結構、もらい物はあったと思いますが、どのお客からもらったというのはちょっと‥」

弁護人「(美保さんと林被告が入っていた)ブースの中で交換したのを見たのでは?」

証人「そこだけを四六時中見ているわけではなく、7つのブースを均等に見て回っているので、なかなか見られません」

弁護人「Wiiは美保さんがリクエストしてもらったと聞いていませんか」

証人「いいえ」

××耳かき店(法廷では実名)の常連客だったという林被告。年末年始も連日、同店を訪れていた。

弁護人「被告は平成20年の年末から年始まで連続9日間、具体的には12月27日から1月4日まで毎日店に来ていましたね」

証人「来ていたと思います」

弁護人「普通じゃないと思いませんでしたか」

証人「普通じゃないというか、土日祝日など1人暮らしの男性がよく来店される。そのときは、年末年始、どこも行くところがないかと思っていました」

「(江尻さんの)手を握りたい」と申し出た林被告を出入り禁止にした店側の真意についても質問が及んだ。

弁護人「平成21年2月か3月ごろ、吉川(林被告が××耳かき店で使っていた偽名)さんが『手を握らせてくれ』と言ってきましたが、被告が具体的に何を求めたと思いましたか」

証人「何を‥手を握らせてほしいと‥」

質問の趣旨が理解できない様子のXさんに対して、若園敦雄裁判長が割って入り、補足の質問をする。

裁判長「要するにあなたの理解では、手を触るというのは、マッサージとは違うの? マッサージはダメなの?」

証人「手を握らせてほしいといわれ、(江尻さんを)独占したいという意志なのかと受け取りました」

答えと質問がかみ合わないまま、弁護人が続いて、江尻さんが平成21年3月ごろ、シフトを変更したことについての質問を始めた。

弁護人「平成21年3月ごろ、美保さんはシフトを、午後5時までに変更した。午後5時以降は被告の指名を受けるようにしたのではないですか」

証人「はい」

弁護人「江尻さんからそういう要望があったのですか」

証人「江尻さんのお願いでした」

店長がシフトの変更を許可した理由について説明した。

弁護人「どうしてシフトの変更を受け入れたのですか」

証人「(江尻さんから)その時間帯は吉川さんが入るかもしれないとのお願いがあったので」

弁護人「江尻さんが吉川さんのためにそうしてほしいと言ってきたのですか」

証人「はい」

××耳かき店側には、常連の林被告が来店してくれることで、売り上げにつながるとの期待もあったのかもしれない。

弁護人「店長としてどう受け止めたのですか」

証人「何かあったのかと思ったけど、そのときは確実に来てくれる客で、江尻さんが希望するなら、『分かりました』と言うしかありませんでした」

林被告は、××耳かき店が期待する客から一転、店外での食事を江尻さんに申し入れたことで、4月5日に同店を出入り禁止になってしまった。

弁護人「4月5日は開店前に、林被告を出入り禁止にすると店長が決めましたね?」

証人「本人(江尻さん)の希望があったので」

しかし、出入り禁止を決めた4月5日に来店した林被告。同日の店での滞在時間は、7、8時間にも及んだ。

弁護人「被告は何時ごろ、来店しましたか」

証人「午後2、3時ごろ」

弁護人「その日はいつごろまでいましたか」

証人「閉店間際の午後10時ごろだったと思います」

林被告はその日、長時間の指名予約を入れていたという。どうして、出入り禁止を決めた日でも江尻さんは接客したのか、弁護人がたたみかけるように質問した。

弁護人「出入り禁止を決めておきながら、どうして指名を入れさせたのですか」

証人「予約を受けたというか、江尻さん本人からの希望で、『今日、(出入り禁止のことを)言います。お店に入る前ではなく、中で言います』ということだったので」

こうしたやりとりを続ける弁護人をじっと見つめる左から2番目の女性裁判員は、時折、林被告にも目をやった。

Xさんは、出入り禁止を江尻さんが実際に告げた場面は見ていなかったという。

弁護人「美保さんと林被告はこの日、3番ブース(店の接客スペースの一つ)で店長さんがいることの多いレジに近い場所にいた。出入り禁止を告げたのは聞いていなかったのですか」

証人「すぐ聞けるところにいても、土日は来店客が多く、7部屋あるので、常にそこ(レジ)にいるわけではありません」

当日、江尻さんと林被告のやりとりは聞き取れなかったというXさんだが、江尻さんが、いつもと様子が違っていたことには気付いていたようだ。

弁護人「美保さんは4月5日、熱を出して非常につらそうだったのでは」

証人「そういうことがあっても、言わない子でした。でも、いつもとは違うと思っていました」

林被告のために体調を崩してまで出勤していたという江尻さん、この後、林被告のストーカー行為と店側の対応についての質問が続いた。

⇒(7)度重なる被告の待ち伏せに「あり得ない」「怖いです」と被害者は声を震わせ