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(2)「僕との仲を引き裂きたいんだろ!」逆上して店長に言い放った被告

耳かき店店員、江尻美保さん=当時(21)=ら2人を殺害したとして殺人などの罪に問われた林貢二被告(42)の第2回公判は、江尻さんが勤務していた耳かき店の店長への検察側による証人尋問が行われている。

店長のXさん(法廷では実名)は、林被告が店の出入りを禁止された経緯について説明する。事件の8カ月前の平成20年11月28日には、秋葉原での店でも「指名ナンバーワン」だったという江尻さんが新宿の「新宿東口店」でも掛け持ちするようになっていたという。男性検察官が質問を続ける。

検察官「新宿東口店にどうしても一緒に移動したいと言われていたんですよね」

証人「江尻さんからそう聞いていました」

検察側冒頭陳述によると、林被告は江尻さんが働いていた秋葉原店から新宿東口店に移動するとき「一緒に電車で移動したい」と要求したとされる。

検察官「(秋葉原店から)新宿東口店に一緒に(店外で歩いて)移動したいという話について、以前から相談されていたんですか」

証人「以前から相談されていましたが、無理と伝えていました」

検察官「無理とはどういう意味ですか」

証人「店外で従業員と客が一緒にいるのは店のルールとして禁止しているので」

検察官「11月28日はどんなことがありましたか」

証人「吉川(林被告が来店するときに使っていた偽名)から、一緒に移動することに対して、店のルールだから無理というのはお前(店長)の意見なんだろと言われました」

検察官「言い方はどうでしたか」

証人「まあ、上から目線でした。僕と(江尻さん)の仲を引き裂きたいんだろということも言っていました」

検察官「どう対処しましたか」

証人「ひたすら無理だと何度も伝えました」

検察官「最後はどうなりましたか」

証人「最後は(林被告が)引き下がりました」

検察官「江尻さんはその様子を見ていましたか」

証人「私と吉川が話しているのを斜め前でうなだれた様子で見ていて、最後に『すみません』と言っていました」

林被告は腑(ふ)に落ちないのか時折、首をかしげる。

検察官「その後、江尻さんから相談を受けたことはありますか」

証人「平成21年2月から3月に江尻さんから、『吉川に手を握らせてほしいと言われて困っている』と言われました」

検察官「どう対処しましたか」

証人「サービスの中に手のマッサージがあるのでそれでどうにかできないかと聞いたら江尻さんは『それではだめだ』と言っていました」

検察官「ほかに相談はありましたか」

証人「手のマッサージに関連しますが、手を握らせないならもう来ないと困らせることを言っていたので、もう出入り禁止にしましょうかと話を始めていました」

耳かき店で無理な要求を繰り返す林被告に困っていた江尻さんや店長。Xさんは出入り禁止を決めたやり取りを証言する。

検察官「ほかの客との予約の調整などでも相談はありませんでしたか」

証人「長時間で予約を取っているので、入りたい人が入れないという相談はありました」

検察官「江尻さんは困っている様子でしたか」

証人「はい」

検察官「ほかの客を入れないことについてアドバイスはしましたか」

証人「時間を短くしてもらうと言いましたが、吉川は『ほかの人が入らなくても僕が入るからいいじゃないか』と言っていました」

検察官「店としては被告人が来なくてもよかったのですか」

証人「長時間利用してお金を多く落としてもらえるというのはありますが、店の先のことを考えると新規(の客)も入れていかないと、その場の売り上げはいいかもしれないですが、今後のことを考えると来なくても問題はありませんでした」

検察官「江尻さんは人気があったのですか」

証人「はい」

検察官「被告人が来なくても問題はなかった?」

証人「入りたい人も多数いました」

検察官「嫌がっているから来なくてもいいという気持ちもありましたか」

証人「はい」

検察官「江尻さんは被告にメールアドレスを教えていましたが、ほかの客にも教えていたんですか」

証人「教えていたと思います」

検察官「証人は被告が変わっていると感じたことはありましたか」

証人「常に上から目線で、店長の私とコミュニケーションがあまりよくとれていませんでした。あと聞いた話ですが、江尻さんの前では泣いたりすねたり子供みたいな行為が多かったと聞きました」

Xさんは弁護人の主張する林被告の「まじめ」な姿とは違う一面を江尻さんの前ではさらけ出していたと証言する。

検察官「4月5日に出入り禁止にしたのはなぜですか」

証人「江尻さんが泣きながら『吉川さんを出入り禁止にしてほしい』と言われました」

検察官「なぜですか」

証人「ほかの人も入れないし、つらいと」

検察官「直前に無理な要求があったことはありますか」

証人「本人からは聞いていませんが、ほかの女の子から『付き合ってほしい』と言われたんじゃないかと後から聞きました」

林被告は証言に納得のいかないような表情を浮かべ首をかしげる。6人の裁判員はじっと前をみて証言に聞き入っている。

検察官「いつごろ聞きましたか」

証人「出入り禁止にした直後です」

検察官「それでどうしましたか」

証人「吉川さんに出入り禁止にすると言いますかと江尻さんに言ったら、『私が言います』と言っていました」

検察官「それでどうなりましたか」

証人「『出入り禁止にします』か、『店にもう来ないでほしい』と言ったと思うのですが、吉川が店を逃げるように出て行ったときがあって、それを見て(江尻さんが)言ったのかなと思いました」

検察官「逃げるようにとはどんな様子でしたか」

証人「下を向いていたのでよく分かりませんが、呆然とした様子でした」

事件の発端となる耳かき店への出入り禁止について店長のXさんは詳細な証言をした。検察官は唐突に江尻さんと仲の良い同僚の○○さん(法廷では実名)が2人のやりとりを聞いていたか尋ねる。Xさんは「おそらく聞いていたのでは」と答えた。

検察官「4月5日以降被告は店に来ましたか」

証人「一切来ていません」

検察官「その後、江尻さんから相談はありましたか」

証人「江尻さんから電話があって『新橋駅に吉川さんがいる』とびっくりした様子で電話がかかってきました」

検察官「何時ごろですか」

証人「午後11時ごろです」

江尻さんの帰り道の新橋駅に現れた林被告。店側は江尻さんを別の店に移すなどの対応をとるが、林被告の行動はエスカレートしていく。

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